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第十四話 急変

―――――――――――

DAY【1094/1095】

Time【18:00】

DEATH【59/1000】

―――――――――――


 BOSS撃破直後に新たに死者数が増え、俺は自分で分かるくらい真顔になっていった。


 【赤い森の塔】のメンバーは死者数が増えた事に気付いてないのかBOSS撃破の情報に興奮し、それぞれが感想や祝いの言葉をくれている。


俺は素直に喜べる状態ではなかったが、ひとまず無理矢理表情をつくり当たり障り無いお礼を言う。


 メンバーの話をうわの空で聞きながら急いでパーティー欄を見るが二人の名前の表記は変わらずにあった。ただし、二人のHPについては近くにいないため分からない状態だ。


「あの、急にすみません。質問なのですが、死ぬとパーティーから除名されるシステムかどうか聞いた事ありませんか?」

「いえ、私は無いです」


 ルヤさんが他のメンバーに視線を送ると全員顔を左右に振った。


「そうですか…ありがとうございます。あの、お茶ご馳走様でした。ちょっと仲間の様子を見てきたいと思います」

「その…、場所の検討はつくのでしょうか?」


 ルヤさんは俺の様子から事態を察してくれたのか真剣な表情で確認をしてくれる。


「大丈夫です」

「…護衛は入りませんか?そろそろ日没の19時です」

「…ただでさえ危険なのに、皆さんを危険に晒すわけには」


 ルヤさんは少し考えたあと、メンバーを見渡してから言葉を続ける。


「今回のBOSS討伐って何人くらいでされたのですか?」

「たぶん、2人だと思います…」

「ベルさんの護衛に賛成の方は手を上げて下さい」


 ………鳥肌が立った。


 メンバー全員が手を上げていたのだ。


「ありがとう、ございます」


 俺は上擦りそうな声を整えながら無意識に潤んだ目を擦り、向かうフィールドの情報を話した。


―――――――

――――――

―――――

――――

―――


「皆さん気をつけて!!

 アクティブモンスターの野良狼、前方に鶴翼の陣で5匹です!」


 先頭を走る俺は【赤い森の塔】のメンバーに大声で伝達する。


「OK」

「りょ」


 黄髪で細身のキオさんと、緑髪で細身のスバルさんが俺を軽く追い越し狼の群れに肉薄する。


 二人はナイトとアサシンの違いはあれど、ともに【AGI】特化型らしく見事に狼のカミツキをかわしながら、後衛の俺達に攻撃が来ないようにヘイトを集めていた。


「カクヨムの陣って何すか!ファイヤアロー!!」

「タヌタヌ、カクヨクの陣だよ!アイスアロー!!」


 黒髪オールバックのソーサラーのたぬきち君と、マロンさんが狼に魔法の矢を放つ。


「戦闘中に私語を挟まない様に!プロテクション!!」

「「速度上昇!!」」


 ルヤさんは前衛の二人に攻撃が当たった時に軽減できる支援魔法をかけ、更にシンちゃんさんとユカさんが前衛の二人に支援魔法をかける。


 いやいや、コンビネーションぱねぇ!!


 BOSS【大蛙】が出るこのフィールドに来る間に遭遇した雑魚敵の処理の仕方とか、その間に俺が魔法を習得できるようにアドバイスくれた事からしてある程度は予想してたけど予想以上に強い。


 モンスターに対する恐れは勿論あるだろうが、それを上回る信頼感が強さに繋がっていると感じる。


 おそらくRoをする前から似たような感じのゲームを数こなしているのではないだろうか。


「プロテクション!」


 俺も万が一に備えるためと、スキル経験値稼ぎに後衛職にプロテクションをかけておく。


 一匹、二匹と確実に狼は削られ、誰もダメージを受ける事なく野良狼の群れを討伐した。


 皆それぞれに、おつ、お疲れと声をかけあう。全く、良いパーティーだ。


「皆さん強すぎますよ」


 皆をまとめているルヤさんに率直な感想を伝えるが、ベルさんがいてくれるからですと、謙遜を言われてしまうくらいだ。


「あと少しで【大蛙】が出るポイントです、二人の方向を確認してみます」


 俺は、パーティーのおおよその方向が分かる機能に期待して辺りを見渡す。


 仮に死ぬ場合、消えて消滅とかはやめて欲しい。せめて亡骸でもないと生死が分からずにずっと探し続けるはめになる。


 パーティー欄を確認しつつ移動していたその時、二人の方角とHPゲージが標示された。二人とも瀕死状態に近い感じだったが、生きていた!!


「い、いました!!この方角です!!」

「良かった!!さぁ、皆、あと少しです!!」


 【赤い森の塔】の皆がまるで自分の事のように喜んでくれている。なんて優しい人達なんだ。


 それに比べてあの二人ときたら…。


 何と言ってやろうかと、怒りを言葉に変換していると二人がいる方向で急に火柱が二本、暗闇が赤く染まる程に上がり、梅梅の体力がドンドン減っていく。


「皆さん!急ぎます!!ベルさんも!!」

「は、はい!」


 闇夜に映える火柱を見て呆然とする俺とメンバー全員だったが、ルヤさんは直ぐにまとめあげる。彼女がいなかったら二人のもとにはたどりつけなかっただろう。


 俺は慌てて「速度上昇」をかけ、再び走り始めた。

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