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59.アルベルトの戦い


「主殿っ!!主殿ーーーーーっ!!」

 なんだかヒスイのような声がする。だが彼はいつも冷静沈着な蜘蛛だ。慌てるようなことは無いから彼じゃないだろう。

 まぁ。俺の事を”主殿”と呼ぶのはヒスイだけだが、近くにいる別の誰かと誰かだろう。

 それにしても眠い。。もう少し静かにしてくれないものだろうか。。


「・・・ん。。。寝かせて。。。。ゴボッ。」

 寝言を呟いて、胸の激痛と何かを吐く感覚に一気に目が覚めた。


「主殿っ!!」

「カハッっ。。ゴホッゴホ。。。」

 一瞬にして覚醒して肺を損傷した記憶が蘇り、小さく咳き込む。大きく息を吸えばそれだけ咳も強くなり、損傷部位にできたかもしれない血栓を飛ばしてしまうかもしれない。そうなればまた出血だ。喀出できればまだいいが、そのまま大量に出血してしまえば窒息はもちろんのこと出血性ショックを起こす可能性もある。とはいえ、浅い呼吸で乗り切れるのかは。。。医者としても不明だ。何せ自分に起こるとは思ってもいないし咳などという生理現象を抑えることもできない。そもそも外科じゃ、すぐに処置ができていたから患者にああした方がいいこうした方がいいなど言うこともなかった。まぁ、素人並みの勝手な判断だが、今、自分自身でコントロールできることはこれくらいしかないのが現状。


 酸素濃度を下げないように。出血部位を刺激しないように。。でも我慢できない咳はきっと中に溜まった血を吐き出すために必要だから。。。

 などと完全に重症患者の俺の思考力はほとんどなくなり、外科医としては恥ずかしいくらいの適当な事しか思い浮かばず、小さくそっと呼吸を繰り返す。


 その間も必死に呼びかけてくるヒスイ。。

(ヒスイ。大丈夫だ。。致命的な場所は外れている。圧縮ポーチから。。。治癒薬を。。)

 そう思念に呼びかけた。

「あっ。。あぁ。思念は繋がるのであるな。」

 ヒスイが少しだけホッとしたように答えてくれたが、次のフェルの言葉で絶望の淵に落とされた。

「そなたの言うポーチとやらは、攻撃を受けた際に消滅した。」

 と。。


 何という事だ。。治癒薬も回復薬もその中に入っているだけしかない。。

(何が起きたか。。。分かるか?)

 とりあえず現状を把握すべきと判断し、俺の身に何が起きたのかを確認することにした。

 というよりは、何もしないでいると、胸の痛みと苦しさがな。。。話でもして紛らわせたいというのもあった。俺が先ほど気を失ったと思っていたのは数十秒の事だったようだが、何が起きたのかが全く分からないからだ。



 そして聞いた。

 フェルが圧倒的な力差でジェネラルボアを倒したあと。

 どこからともなく槍が放たれた。勝利を確信していた俺たちの油断。

 放たれたのは、槍と小さな魔力弾が3発。

 槍は俺の左胸上部を貫通。魔力弾は、俺とフェルとヒスイに着弾した。

 俺に当った魔力弾は丁度ポーチの部分だったらしく、炎で焼き尽くされたかのように消滅し、

 フェルに当った魔力弾はフェンリルの能力の高さ故、かすり傷も与えられなかった。

 ヒスイに当った魔力弾は、彼の足を一本奪っていった。


(・・・ヒスイ。大丈夫なのか?)

 俺の油断のせいでヒスイを守れなかった悔しさ。

「少々ぬかってしまった。足は問題ない。人間と違い6本あるのでな。1本くらい無くても支障はない。」

 そう言って見せてくれた足は、丁度真ん中に位置する場所で、関節から先が無い。人間でいうところの膝から下を失った感じか。

(フェルも。私が油断したばかりに、迷惑をかけた。)

