第三十七話 会議
ダンスとの話が一段落した頃、神丸から次の来客が知らされる。
扉の前へ移動し「どうぞ」と声をかけると神丸が扉を開け【赤い森の塔】のルヤさんを先頭に来客が順に中へと入ってきた。
「ご無事で何よりです」
「ありがとうございます。
巻き込んでばかりですみません」
「大丈夫です、私達が不利になるような事なら避けますから」
にっこり微笑むルヤさん。
さすがしっかりしているなと俺は苦笑しながら返していると、神丸がルヤにダンスの向かい側に座るよう案内するので会釈して話を切り上げる。
「貴方がベルさんですね」
「あ、はい」
ルヤの後ろにいた人から声をかけられたので振り向くと自然と目があった。俺と同じ位の背丈だが金髪のイケメンだ。
「お初にお目にかかります。
【円卓の誓い】のギルマスをしているアーサーと申します。この度のご助力、本当に感謝しています」
アーサーは握手コマンドを使用して握手を求めてきたので申請を許可すると、意識しなくても自動で手が伸びガッチリと握手が交わされた。
変な細工がされないように動きが固定されているのか、と気を取られそうになるか意識を戻してアーサーの金色の瞳をしっかり見つめて応える。
「ベルです、俺も【円卓の誓い】の皆さんにはお世話になりましたから、お互い様ですよ。
デスゲームの犠牲者を減らして皆で生き残れる事が一番ですから」
「フフ、あ、いや失敬。
ダンスから聞いていた通りの好青年だったのでつい笑ってしまった」
「いやいやいや、アーサーさんこそ好青年では」
俺が手を振って応えていると神丸とダンスの声が聞こえてきた。
「ベルはオッサンではあるが、好青年だな」
「俺の説明は間違ってなかったようですな、ふはははは」
いやいや、何で盛り上がってるんだ…。
「フフ、これから宜しくお願いする事が多くなるでしょう。私の事はアーサーと呼んで下さい、こちらもベルと呼ばせて貰います」
「わかりました」
アーサーとの挨拶が一段落したのでアーサーにはダンスの隣に座ってもらう。
さて、残った席はどうするか。
「ゴッドが座る?てかウメは?」
「なになに?呼んだ?」
ウメはニヤニヤした笑顔で壁に寄りかかってコチラを見ていた。どうやら好青年と呟いていようだが…。
「いつからいるんだよ…」
「ついさっきよ。さっき。好青年」
神丸との会話で予想はついていたが、梅梅もあいかわらずの対応だった。
「俺は廊下で来客係に徹する。
ベルが座っておけ、ウメがこれから仕切るだろうからな。後はまかせたぞ」
「はいはい、座って座って好青年」
梅梅に押されるようにして椅子に座ると、梅梅は関西風味の身振り手振りを使いながら標準語風味で話を始めた。
「それでは改めまして【通天閣商会】の会長ことウメウメが、司会進行をさせて頂きます。
話も長くなると思いますのでギルド名を略称で【円卓】【塔】【商会】とさせて頂きます。
既に聞いた話もあるかと思いますが、内容の確認も兼ねてという事で。
まず【円卓】に所属していたアストルさんが消息不明となっていましたが、死者数のカウントが増えないままギルド脱退の通知があったとアーサーさんから先程連絡があり、残念ながら昨日会議であがっていた【アストル捜索案】を断念します」
「「!?」」
驚きのあまり立ち上がろうとしていたダンスをアーサーが片手で制して顔を振っている。
俺より衝撃が大きかっただろうダンスが問う事を堪えているので俺も話を我慢して話を続きを聞く。
「次に【ネクロ】の対処法が現状ではないので、街の出入り口付近に設置されている連絡板を使用して危険の伝達と、地下墓地入口に【円卓】メンバーを配置して警告を行います。これについてはアーサーさんが任せて欲しいという事なので、よろしくお願いしたいと思います。
次に新たに共有した情報として【ギルド経験値】【ギルドレベル】【ギルドチャット】の存在を【円卓】より提供頂きました。
ゲーム同様、モンスターを倒すとギルド経験値が入りレベルが上がり、レベルがあがる事でチャット機能が解放されたとの事です。
チャットについてはゲーム同様にどの場所にいてもギルドメンバーに連絡が取れるというものです。
【ギルドチャット】を利用して同盟間で連絡を取り合うために、人数の少ない【商会】に【円卓】から八鷹さん、【塔】からマロンさんが出向予定となっています。
ここまでで何か質問はありますか?」
俺はここぞとばかりに手を上げる。
「はい、ベル」
「ギルドを1つにまとめないの?」
「一応その案もあったんやけど、長年付き合いのあるメンバーのところに新しく入ると馴染むまでに時間がかかるし、お互いに立場としては平等であるという事やこれから増える可能性があるギルドメンバーの枠をあけておくって事もあってまとめるのはやめたんよ」
「なるほど、関西弁に今なってるのは?」
「休憩やな、ってなんでやねん」
「八鷹とマロンさんはそれで良いの?」
「これについてはベルの人望やなぁ、この話を全員に共有した時にそれぞれ名乗り出てくれたらしいで」
俺は驚いてアーサーとルヤさんを交互に見やると、二人は笑顔で頷いた。
「好青年の力やな」
「なんでやねん」
俺が梅梅にツッコミを入れるとその場にいた皆から笑い声が漏れる。
「あとは―――」
梅梅を司会とした会議はあと少し続き、俺は人の繋がりの温かさを噛み締める。
―――
――
―――
「よーし、こんなもんやろ。あとは同盟の結成祝いの祝賀会をこのあと計画しとるで!」
「え、金は?」
「とりあえずアーサーさんに借りたから明日から返済や!!」
「フフ、ゆっくりで大丈夫ですよ」
「あの、本当に私達は払わなくて良かったんですか?」
「【塔】の皆さんには借りがあるから、気にせんと奢らせてくれたらえんよ、笑笑」
「借りた金でえらそうに…」
「よーし、ほんなら行こか!!」
こうして俺達は祝賀会へと向った。




