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19.鳥と猫


 あれから一月半が経った。

 国境の諍いは隣国の王子が関わっていたことで戦争となったが、こちらの圧倒的な軍事力により、僅か10日間で終結した。実際は数日で決着していたのだが、先導していた大将の王子が逃げ回り、その身柄を確保するのに時間を要してしまった。

 まぁ、戦争というより小競り合いと言っても良い内容であった。

 統合司令官としての戦後処理もスムーズに終わり、あとは泊まりこまずとも処理できるところまできた。残業は確定の処理量ではあるので、軍に居ても良いのだが、眠る時間が削られたとしても家が良いに決まっている。



 という事でようやく我が家に到着だ。


『お帰りなさいませ。旦那様。』

 久しぶりの屋敷への帰還は使用人一同の出迎え。こちらの世界に来たばかりの頃はこの出迎えもこっぱずかしくあったが、今では皆の顔を見るだけでホッとする。


 だが。。。

「あぁ。ただいま戻った。。。マーガレットはどうした?」

 いつもと違うのはマーガレットがいないことだ。。


「奥様は体調が少々優れず、お部屋でございます。」

 セバスのその一言に何か嫌な予感がする。公爵の顔色を窺うために、この屋敷に来てから出迎えも当たり前だったはずだ。


 使用人たちに不在だった間の屋敷での働きに労いの声をかけつつ、俺はマーガレットの部屋へと足早に向かった。

 部屋の前に付くと侍女長が控えており、様子を聞く。

「本日は今朝から体調が優れないようで、臥せっておいでですが、しばらく休めば大丈夫とお医師様も拒まれております。。」

「熱は?」

「ありません。風邪などをおめしになったご様子もありませんが。。」

「なんだ?」

 やけに言いよどむ侍女長に圧を強めに聞き返す。

「・・・あの。。。月のものが。。。それがお辛いのかも。。と。」

 言いづらそうに口を開いた。。。そりゃ言い難いだろう。女性特有の話だ。。まぁ医者であった俺には恥ずかしいことでもなんでもないのだが。。普通は男性に話すには恥ずかしいことであろう。


「普段も症状が重いか?」

「その時によりますが。。臥せることはございませんでした。」

 確かに公爵の記憶の中でも、寝込んでいたことは無かったように思う。


 眠っていることも想定して、そっと部屋へと入ると、侍女が天蓋のカーテンを引いたベッドの前に待機しており、小さな声で尋ねる。

「マーガレットは?」


 シャーーーー。


 侍女がカーテンを引く前に、それは開けられ、その奥には顔色の優れないマーガレットがいた。


 彼女はペンを取ると、

(お出迎えできず、申し訳ございません。)

 と記す。


「そんなことはどうでもいい。それよりも。。大丈夫か?」

 ベッドに近寄り額に手を。。と思ったが、彼女がピクリと身体を固め目を瞑ったのを見て、俺の手は触れることなく降ろされた。


「・・・熱は。。無いのだな?」

 コクンと頷きが返された。だが、彼女の顔が動いたことで光が当たる角度が変わり、頬が光ったのが見えた。。


 泣いていたのか?


 マーガレットに何が起きているんだ?泣くほど辛い症状が出ているのか?それとも精神的なものなのか?


「マーガレット。それほど辛いのであれば、医師を呼ぶべきではないか?」

 フルフルと首が横に振られる。だが顔色も悪い。


「マーガレット。嫌かも知れぬが熱などが無いか確認させてくれ。でなければ、医師を呼ばないという選択を認めてやれぬ。」

 俺が静かに伝えると、小さく頷かれた。


 そっとその頬に手を添えれば、やはり涙の痕だ。気付かぬフリをしながら額も触る。「首も触れるぞ。」と心拍数を確認しつつリンパの腫れも無いし耳下腺も腫れてない。風邪などではなさそうか。。となると胃腸系だが、その場合、侍女が症状に気付かないわけがない。やはり月経によるものか。。

 まさか俺が帰ることになって精神的な不安により体調を崩したとか?。。それは無いと考えたい。もしそうだったとしたら。。立ち直れない。。なにせ出かけるときにはあれほど熱く求めてくれたんだから。。

 やはりあれは公爵の機嫌を取るための義務的なものだったのか?