 頭を下げたかったが、咳が出る重症患者の俺。目線だけで謝意を表しておく。


「気にするでない。それよりも敵を見つけねばならぬ。苦しいだろうが、しばし待つのだ。」

 そうフェルが言ったのを最後に、俺の意識はプツンと途切れた。





-----深い闇の中。



 私はそんな暗闇の中から自分を見るというなんとも不思議な状況に陥っていた。

 始まりはきっとあの時。流行り病に罹患し、生死の境をさまよったことが原因だろう。


 オルティース公爵家の嫡男として順風満帆に生きてきた私にとって、たった一人の世界は不思議であった。常に多くの使用人たちに囲まれ、ベル一つで何人もの使用人が昼夜問わずに手足となって働いていたからだ。

 だからと言って寂しいなども感じない。あくまで周りは使用人。主従の関係であり一線を引いた関係なのだ。それに両親とも希薄な関係性だろう。幼いころから後継者教育を施され、世にいう”甘える”なども良く分らないし、”愛”なども感じたことがない。そもそも感情というものに必要性を感じてこなかった。


 しばらくは闇の中だけの感覚だった。

 少しすると僅かに何かを感じるようになった。それは春の日のように温かい感覚。

 それが何を意味するかを知るのに、随分と時間を要したように感じる。その間に冷たさや重さや軽やかさなど様々な感覚を味わった。


 そしてそれが”感情”だとわかった時には、今までの自分を全否定されているかのように思った。

 私には縁のない感覚であるにも関わらず、温かい感覚には心地よさすら感じたからだ。


 徐々に外の世界を感じるようになって初めて気づいたこともある。私の身体は”誰か”によって動いていることに。


 そうして時折感じる様々な感覚は、そいつの感情であったことに気が付いた。

 私の身体を動かしているヤツは私と違い、感情豊かなようだ。

 マーガレットの言動に一喜一憂し、

 兵士たちの身を案じ、

 邸の、町の、国の平穏を願う。


 そのどれもが私が取るに足らないと思っていた事柄だ。


 国の軍事を担うのは我がオルティース公爵家にとって当たり前のことで、国は守るべきものだから守ってきた。戦いになれば負け戦にはできない。非情であろうと、勝つために必要なことであれば敵味方など関係なく情け容赦ない命令を下してきた。

 そこに感情など必要ない。公爵家としての責務を行っているだけなのだから。


 だが、この身体を動かすヤツはそうはいかないらしい。

 ”田之上信二”という名を持つヤツは、私の身体に染み込んだ言動から抜け出せずに、立場上、容赦ない決断を下すこともあったのだが、苦渋の決断なのだろう、無意識に口から滑り出る非情な下命に、悔しさをにじませた感情が流れ込んできた。


 マーガレットに対しては”一目惚れ”をしたらしい。彼女への感情はもっとストレートに。もっと強くこちらに流れ込んできた。

 彼女が僅かでも微笑えめば、嬉しさと安堵が流れ込み、彼女が僅かな擦り傷でも負えば、心配さでおろおろとうろたえ、彼女が苦悩を滲ませれば、心痛め行くあてのない謝罪の念を漏らす。

 

 私の過去を見れるようだが、その所業に怒り悲しみ哀れみ懺悔して。。自分が行ったことでもないのに、ずっとマーガレットに対して申し訳なさを感じているようだった。


 そうして、客観的に俯瞰的にその二人を見ていて気付いた。

(どうやらあの二人は想い合っているようだが。。。なぜ手を出さぬのだ?名実ともに夫婦であるし、そもそも私が散々手をだしているのだ。今更なにをためらっているのだ?)

 思春期の子供のように、なかなか進展しない二人を強制的に見せられているこちらの身にもなってほしい。もどかしいったらない。


 いつしか、この奇妙な環境に慣れてくると、”田之上信二”が自分の記憶を思い出すときに、こちらでも僅かではあるが見ることができるようになってきた。


 見たことのない世界。この国とはまるで違う発展の仕方をしている。

 町には鉄の塊が走り、空には鉄の鳥が飛ぶ。信二が医者だと言ったその技術は、こちらの世界では見たことがないもので、直接身体を切り刻み怪我や病を治す。怪我もしていないのに、身体を切られる患者はどのような気分なのだろうか。しかし見ている限りでは、”手術”と呼ばれることを行うのに、痛みを感じていないようだ。眠っている者までいた。不思議だ。


