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第二十九話 白銀

 あれ?ここはどこだ?ここは何だ?


 確か俺は『ハイリザレクション』を詠唱していたはず…。


 何だ?俺の身体が…ない?


 目を閉じる事も、視界を動かす事も、手を動かす事も何もかもできない。


 ただ真っ白の世界が広がっている。


 もしや…これがマロン君の言っていた『ホワイトアウト』?いや、でも前回気絶した時はこんな感じでも無かったけど?


 …ハイリザレクションは成功したのか?


 『ハイリザレクション』はハイクレリックのスキルでHP、SPを大量に消費する事で周辺にいる敵味方まとめてリザレクションをかける自爆の逆みたいなスキルだった。


 不死属性の敵をまとめて殲滅する事も可能なため場面によっては切り札にもなるのだが、詠唱後にHPとSPを回復させるまでに時間が必要な事と、仲間が生き返ってもHPが1なので再度デスペナルティ(経験値減少)を受ける可能性があり逆に仲間に迷惑をかけてしまう可能性から不遇なネタスキルとして有名だった。


 …しかし、この空間はなんだ?

 詠唱時にSPか足りなければ『ホワイトアウト』すると言うが、気絶した意識がSPマイナス状態から回復するまでに覚醒した場合に備えた空間か?


 なうろーどいんぐ的な感じになってる?


 という事は、俺はホワイトアウト回復後に死んでいる可能性もある?


 …いや、ポジティブに先のことを考えよう。


 VRゲームのシステムなどの技術的な事は専門外だし、仮にこの空間の先にログアウトのヒントがありログアウトできたとしても、政府機関で植物人間状態の者が解放されるわけがない。


 俺が今できる最善は目覚めた後の対応を考える事だ。


 ネクロの大鎌で三人同時に殺された時…大鎌の軌道が変わってパラディンの大盾に当たると思われた刃の位置がズレたあれは、穂先から石突までの持ち手を変える事で可能?


 身近なイメージならバッティングセンターで大振りにするか小振りにするかを振る前に構えを決める。熟練の戦士ともなれば戦闘中にそういう事が可能なのか?


 しかし、これは20年前にはなかった事だ。攻撃範囲が一定ではなく戦闘内容に応じて瞬時に変わるとなれば、これはキャラクターのステータスやスキルよりもプレイヤースキルが重視されてくるのでは?


 政府が大掛かりな実験を行っているのはこのあたりの検証?VRゲームで成長した者がリアルに戻っても同様の成長をみせるのか?


 このあたりはこれ以上考えても堂々巡りに陥りそうだ。次は部位欠損、死亡について考えてみるか。


 確か、部位欠損にはヒーリングで止血、ハイヒーリングで部位再生らしい。そして心臓をやられた事による即死ダメージがあると言うこと。


 死亡して消えるまでには数分かかり、その間にはアイテムの回収が可能…。


 なんだろう、何か見落としている。

 死者数のカウント?


 リザレクションが【円卓の誓い】でさえ検証されていなかった事もあるが、死亡して消えるまでにリザレクションをかければゲームのように復活できるのか?


 なんだろう、何か頭が冴えている気がするのは落ち着いて考えられるこの空間にいるからか?


 あとはスキルの習得と詠唱についてくら


――――

―――

――


「おい!起きろ!!おい!!」


 だれだ…見知らぬ男…

 白髮という事は…八鷹?


「気づいたか!早く起きろ!!」


 どう、なっている?


 俺はぼやける頭で周囲を見渡した。



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