 モヤモヤは晴れないが、結論も出ない。精神的なものではないと思いたいので、


「ゆっくり休むと良い。先ほど触れたときに頬が冷たかった。身体の冷えは女性にとっては特に良くない。少し温めると良いかもしれぬ。無理や遠慮はせぬようせよ。些細な事でも侍女を使うのだぞ?絶対に無理はしてはならぬぞ?」

 彼女のブランケットを整えながら言えば、マーガレットは俺の手に自分のそれを重ねて、俺を見上げると。。。

 

 見る見るとそのくるりとした瞳に涙が浮かび、つっと一粒が零れ落ちたのをきっかけに次々に溢れていく。

「ま、マーガレット?・・・どうした?・・・やはり辛いのだな?・・・どこが痛む?それとも苦しいのか?医師が嫌なら、私でも診る事ができるぞ?・・・いや。俺の方がもっと嫌か。。」

 思わず俺の本音が混じったが、彼女にはどこまで聞こえていたのだろう。。


 ごめんなさい。


 彼女の唇がそう動いた。


「君が謝ることなど何もないだろう?体調は自身でどうにかなるものではないのだ。本人に落ち度などない。」

 なぜこの公爵の身体はこんな時まで偉そうなんだ?それが悔しい。しかし俺の言葉でさらにマーガレットの涙は増え、手も震え、涙を止めようとしているのか体まで震えてきた。


「マーガレット。こういう時は泣き止まず思う存分泣けばいいのだ。私では嫌かも知れぬが、こうすれば私の顔も見えぬ。誰かそなたが安心できる人物に抱かれていると思え。」

 彼女の返答も聞かずに少し強めに彼女を胸に掻き抱く。華奢な身体が震えるとまるで儚く消えてしまいそうで。。。落ち着かせるように頭を撫でる。


 しばらくすると落ち着いたのか、身体を離そうとする仕草がされたので、俺もそっと腕の力を緩めた。

「・・・っ。」

 彼女が息をのむのが分かりその目線を追えば、俺の軍服が彼女の涙で濡れていた。

 オロオロとする彼女を見ながら、胸のチーフを取り出し、

「何も気にすることなど起きてないぞ?それよりも君の美しい顔を整えようか?濡れた顔も魅力的だが、綺麗になった顔も可愛らしいからな?」

 そう言って優しく涙を押さえる。確か拭く為に擦ると肌が痛むとか昔の女が言ってたからな。。と変なことを思い出しつつ拭き終わるとチュッとその美しい額に唇を。。。寄せてしまった。。。マジで無意識だった。。ヤバい!!!と焦りが募って、そろっーっと彼女の顔を覗いたが。。驚いた顔はしつつも嫌そうにはしてなく、心の中でほっと胸を撫で下ろす。


 どさくさに紛れて、もうワンプッシュしておこう。

「なぁ。マーガレット。前にも伝えたが、私はそなたにずっとそばにいて欲しいと願っているのだ。今までの行いで、私の事を許せぬであろうことは理解している。だから私の妻であることが苦痛だと思うならば、同居人とでも思っても構わぬ。それでもひとつ屋根の下、共に暮らす者としてこれから先も過ごしていきたい。それには遠慮など不要だと思わぬか?私の顔色を窺う事も要らぬぞ。私はそなたに謝りの言葉をもらうよりも、笑顔をもらう方がずっと嬉しいという事は伝えておこう。」

 そこまで言うと、彼女はペンを取り。


(ここに居てもいいのですか?)