 さらに直接身体に液体を注入する様は、恐ろしさすら感じたのだが。。

 ”手術”や”点滴・注射”なるものを受けた患者たちは一様に受ける前よりも健康になって笑顔を見せて帰っていく。

 内臓を取り出して元に戻したり、脳を触ったり。。果てには止まりかけた心臓を直接握り拍動させていた。。あんなことをして生きていられるのがそもそも不思議であるのに、健康を取り戻してしまうのが理解が追い付かなかったが。。。


 その時を思い出している信二の感情は。。

 ただひたすらに目の前の患者に集中し、治すことだけを考え、そして救えればこの上なく安堵し温かい感情に包まれ。。救えなかった患者には申し訳なさと悔しさを滲ませていた。


 ”医者”の光景に見慣れてくれば、信二の技術が卓越したものだとわかってくる。

 新人の手つきと彼では雲泥の差があったからだ。

 

 それに気づいたときは何故が私の方が誇らしくなってしまった。


 いつの間にか私と信二は随分と馴染んでしまったのかもしれない。

 そう気が付いてしまえば、さらに彼の感情がはっきりと伝わりだし。。


 自分の愚かさが惨めだと思うほど、自分が何をしてきたのかわかってきた。

 私が必要でないと思ってきた”感情”は人として無くてはならないものであったのだと。。


 彼がいつか私に対して伝わって欲しいと願った感情は、今の私には良く分る。

 人を人として見なくてはならないのだと。

 けれど、軍人として。。。どうしても引けない時もある。そこは信二も最近理解してくれているようではある。彼が暮らしてきた平和な国では分からない部分もあるだろうが、あの世界のように戦争の無い平和な国が、今この世界が目指すべきものなのかもしれない。


 魔王がいるこの世界では難しいのかもしれないが、いつの日か、信二の国のようになってもいいのかもしれないな。


 そんな柄にもないことを考えるほど、この暗闇の世界は私を変えた。

 私に猛省するために神が与えた時間だったのかもしれない。

 だが。。。

 私は戻るべきではないだろう。もどかしく思っていた二人がついに想いを通わせたのだ。


 妻を取られたのだから、どんな感情になるのだろうと思っていたのだが。。。

 怒りでもなく、悔しさでもなく。

 もどかしさが晴れた安堵でもなく。。

 私には一度も見ることができなかったマーガレットの柔らかく幸せそうな笑みを見た瞬間。。。

 暗闇の中にいるのに。。。闇の底へ落とされたような感覚を味わってしまった。


 あぁ。これが好きだという感情だったのか。。

 私もあの窓辺で彼女を見たときに、あの美しい横顔に一目惚れしていたのだと、その時初めて自分の隠れた気持ちに気が付いた。


 それなのに。。

 あのような鬼畜な所業に走り。。彼女の心を壊してしまっていたなんて。。。


 どれほど愚かしく、どれほど恥ずかしいことだったのかと。

 今更気づいても、彼女に懺悔もできない。

 であるならば、この二人の幸せを願ってやることが、私の唯一できることだろう。

 また昔のように私が奪ったところでマーガレットの笑顔を見ることはできないのだから。



 罪人が更生していくのはこんな気分なのかもしれないな。

 犯してしまった罪を消すことはできない。謝っても謝りきることなどできない。

 それでも、どうか相手の心が僅かでも癒されることを祈ることだけは許してほしいと。。



 そうやって何とか自分の気持ちに折り合いをつけた時だった。

 スタンピードの一報が入ったのは。



 やはり信二は非情な決断を下せずにいた。

 ある程度の兵を犠牲にしなければ、スタンピードの脅威は排除できない。

 にも関わらず、最低限の犠牲で何とかしようなど。。正気の沙汰ではない。このような作戦では全滅の可能性の方が高い。


 縋りつくはフェンリルであろうか。。しかし、いかに伝説級の魔獣であろうと、その能力はピンキリだ。フェルが有能であることを願うばかりだが。。


 しかし信二もそこは分かったようだ。死地へ赴くことは分かったようで、モルディートの屋敷の宝物庫へ向かった。そこには本邸の宝物より劣るが、一級品の品々が並ぶ。


 そして一振りの剣を目にした。

(そうだ。それを取れ!!!)

