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第二話 目標と記憶

本作主人公、通称ベル。

王道なヒーラーであり常識人なため、腐れ縁の悪友達によくツッコミを入れている正義漢。


挿絵(By みてみん)

――――――――――――――――

DAY【1095/1095】

Time【14:15】

DEATH【32/1000】

――――――――――――――――


 俺達は数字の減りを確認しながら目先の対策をたてる事にした。


「さて、色々と分かる範囲で試したが。

 おそらくゲームシステムは20年前遊んだものが丸々移植された感じだという認識で良さそうだな。

 細かい所はその都度検証するとして」


 肩がこったのか神丸は首を揉みながら頭をまわしつつ続ける。


「20年前みたいに本名を呼ぶんじゃないぞ、各自の呼び方を確認しておくが、梅梅はウメ。

 鈴星はベル、俺はゴッドで良いか?」


 オッサンの動きだがゲームを始める前のキャラクタークリエイトで三白眼の高身長、赤髪短髪イケメンになっているため何だかよくあるリーダーの様な雰囲気を感じる。


「おっけー、いやぁ懐かしいね本名、笑笑」

「いや、あの時は悪かったけど、了解したよ」


 過去の失敗談に花が咲く前に話題を変えよう。


「それより街の全体像の把握は出来てないけど、セレモニーがあった噴水広場と酒場の場所から考えるとここは最初の街アークだよね?」

「たぶんそうなんやないかなぁ、20年前の知識でチート無双みたいな感じになるんかな、知らんけど」


 色白の両手をあわせて背伸びをする梅梅を見て俺は何か違和感を覚えた。


 切れ目でベリーショートの白髮、そして神丸より高身長の梅梅はおそらくリーチの優位性を考え身長を最大に設定してい…いや違うそうじゃない。


「ウメ、間違いなら悪いけど…なんか小ぶりだけど胸あるんじゃ…」 

「お、さすがベル!初期装備の革の胸当てで分かりにくいこれを見抜きますか!最小値で設定してるけど女キャラやでこれ」


 なんなら装備外す?…やめろ。という二人の白熱する様子を見ながら20年前もそうだったなと思い出す。


「前は音声チャットじゃなかったけど、見た目がこれで声がオッサンはちょっと…」

「キツイな」

「まぁまぁ、なんか役に立つかもしれんよ、性別によるスキルとか装備とか」

「…そういえば結婚システムがあったな」

「ウメ、ゴッド…おめでとう」

「はぁ…それより次の目標の話だ」


 時折昔話をしながら俺達のデスゲーム攻略会議はしばらく続く、要約するとこんな感じだ。


①経験者として仲間を集め率いるのか?→NO

②どこかの有力そうな集団に属するのか?→NO

③効率を重視するのか?→NO


 何が正解か分からない状態で人の命を預かるのは嫌だし、他人に委ねたくも無い。


 また、3人でいくら効率を求めて強くなっても3人ではクリアできないゲームだ。


 それならそれぞれゲームをしていた時の様に各自得意なキャラクターを育成し日々を過ごし、変わりゆく情勢に成り行きで合わせていこうという結果に終わった。


「最終確認するぞ。まず職業登録に必要な条件、基本レベル3をクリアし、1つめの職業登録を行う。登録後は次の登録条件レベル10、レベル15と同じ様に行う」

「了解、それじゃ行こか」

「分かった」


 俺達は緊張感もそこそこに酒場を出た。


――――――――――――――――

DAY【1095/1095】

Time【15:05】

DEATH【33/1000】

――――――――――――――――


 酒場を出た俺達は街の中央にある噴水広場を横切り、職業登録をするために必要な条件(基本レベル3)をクリアするために街の外を目指した。


「広場に残ってる人かなり減ったやん」

「さすがに3時間も経てばな」

「ここまですれ違う人も少なかったよね」

「声が大きい者が先導したのだろう」

「やんな」


 遠目でわかりにくいが、広場に残っているプレイヤーから暗い雰囲気を感じる。


「気になるのか?」

「いや、まぁ」

「戦力にならないと見捨てられたか、状況を理解できない子供か、もしくは俺達のような経験者といったところだろ」

「何人か拾う?」

「やめとけ、そんな余裕は無い」

「ですよね」


 先頭を行く梅梅は肩をすくめ苦笑し、その後ろに続く神丸は広場を一目見ただけで興味を失ったようだった。


 自然にRPG歩きの最後尾になっていた俺は二人の身長差を観察して足を止めた。


 しかし改めて良く見ると…俺はリアルに近い170cmに設定しているが二人の身長は俺より高く、俺は神丸が180cmくらいだと思うが梅梅は軽く200cm超えてるんじゃないか?


 座ったり短時間だと分かりにくいけど、見上げる形が続くと地味に首に負担が蓄積されるのか痛い…。


 細かすぎるリアリティに感心していると…"すみません"という声が聞こえた気がする。


「ん?」


 振り返ってみると、そこには金髪のイケメンを先頭にして6人の男プレイヤーが立っていた。


「お姉さん、お一人ですか?デスゲームに巻き込まれて一人では不安でしょう?もし良かったら俺達のギルド【ルドン送り】に入りませんか?」


 お姉さん?ルドン送り?俺の思考はツラツラと続けられる男の説明を遮り過去を思い出していく。


 …あぁ!確か20年前にもいたな!!


 【ルドン送り】有名な効率重視のギルドでサーバー上位の廃人ギルドだった。


「いや、それより俺、お姉さんじゃないですよ?」


 俺の声を聞いて男の顔はあからさまに曇った。


「なんだ、野郎かよ。まぎらわしい髪型しやがって」


 そう言うと男は話を切り上げ、舌打ちとともに仲間を連れて街の外へ向かって行く。


 控えめに言って凄く嫌な気分だ。


「なになに、ナンパされてんの?笑笑」

「青髪のポニーテールなら後ろ姿では間違えられても仕方ない。ある意味自己責任の部類だろう」

「被害者に鞭打つとか、笑笑」


 二人が【ルドン送り】とすれ違い、置き去りになっていた俺を迎えにきた。


「俺はナンパされんかったで」

「お前は背格好から男にしか見えんからな…」

「ロリコン野郎か」

「いやおま……まあ良い、面倒だ」


 さっきまで嫌な気分だったが、二人らしい会話を聞いていたらなんだかどうでも良くなってきた。


「ごめん、考え事して遅れたらこうなった」

「うーん?会話ログは昔と違って見れんようやね、ちなみに何言われてたん?」

「女と間違われて仲間にならないか勧誘されたんだよ。【ルドン送り】だってさ」

「なんや上位ギルドやん、懐かし」

「確かあまり評判は良くないギルドだったと記憶しているが、デスゲームを攻略してくれる有力候補ではありそうだな」

「関わりたくは無いけどね」

「ならば奴らを見かけたら近寄らない事にしよう、あと位置把握のためにパーティーを組むぞ、今みたいに狩り場で置き去りにしたら難だ。ウメ」

「はいはい」


 梅梅は返事をすると人差し指でこちらからは見えないコンソールをタッチしていく。 

 

『パーティー名【通天閣商会】から招待が届いています、受けますか?』


 視界に浮かんだ文言と選択肢、俺は迷わずYESを選んだ。


「まだこの名称使うんだ」

「もしかしたら知り合いおるかもやし旗印やな、そのうちギルド作ろ」

「知り合いに再会しないのが最善だがな」

「優しいねぇ」


 相変わらずの二人を見て自然と笑みがこぼれた。

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