 と綴る。。やはり何かズレているように感じる。。行く当てもないだろうに何故そんなことを聞くのだろうか。。前にもずっと一緒に居たいと言ったはずなのに。。俺が捨てるとでも思っていそうだ。


「なぜそのような言葉になる?何度も言うぞ?この先ずっとそなたと一緒に居たいのだ。できれば。。俺の事を好きになってもらえれば。。それに越したことは無いのだが。。それが難しいであろうことは重々承知している。が、それでもそなたを愛しているのだ。流行病から目覚めて、自分の気持ちに気付いてからというもの、その気持ちは毎日強くなっているのだ。今さらだとは思うが、私はそなたと本当の夫婦になることを、我が人生の目標と決めた。それが叶わぬでも、愛しいそなたが、そなたらしく過ごしてくれればそれでいいとも思っている。どうか私を見捨てるようなことは言わないでくれ。」

 彼女の膝にそっと手を添えて俺は懇願する。そう願うしか俺にはできない。それほどに公爵がやってきたことが酷いことなのだから。


 だが、彼女はまた涙を溢れさせた。もう一度濡れていない場所に彼女を抱き、また抱きしめた。

 マーガレットは嫌がることも無く静かに泣き、そして落ち着いた。

 彼女の思考が少しズレている原因も分かるといいんだが。少し探ってみた方が良いかもしれない。



 色々と心配事は消えないが彼女の部屋で共寝するわけにもいかず、部屋を出る。

「ぴぃ?」

 廊下を歩く俺の手には鳥かごだ。体調の悪いマーガレットの負担は少しでも減らしたい。



 が。。。。


「マズイぞ。。。」

 そこで思い出した。。。ヨランダ様の森から猫を拾ってきていたことに。。

 あいつは俺の部屋で飼っているはずだ。。


 生まれた時からの飼い猫であれば、そもそも鳥を餌とは思わないだろうがじゃれる可能性は高い。

 だがあいつは森で育った野良だ。。鳥を食料と認識するだろう。。


 少し考えてみたものの、答えが出ることも無く部屋に到着してしまった。


「・・・どう思う?」

 扉の前に待機する従者に鳥かごを見せながら声をかけた。

「かなり賢い猫でしたから、聞き分けてくれる。。。。。でしょうか?」

「それを私が聞きたかったのだがな。」

 互いに苦笑いしつつ、扉を開けさせる。一応猫の反応を見てから考えよう。


「帰ったぞ。」

 そう声をかけると、音もなく猫が走り寄って来て俺の足に纏わりつく。喉を鳴らしながら甘えるその仕草に、すぐにでも撫でてやりたいのだが。。手には鳥かご。


「二人ともちょっといいか?」

 言葉が分かるとは思えないが、一応、一匹と一羽に問えば、

「にゃう。」

「ぴぃ。」

 といい返事が返ってくる。そういえば鳥の方も拾った時から賢そうだったな。


 応接テーブルに鳥かごを置き、俺がソファーに腰を下ろすと猫はさも当たり前というように、膝の上に乗ってきた。


 猫の背を撫でながら、

「いいか二人とも。ブルー。。この鳥の事だが、マーガレットという私の妻が世話をしている。で、お前は私の部屋だろ?今日は彼女の体調が優れず、一晩、私とお前たちと同じ部屋となったわけだ。だが、どちらも大切な家族だ。食べ物ではないぞ?仲良く過ごすのだ。分かるか?」


「にゃう。」

「ぴぃ。」

 本当に言葉がわかっているかのように、猫は前足をピッとあげ、ブルーも羽根をぱっと広げた。


「人間の言葉が分かるのか?」

「にゃうにゃう。」

「ぴいぴい。」

 念を押すと頷きが返ってくる。俄かに信じ難いのだが、もしかするとこちらの世界では珍しいながらもそういう個体もいるのかもしれない。


「そうか。。ならばその言葉信じるぞ。」

「にゃう。」

「ぴぃ。」

 元気よく返事をされて、何となく安心する。ここまで来るとタイミングが良いだけではないだろうと信じたい。


 猫の背を撫でながら、

「そういえば、まずは、お前の名前を考えなくてはな。。ひと月半の間、屋敷の皆はどうしてたのだろうか。。」

 そう思いながらセバスを呼んだが、

「猫殿。猫ちゃんなどでしたね。」

 となんとも普通の答え。


 ふむ。。どうしたものか。。


「よし。思いつく名前を言っていくから、気に入ったものがあれば返事してくれ。」

「にゃう。」

 同意を得たところで。。。


「日本だと。。たま。。は無いのか。。毛色は関係ないとして。。しろ。。くろ。。みけ。。も無いか。。んんん。。。そうだな。。ここの世界だと、カタカナの名前の方がしっくりくるか。。外国だとどんな名前なのだろうか。。猫のキャラクターと言えば。。。」

