第二十七話 共闘
何をしても無理だと頭では分かっているが、レベルとステータス、状況を再確認する。
地下墓地の魔物は不死属性が多く、HPと物理防御力が高い。そのため比較的経験値は多く設定されているが、不死属性に有効な属性攻撃を持っていない職業ではタイムパフォーマンスが悪くなる。
今朝はターンアンデッドの詠唱といった事に気をとられていて確認できていなかったが、ターンアンデッドで範囲攻撃を行った際に無意識のうちに特別経験値が多く入るゾンビメタルを倒していたのか、前回確認した時から10レベル程あがっていた。
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基本LV 35
HP 58
SP 345
※STR 1
※INT 69
※DEX 1
※VIT 1
※AGI 1
※LUCK 1
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俺は現状のステータスを踏まえ、過去の経験から今できる対処法を考えたがやはりどう考えても【冥界の狩り手-ネクロ-】に対抗する手段が無い。
仮に【通天閣商会】【赤い森の塔】が総出でかかっても今の装備とレベルでは勝てない相手だ。
そして、部位欠損は魔法で治るのか?
力も情報も、何もかも足りない。
今の俺でできるとすれば、ネクロがプレイヤーの元から離れた隙を狙って助ける事くらいだが、それでもかなりリスクが高い。
仲間を置いて逃げて行ったプレイヤー達の選択が一番正しい選択だった。
考えれば考える程動けなくなっていた時、金属音が聞こてきた。
ネクロの方を見ると腕をダラリと下げて闇に溶け込んでいる。音の主は…他にいる。
そう気付いた時、俺は後ろから口元を抑え込まれ身体も拘束される。
抵抗を試みる前に、渋い小声で語りかけられる。
「すまない、驚かせないために仕方なく拘束させてもらった。今から拘束を解く、騒がずに話を聞いてくれるか?」
俺は頷く事で了承の意志を示す。
「よし、まずはこちらを向いてくれ」
渋い声に従い振り向くと、そこには10人程のパーティーがいた。
「あ、お前!?何してるんだ!?」
さっきとは別の声で、抑え気味の声だが怒気を含んだ声を浴びせられる。
「え…」
声の主を探すと、パーティの後衛あたりから白髮の男が睨んでいた。
確か以前酒場で神丸に絡んできた、仲間を亡くしてボロボロだった男だ。
「ヤタカ、静かに」
「すみません…」
白髮の男は八鷹と名前が表記されていた。
そして八鷹を制止した男が声を落として話し始める。
「各自準備と警戒を、こちらと少し話す」
八鷹を含めたメンバーが各自準備を始めた。これは古強者の気配がするな。
「突然驚かせてすまない、俺は【円卓の誓い】のアストルと言う者だ」
円卓の誓い!?
20年前、No.3の勢力を誇った清廉潔白を掲げた大人の実力者が集ったギルドで、その中で四天王と呼ばれていた1人に確かそんな名前の人がいたような…。
「俺は【通天閣商会】のベルです。
円卓の四天王とお見受けしますが、この先にいる【ネクロ】に挑まれるのですか?」
「ほぅ、そちらも古参勢か、では話が早い。
ソロでいるところを見ると、魔法職をされているのでは?」
「お察しの通り、ハイクレリックです。ただ、レベル35のINT極振りで、使えるスキルは『速度上昇』『ヒーリング』『ターンアンデッド』の3つですが」
「ふむ…。
もし可能なら共闘して頂けないだろうか?
一番後ろで警戒をして頂けるだけでも非常に助かるのだが。
俺はレベル45のパラディンで、前衛にレベル50のロードナイトを2名、タンクにレベル35のパラディンを2名、支援にレベル45のハイクレリックを2名、バッファーにレベル40のハイソーサラーを1名、後衛にレベル50のハイメイジを1名とレベル20の魔法剣士1名のパーティだ」
三日目にしてこのレベル…しかもパーティを組む事を前提とした上位職で構成されたパーティーか、恐らく大半が経験者に違いない。
このパーティーで異質な魔法剣士は八鷹と呼ばれていた白髮の男だろう。
この構成と人数なら、もしかしたら現在最強のパーティなのかもしれないが…
「討伐は…難しいのではないでしょうか?」
「前作同様の強さであれば討伐は不可能に近いだろう。今回は時間を稼いでいる間に仲間を救出し、情報収集、撤退できれば上出来だ」
「では…部位欠損はヒーリングで治りますか?」
「ヒーリングでは止血程度だ、ハイヒーリングで元に戻るが、かなりのSPを使うため戦闘中には使えないだろう」
「なるほど…わかりました、一番後ろで良いのであればお手伝いします」
「恩にきる。パーティーに入られるか?」
「いえ、皆さんの連携に入ると足を引っ張る可能性があります。できる事は背後の警戒や緊急時に何らかの支援くらいかと思います」
「なるほど、ではその様に頼む。
全員、配置に着け!」
俺は八鷹の後ろに並び、先日の詫びを伝えると、後で話がある…と言われた。
「これより予定通り救出作戦を行う。
各自、隣の仲間を守れ!」
「「「応」」」




