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第十九話 同盟

「すみません、皆さんお待たせしました。

 このデカいのが【通天閣商会】のギルドマスター。梅梅です」

「皆さん初めまして。

 まず今回のご助力、本当に感謝致します。

 皆さんのご好意が無ければ今頃私は死んでいたでしょう」


 いやおま、いつもの関西弁は?!

 ま、まぁ、今ツッコむと俺が変に見えるだろうし、とりあえずは今は我慢だ…。


 俺は梅梅にルヤを筆頭に【赤い森の塔】のメンバーを紹介すると、梅梅がまた話始める。


「私と同じように助けて貰った本人の神丸からもお礼を伝えたいのですが、先程入口で旧知の仲の者と出会い少し遅れています」


 神丸の騒動を旧知の仲と表現するとは、詐欺師の言い回しだなぁ…。


 それに女声まで作って、どういうつもりだ?


 確か中性的なマロンさんの事で変な興味の持ち方してたけど…頼むから変な事はしないでくれよ。


「それで、ささやかですが、皆さんから受けた好意への感謝の気持ちとしてコチラを皆さんに贈ります」


 そう言って梅梅はアイテムBOXから妖刀村正を取り出し、高々と掲げてみせる。


 たぬきち君あたりから、すげぇ、何あれカッケー。と声が聞こえる。分かる分かるよ。男子たるもの一度は憧れる日本刀だもんな。


 【赤い森の塔】の皆がざわめく中、梅梅は妖刀村正をルヤさんのもとに持っていった。


「ええと…」

「取引の仕方わかりますか?」


 おそらく取引申請を送ったのだろうが、何だかスムーズにいってないような感じだな。


「いえ、その…。

 お気持ちはとても嬉しいんですけど。

 ――――お断りします」

「な、なんでやねん?!」

「ぇ、え!?」


 【赤い森の塔】全員に動揺が走る。いや、俺もだけど、そこで関西弁とオッサン声に戻るとか普通にコエーよ!?


 これはフォロー入れないと!?


「み、皆さんすみません。言う必要無いと思って言って無かったんですが、ウメは男です」

「ちょっと、何でバラすん」

「いやおま、さっきのなんでやねんでバレてるから!?」

「あ、心の声漏れてたか」

「ダダ漏れだよ?!」


 あちゃ〜、と頭をポリポリかきながら梅梅は苦笑している。おそらく本気のなんでやねんだったのだろう。


「皆さんすんません、騙そうとかそういう悪気は無かったんよ。それより、村正本当にいらないの?遠慮せずに剣士さんが使ってくれたら良いし、何なら売ってくれてもいいんよ?」


 梅梅はルヤの予想外の反応にやはり動揺しているようで、さっきまでの演技をすっかり忘れて素の状態に戻っていた。


 ルヤ達からの反応が良くないからか、あたふたして村正の性能を語り初めたりしている。


「いえ、その。

 ここでそれを受け取ってしまうと私達が報酬目当てで助けたと思われかねないですし、途中で引き返してしまったという事実もありますから受け取る訳にはいかないと思うんです。

 それに私達の目的は生きてログアウトする事ですから、より攻略できそうな人が装備を整えている方が良いとも思うんです」


 おそらく梅梅より若いルヤさんだが、ギルドマスターの責任を良く心得ているな。


「う、うーん。より攻略できそうという話だけなら俺達が持ってても宝の持ち腐れ感はあるんやで?

 ただ、考えは良く分かるし尊重したいと思っ、…思います」

「あの、気にせず関西弁使ってもらって大丈夫ですよ?」

「あ、そう?ほんなら遠慮なく」


 梅梅が演技していた理由がなんとなく分かった気がする。初対面でいきなりの関西弁は馴れ馴れしいと不快に思う人もいそうだなと見てて思う。


「俺達にできるお礼は何かあるやろか?何でもするで?」

「それでは、同盟を組みませんか?」

「同盟?そんなんでええの?」 

「BOSS攻略をして生き残る為には沢山の人と協力する必要があるとベルさんが言ってました」


 いやいや、ルヤさん。

 どんだけしっかりしてるんだ。


「ベル、そんな話してたんか、やるなぁ」

「20年前の知識を少し話てたくらいだよ、どのくらいの人数がいるだろうとか」

「ほ〜ん、なるほど。

 ほんならそうやな、同盟は組む!

 ただし!!

 それとは別に、今回のお礼はクリア後にさせて貰うで!!」

「??」

「BOSS撃破報酬の事や。

 今後俺達がBOSSを撃破したとしても【赤い森の塔】の人数もあわせて均等に分配すると約束する。全員で生き残って国からしっかり迷惑料もらわんとな、笑笑」

「それは、ありがとうございます」


 報酬!報酬!とたぬきち君が目を輝かせているし、他のメンバーも若干表情が緩んだ気がする。


 クリア後の事を想像できる様になったのは大きいのかもしれないな。


「同盟を盛大に祝いたい所やけど、俺ら今は無一文なんよ、笑笑。それに今日はもう遅いから、また明日の12時くらいにここで話しする感じでどうやろか?」

「大丈夫です、それでお願いします」

「オッケー、ほんならベル、ゴッド回収して帰るで」

「了解。それじゃ皆さん、また明日」


 俺達は自然な笑顔で別れの挨拶をし、二日目にして心強い仲間を得た。

 

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