第十五話 焦燥
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DAY【1094/1095】
Time【19:35】
DEATH【60/1000】
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火柱に向けて俺は全力で走っていた。
更に死者が1人増え、夜間の視界の悪さも加わり不安がつのる。
「うぉぉぉおおおおおお!!!!!!」
前方から男の咆哮が聞こえ、何かが焼け焦げる臭いが漂ってきた。
「ベルさん!!」
ルヤさんの高い声が俺を呼び止める。
振り返ると【赤い森の塔】のメンバー全員が足を止め青い顔をしている。
「どうしました!?大丈夫ですか!?」
「この先は…ちょっと無理そうです、セレモニーを覚えてますか?」
倒れ込みそうになったユカさんに寄り添うルヤさんも苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「あぁ…」
火柱だけならともかく、臭いと絶叫…記憶に新しい現実に迫る死の恐怖がフラッシュバックし、彼女達を襲って足が止まったのだろう。
俺は皆に笑顔をみせる、恐怖を撒き散らす男の咆哮に負けない様に大声で別れの言葉を伝える。
「皆さん、ここまでありがとうございます!!
皆さんがいなければここまで来れませんでした。どうか先に街へ戻っていて下さい」
「本当にすみません…」
「大丈夫です!
また明日お会いしましょう!!」
後ろ髪を引かれる思いはあったが、俺は火柱の元へ向かった。
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俺が向かう間も咆哮は止むことなく続き、あれから更に火柱が2本あがる。その光景は今が夜である事を忘れる程に世界が赤い。
近づくだけで火傷しそうな熱風を浴びながら二人のの方角が火元を指しているのを確認する。
「おーい!!ゴッド!!生きてるか!?
ウメも死にそうだけどどうなってる!?」
俺は、火柱に向って叫ぶが返事は無い、声が届く距離では無いのかもしれないし、返事ができる状態ではないのかも知れない。
「プロテクション!」
物理攻撃が軽減される魔法なので熱への耐性は全く期待できないが、気休めでかけておく。
「ええい、ままよ!!」
俺はアイテムBOXの中からスライムの粘液を取り出すと頭から被った。
くらげを頭からかぶる事があればこんな感触なのかも知れない、ちょっとした痛みを感じるのでダメージを受けていそうだがおそらくプロテクションで防いでいる。
粘液が蒸発するまでは熱への耐性が少しの間だけあがるはずだ、たぶん、おそらく。
準備が整った俺は、火柱へと一気に近づく。
スライムが蒸発していくのが目に見えてわかる。
「まじかよ」
俺は追加でスライム粘液をかける。ドロップアイテムを売る前で本当に良かった。
「うぉぉぉおおおおおお!!!!」
男の声が近づいた事で更に大きくなった気がする。二人はどこにいるんだ!?
「うぉぉぉおおおおおお!!!!
ゴッド!!!!!!いよいよもたんで!?」
「安心しろ!!死ぬ時は一緒だ!!」
二人の声!?
まさか、この不気味な叫び声は梅梅のものか!?
「ゴッド!! ウメ!! どこだ!?」
「その声はベルか!?助かった!!」
「四本の火柱が重なり合っている部分にウメがいる!!回復アイテムかヒーリングを頼む!!」
相変わらず何を言ってるんだよ!?
言われるがままに4つの火柱が重なり合っている中心を見ると、人らしきものが絡み合っていてウメのHPゲージが見えた!!
ヤバい、今にも死にそうだ。
「ヒーリング!!」
俺はウメのHPゲージ目掛けて覚えたての回復魔法を使った。【赤い森の塔】の皆には本当に感謝しかないぞ。
「もっと回復してくれ〜!!」
俺のヒーリングレベルが1のせいもあるが、ウメのHPは半分も回復していなかった。
「ヒーリング!!」
「ファイヤウォール!!」
俺の魔法とともに火柱が再び追加され、ウメのHPが再び瀕死に陥る。
「ヒーリング!?」
あの声は神丸!?魔法を習得したのか!?何で梅梅に魔法攻撃を!?
異常事態に火傷する程の熱さや、人が燃える嫌な臭いも気にならなくなってくる。
「まだか、まだ終わらんか!?」
「ベルが来たからと言って調子に乗ると死ぬぞ!?」
「いや、ほんと死ぬから!?
ヒーリングのSP消費かなり多いんだよ!?」
「早期決着キボンヌ!!」
「クソッ!?
俺は誰かさんみたいにドMじゃ無いんだぞ!?
ベル、すぐに回復してくれよ!!
行くぞ!!」
「え、え?!」
「一撃必殺!! 烈火瞬斬!!!!」
刹那、炎の中から火だるまになった神丸が剣を一閃した感じで飛び出してきた!?
「ひ、ヒーリング!?」
俺が回復魔法を唱えたと同時にファンファーレが聞こえる。
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NEWS【通天閣商会】神丸が草原フィールドユニークBOSS【忍者】を撃破しました(賞金1500万円)
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…お前ら、なにしとんねん!?