 本能が欲したその剣は”魔剣”。理由は分からないがとにかくそれが欲しかった。

 そして信二がそれを手に取った瞬間に分かった。


 私の視界がクリアになったのだ。

 この魔剣の秘めた能力だったのだろう。

 視点は魔剣からのもののようで、低い位置からではあるが、僅かに紗がかかり視野も狭くさらに見たい場所を見ることもできない状況が続いた中で、クリアな世界を見れた時はスッキリと晴れた空のように気持ちが良かった。


 だが。。。完全に魔剣視点なのだろう。

 信二が歩くのに合わせて揺れる。走れば揺れる揺れる。。。

 乗り物酔いする体質ではないが、流石に慣れるまでしばし時間が必要だった。

 そしてようやく揺れに慣れたころ、大扉の前に着いた。


 信二が魔剣を持つと、俺の感覚と信二の感覚が馴染むような妙な感覚を味わった。


 このまま信二と融合してしまえば。。。マーガレットとも共にいられるのだろうか。

 ふとそんなことが頭によぎってしまったが、私の穢れた心が混ざってしまえば、彼女の心をまた傷つけてしまうのだろうな。。

 自分の愚かな考えを打ち払うべく頭を振って邪念を吹き飛ばしておく。


 

 そしてボス戦となれば、フェンリルの能力はいい意味で想像を超えてきた。

 初手で雷撃を寸分の狂いなく、数十頭のミリタリーボアに打ち込む姿には圧巻で美しさすら感じた。

 しかもジェネラルボアに対しては必要最低限の炎の攻撃。

 見事というしかない。


(・・・・っっ!!!)

 フェルが圧勝のうちにジェネラルボアを倒した時、ゾワリと本能がざわめいた。。

 背後からの殺気。信二は背を向けているので全く気付いていない様子。

 嫌な感覚にその方角を見た瞬間だった。


(・・・・っっ!!!)

 攻撃を感知し全力で身体を動かそうと試みる。今の私では到底無理な話ではあろうが。。。

 私の強い気持ちが勝ったのか、偶然なのか、信二が少し身体を動かした刹那、衝撃が伝わってきた。


 信二の身体には槍が刺さり、魔剣の反対側にも衝撃。多分ポーチに何かが当たったのだろう。


 咳き込み血を吐く信二を見ているだけしかできない不甲斐なさ。

 自分の身体ではあるが、その苦痛を変わってやることもできない。


 平和な国に生まれ育った信二の同様は計り知れない。致命傷じゃないと理解しつつも意識を保つのもやっとだ。

 私が代れば。いや、代らなければ。。

 こんな状態では意識を失うのは必定。それでは敵も打てず、スタンピードも抑えられず、敗北だ。

 死は目の前に迫る。


(かわれ・かわれ・かわれ)

 こんなところでこいつを死なせるわけにはいかない。私とは違い、信二はこの国に必要なのだ。

 私は消えても良い。だが信二はどうだ。訳も分からずこの世界に迷い込み、ここで死んだら彼の魂はどこへ行くのだ?元の世界に戻れる保証もない。

 是が非でも私が何とかしなければ。。


(神でも悪魔でも構わない。私の魂を喰ってもいい。だから今だけ。信二を助ける時間だけ、私にくれないだろうか。)

 神にも悪魔にも興味はないが、今この時だけ、祈ってもいいだろう。


(その気概。嫌いじゃないぞ。)

 そんな声と、

 トサッ。

 信二が倒れた音が重なった。-----



 身体の重みを感じて目を開ける。

「ふぅぅぅぅー。ケホっ。」

 呼吸を整えようとすれば、軽く咳き込み血の味がした。


「主殿っっっ!!!」

「無理する出ないっ!!」

 ヒスイとフェルが立ち上がろうとする俺を制止するが、私はそれを無視して魔剣を掴む。


 久しぶりの重力に身体がふらつきそうになるが、何とか堪え、体中に神経を集中して。。。。


 ギュンッ。。。


 思い切り魔剣を矢のように投げた。。


 ザックっっっ。


 壁に当たるはずの魔剣は、石に突き刺さる音とは程遠い鈍い肉を穿つ音を立てた。


「・・・・ぐっ。。。」

 ドサッ。


 うめき声と地に何かが落ちる音がすると、何もなかったそこに、何かが姿を現した。


『・・・・っ!』

「命中したか。」

 フェルとヒスイはその光景に目を見開き、私は自分の腕が鈍ってなかったことに胸を撫で下ろ。。したかったのだが、私の胸からは「ゴフッ」と血が排出された。

 

