第三十一話 ゾンビ
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DAY【1092/1095】
Time【11:55 】
DEATH【66 /1000】
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タイミング悪く、死者のカウントが1人増えた。カウントが増えたと言っても【円卓の誓い】のメンバー以外の可能性もある。
不要な動揺を抑えようと、気を紛らわせるような発言をしようとした時、八鷹が氷壁に走り剣を突き立て叫んだ。
『アーススパイク!!』
氷壁は八鷹の土魔法により破壊された。
「撤退を!!早くッ!!」
八鷹はギョロリと見開いた眼を向け叫んだ。先程までの顔付きとは別人で、酒場にいた時の状態に近い。
「…分かった、先頭は俺が行く。続いてリタ、アーロン、ベル、八鷹の順で頼む。一気に出口まで行くぞ」
「あ、あの。俺もパーティーに入っておきましょうか?ただ、SPが全然回復してなくて、ヒーリングが1回できるかも怪しいですか」
俺が提案するとダンスは他のメンバーに何か目配せをしてから返事をする。
「このパーティーの加入権限はアストルにあるんだが、今俺達が抜けてしまうとアストル達の情報が分からなくなってしまう。
脱出するのが目標で戦闘せず逃げるだけならパーティーに入ってなくても大丈夫だろう」
「わかりました、そういう事なら」
返事をして立とうとした時、眼鏡男子が俺に手を差し出してくれた
「立てるか?」
眼鏡男子の手をすぐに掴んで立ち上がる。自己紹介をする暇もろくに無かったが、ダンスの呼び方からして彼がアーロンだろう。
「ありがとうございます、支援を手伝えなくてすみません」
「なに、気絶しないように逃げてくれればそれで十分だよ」
アーロンが俺の肩を叩き、リタの後ろにつく。
「…絶対に、お前は逃げろよ!?」
八鷹が俺の後ろにつく前に俺に向って叫んだ。
「あ、あぁ。大丈夫だよ、ありがとう」
「絶対の絶対だぞ!?」
「気絶して足を引っ張らないように逃げるよ」
八鷹の態度は若干狂気を感じる勢いで少し怖いものがあった。
「話はまとまったか?ここからは私語厳禁でいくぞ」
ダンスは両手に小盾を装備し、アーロンが全員に『速度上昇』をかけて墓地を進み始めた。
しかし、大盾が装備できないから小盾2枚とは恐れ入る。本当に盾特化の人なんだな。戦闘になったらシールドで殴る感じだろうか?
俺は敵と出くわした時の対処をイメージしながら先に進む。
墓地の奥から強い腐臭が漂ってくるのを感じるが、幸い先程ネクロと対峙した場所には誰もおらず、モンスターも見当たらない。
順調にいけばあと数分の距離、安心しかけたその時、金属音と共に突然ダンスがよろけた。
「うわっ!?」
「ちょっと!?何やってんの!?」
「リタ、敵だ!!避けろ!!」
「敵って、何も居な」
「「「!?」」」
リタは後方のアーロン向かって吹っ飛ぶと、アーロンを巻き込んで地面を転がる。
二人の動きが止まった。
俺はパーティーに加入していないため2人のHPが見えない。
「い、生きてますか!?」
俺は二人に駆け寄り声をかけるが返事が無い。
「ベル、二人のHPは問題無い!
おそらく投擲か何かの遠距離攻撃スキルで、一瞬だけ気絶してる状態だ」
ダンスは考察を口にすると立ち上がり攻撃があった方向を警戒している。
「な!?
何かいます!!」
『アーススパイク!!』
八鷹の魔法が地表に無数のトゲを作ると、瞬時に数本のトゲがおれた。
「あ、あれ!!」
八鷹が指す先には銀色に光る頭蓋骨か転がっていた。
「「ゾンビメタル!!」」
叫ぶと共に俺は恐怖する。
ダンスと声がハモったからではない。
ゾンビメタルの経験値の高さの理由を目にする事になったからだ。
『シールドパリィ』
『シールドパリィ』
『シールドパリィ』
『シールドパリィ』
『シールドパリィ』
俺には見えない攻撃を延々とダンスは弾いていた。




