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第十八話 有名税

「何こんなところで喧嘩してるんだよ!?」


 俺は仲裁に入ろうと3人の間に割って入った。


「お前も【通天閣商会】の人間か!?」

「そ、そうだけど?あなたは?」

「俺は【ラピッドストリーム】ギルマスのホークだ!!」

「え、まさか、あの大手ギルド!?

 20年前にレアドロップを落とすBOSS狩場を占有していた、あの!?」

「そうだよ!!」

「すごい有名人がまさかここに!!」

「お、おう、そうだよ。あんたも20年前やってたのか?」


 俺の反応に拍子抜けしたのか、赤モヒカン&無精髭のオッサンのコメカミに浮かんでいた血管がひいていくのが見える。


 また、俺達の様子を気にしていた周囲のプレイヤーが【通天閣商会】【ラピッドストリーム】という単語をヒソヒソと話している気がする。


「ええまぁ。それで、何故喧嘩に?」

「神丸って名前を見かけてな、BOSS狩をやっていた者として挨拶をしておこうと声をかけたんだ」


 あぁ、アバターの上を注視していれば見えるあれでバレたのか。てか、挨拶から何故喧嘩に…。


「そ、それから?」

「何度か挨拶を試みたんだが、この野郎、無視しやがる」


 ホークは神丸に向けて睨みをきかせているが、神丸はやはり無視をきめこんでいるようだ。


「へ、へぇ…。ゴッド、何で無視を?」

「20年前の恨みだ。それに俺だけじゃない、狩場を占有されて気分を害していた者は多数いたはずだ」

「それは、うーん。…時効じゃない?俺達もう中年だよ?」

「俺は別に恨みなんか無いで?

 なんとか言え言われたら言うのが礼儀やん?

 押すなよ押すなよと一緒やろ?」

「ウメはややこしくなるから黙っておいてくれ」

「しゃあないな、貸しひとつやで」


 なんでだよ、とツッコミを入れる気もしなくなる程げんなりした気分でホークに向き直すと何やら腕組みをして考え込んでいる。


「そうか、そういう事なら悪かった。謝ろう。

 あの頃の俺達は若かったしBOSS狙いならうちのギルドに入れば良いだろうという身勝手な思いもあったんだ。占有するような行為をしてすまなかった」


 外見に似合わずホークは話が分かる相手だった、むしろ神丸に問題がみられると思えるくらいだ。


「ゴッド、ホークさんもこう言ってるんだし。水に流せないか?」

「…謝罪を受け入れよう。こちらも馬鹿にするような発言すまなかった」


 そう言って神丸はホークに手を差し出し、ホークもそれを…あれ?握手とかできなくなかった?


『バシン!!』と大きな音をたて、ホークが神丸の手の平を強く弾いていた。


「神丸とやら…白黒つけようってのかい?」

「ああ、押し相撲で勝負だ」


 …あったなぁ、そんなの。


 Roでは『じゃんけん』『腕相撲』『押し相撲』というちょっとしたミニゲームコマンドがあるのだ。ステータスに関係するミニゲームもありイベントなどで利用されてたっけ。


「うぉぉぉぉ!!」

「ふんぬぅぅぅう!?」


 立っている場所から態勢を崩したら負けという単純ながら駆け引きの奥が深い『押し相撲』の攻防が始まり、二人の大声と手がぶつかり合う音が室内に響く。


 突如始まった二人の押し相撲対決を見ようとギャラリーが増えてきた。


「ベル、たぶん二人のステータスはSTR極振り同士やろから、これ長引くで」


 うーん、仕方ないなぁ…。


「ゴッド、先に行ってるよ」

「ああ!!また後でな!!」


 珍しく白熱している神丸を置いて、俺は梅梅と先に【赤い森の塔】の皆がいる席へと向かった。



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