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第二十話 白熱

 【赤い森の塔】の皆と別れてから俺達は神丸を拾いに行く。


 どうも神丸と別れた辺りは未だ騒がしく、ギャラリーもいるようだ。


「うぉおおおおおおお!!」

「ふんぬぅぅうううう!?」

  

 何故か二人とも上半身裸裸になっており、威嚇しあう姿は『押し相撲』というより雰囲気的にはもはやプロレスに近い…。


 俺はホークに賭けるぜ!俺は神丸に!


 と、どうやら一部では賭け事にまで発展しているようだ。


「…どうする?」

「仕方ない、一肌脱ぐわ」


 そう言うと梅梅はギャラリーをかきわけ二人のもとへ向かう、大丈夫か?


「さあ、突如始まりました白熱の押し相撲対決もいよいよ佳境に入りました!!


 まずは、東方、押し相撲界の若き雄にして【通天閣商会】所属の力自慢!!神丸ッ!!


 対するは、西方、押し相撲界のベテラン、技巧派の【ラピッドストリーム】ギルドマスターァァァア!!ホーーークッ!!


 両者、がっぷり睨み合い、激しい駆け引きが続いている!


 力自慢の神丸!!

 怒涛の押しでホークを押し込みます!

 しかし、ホーク!!

 持ち前の粘りで必死に体勢を立て直します!

 両者一歩も譲りません!


 さぁ、会場のボルテージも最高潮に達してきました!両者、意地と意地がぶつかり合う、これはまさに死闘!!」


 いやいや、一肌脱ぐってそっちかよ!?


 それから暫く戦いが続くと思われたが、騒ぎがより大きくなったからか宿屋のNPCから夜も遅いので…と注意され、両者引き分けという形で押し相撲対決は幕を閉じた。


「いやぁ!良いもの見せてもらった!!」


 急に金髪で小柄な少年風の男が手を叩きながら三人の元に向っていく。


「俺は【梁山泊(りょうざんぱく)】のセキ。

 二人の試合で勝手に賭けを開いてた者だ。

 本来試合無効では全員に返済しないといけないんだが、皆聞いてくれ!!

 この暗い雰囲気の中で、こんなに場を盛り上げてくれたこの二人に礼としてこの集めた金を渡したい!どうだ!?」


 一部エェッという拒否の声が聞こえた気もするが、いいぞ!ありがとう!という雰囲気が大半の意見になったようで、神丸とホークはそれぞれ賞金を貰っていた。


 そして神丸とホークは最後に別れの握手をし、解散となった。


―――

――


「いやぁ、最後しか見てなかったけど二人とも凄かったね」

「ホークはなかなかの実力者だった、元大手ギルドマスターの経験は今でも活かされているようだな」


 なんだか勝負をした事で恨みを忘れて漢の友情みたいなものが芽生えたのかもしれない。神丸は満足そうに頷いている。


「俺はあのセキってやつが気になるわ。なかなかのクセ者やでたぶん。

 賞金ほんまに2等分になってるか分からんし、多分あれは自分も貰ってる感じやと思うわ。俺やったらそうするし」

「ふむ、全員に返済だと手元に残らないが、俺達に配るという名目を目眩ましに使った感じか」

「そんな事するかなぁ?二人とも疑いすぎじゃ…、それに無一文だったんだから感謝しようよ、これで宿屋に泊まれるんじゃない?」

「まぁあくまで可能性やな。その賞金ってどのくらいくれたん?」 

「確認する、…そうだな。酒場で乾杯できるくらいだ」

「ほんなら〜…帰るか」

「だな」

「え、帰るって?どこに?」

「俺達のホームや」


 そう言って二人はスタスタと【街の中心亭】を出ていくので、俺も仕方なく二人に続いた。


 全員金が無いか、思いっきり中抜きされてるのかどっちかやな。

 どちらも考えられる、まだゲームは始まったばかりだからな。


 ひょっとしたら宿に泊まれるかもという期待が打ち砕かれた事に二人の考察もろくに耳に入らず、俺はトボトボと路地裏に向かうのだった。


―――――――――――

DAY【1093/1095】

Time【23:55】

DEATH【60/1000】

―――――――――――


 デスゲーム二日目、長い一日だったな…。

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