「主殿っ!!」

「ダンジョンマスターだ。」

 ヒスイは血を吐いた私に駆け寄り、フェルは死体を確認する。


 そして死体の胸元から僅かな光が浮かび上がり、それは私の手元へと彗星のごとく飛んできた。

 手の中には金色に光る鍵。


「これは。。」

 見たこともないアイテムに首を傾げると、

「ふむ。ダンジョンマスターを討伐し、このダンジョンの権利がお主に移った。」

 フェルの説明にさらに眉根を寄せれば、

「このキーがあれば、ダンジョンを継承できるし、不要なら閉鎖することもできる。」

「ふむ。・・・ケホッ。・・・ペッ。」

 定期的にむせるように喀血する身体が面倒だ。口の中に残る血の残渣を吐き出しながら、しばし考えたいのだが、まずは血を止めねばな。


「フェル。。この槍を抜くことはできんが、長いままでは邪魔だ。ケホッ。」

 つい咳が出て途中で言葉が止まるのだが、

「ふむ。では余分な場所は切ればよいのだな?」

「あぁ。コホッコホっ。」

 小さく咳き込み口に付く血を手の甲で雑に拭っていると、私の意図を組んだフェルがサクッと前後の柄を爪で切ってくれた。


「ヒスイ。。槍が抜けないように糸で縛ってくれ。コホ。できれば止血できるようきつめに。」

「相分かった。」

 ヒスイも理解してくれたようだ。こういう傷は戦場で見慣れているから処置も心得ている。

 とりあえずでも血が止まればいい。



「ふぅ。少し楽になった。さて、スタンピードを止めに行かねばな。フェル。ダンジョンはどうやって閉鎖するのだ?」

 僅かだけ呼吸が楽になり、フェルに教示を乞う。流行り病に罹患する前の私であればプライドが邪魔をして素直に聞くことができなかったかもしれないが、今の私はそれよりも大切なことがあることを知った。時間も人員も。。。そしてアルベルトの身体の体力も心配だ。ここでこの身体を信二に受け渡さなくては。。


 フェルは、フェンリルとして上位も上位。フェンリル王であった。その知識は膨大で、人間の知らない魔力関係も当然博識で。。しかも齢800年を過ぎているという。


 フェルの知恵を借り、ダンジョンを封鎖して、表に野放しになってしまったミリタリーボアを狩りに行く。


「・・・っっ!!!!閣下っ!!!」

 まず近場にいたミリタリーボアの集団を討伐し、草原のミリタリーボアの集団に近づいたとき、部下たちが合流したのだが、私の怪我を見て絶句する。

 左胸には抜けきっていない槍の残骸。口元も胸元も喀血した血で染まっている。

 それなのに魔剣を振り回しミリタリーボアの集団に突っ込んでいるのだから。


「私に構うなっ!!討伐を優先するのだっ!!」

 鬼気迫るとはこのことだろう。一分一秒が惜しい。

 第一報を受けたのはこの先の村の被害だ。この集団ではない。いち早くこの先に進まねばならない。


 あまりの気迫に押されたのか、合流した部下たちも討伐に集中していき、程なくしてこの場所のミリタリーボアの集団も討伐し終えた。


 ぜえ。。ぜえ。。。


 息をするたびに肺に残っている血で変な音がする。。


「閣下。。。お体が。。」

「そんなことはいい。先に進むぞ。。」

 心配する部下を無視してフェルの背に突っ伏す。移動中は少しでも体力を使いたくない。

 フェンリルの美しい銀の毛並みが私の吐いた血で赤く染まっていくが、彼が気にするなと言ってくれたので甘えることにした。誰かを頼るというのも初めてだが悪くないものだ。



 そうして私たち一行は伝説のフェンリルの力も借りて、その先のミリタリーボアも無事に討伐し、スタンピードを抑え込むことに成功したのだった。


 


 


 

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