 と有名どころの名前を羅列していくが、どれも完全に無視されていく。。


 あとは。。童話とか。。と思って色々思い浮かべていくが”猫”に名前が付いていた記憶がない。

 猫は猫として登場するのが多い。

「宮沢賢治も猫でしか登場してない気がするしな。。百万回のも確か猫のままだったような。。長靴は。。シャルル・ペローは作者か?」

「にゃっっ!!」

 そこで猫がピクリと反応した。

「ん?どうした?」

 考え込んでいた俺はその反応が何なのか気付かない。

「あとは。。。」

「にゃうにゃう。」

 思考を次にと思ったところで、ペシペシと腿を叩かれる。


「もう少し考えれば、それなりのを思いつくだろうから、もうちょっと待て。」

「にゃう。」

 猫が立ち上がり、俺の額にぺちっと肉球を当ててくる。まるで「待つのはお前だろう。」とツッコミを入れられた気分だ。


 そこでふと戻る。

「何かいい名前があったか?」

「にゃうにゃう。」

「そうか。。何を言ってたかな。。宮沢賢治とか?あとは。。シャルル・ぺ・・・」

「にゃうにゃうにゃう!!!」

 言い終わらないうちに勢いよく鳴かれた。

「もしかしてシャルルか?」

「にゃうぅ。」

 目を細め、満足そうになく姿に、その名前が良いのだと気づいた。

「キャラクターの名前じゃなくて作者の名なんだがな。」

 ポソリと呟いたが、猫が嬉しそうにしているので、まぁ良しとする。というか、先ほど立ち上がった姿は姿勢も良く、本当に長靴でも履かせたら「長靴をはいた猫」にでもなれそうだ。


「では、お前はシャルルでいいな?」

「にゃぁうぅう。」

 という事で、猫の名が決まった。


 そんなことをしていると、ブルーが嘴で鳥かごを噛み噛みしている。

「どうしたブルー。」

 と指を近づければ、身体を擦りつけてくる。

「ふむ。。ふわふわで可愛いな。。」

 感触を楽しめば、

「にゃぁっぁぁ。」

 と甘い声を出して今度はシャルルが膝の上でゴロゴロ甘えてくる。

「お前はモフモフがたまらないな。」

 左手で小鳥を撫で、右手は猫。。ふわふわモフモフ天国だ。。

 戦争処理とか殺伐とした仕事の疲れが一気に吹き飛んだ。。


「では、二人とも。。。仲良く。。。する。。ん。。だ。。ぞ。。」

 小動物に癒されたのか、一気に睡魔に襲われ。。。寝落ちした。



「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

 どこかで声を潜めた話し声がする。。ベッドの中でぼんやりとそう思い、浅い眠りの中を揺蕩う。


 そこでふと気づく。。ここが異世界であったことに。。

 病院の当直だと人の話し声が聞こえるのは普通のことであったので、気にもせずスルーしてしまった。

 この世界に来てから、俺の部屋で話し声などあり得ない。何せ当主の部屋だから。


 万が一、侵入者の可能性も含め息を潜めて様子を窺う。


「マズイっぴ。バレたら怒られるぴよ。」

「絶対カッコイイにゃ。お前が黙っておけばバレないにゃ。」

「なんで、ねね様の部屋のお人形にしたぴよ?違う部屋のにすればまだ。。」

「あれが一番形大きさ、お値段的に最高だったにゃ。」

「値段って。。俗世にまみれ過ぎぴよ!」

「まぁまぁ。”公爵”は人間社会で最高のお金持ちにゃ。靴くらい安いもんにゃ。」

 

(・・・・・。)

 あまりの内容の無さにどこからツッコむべきか迷うほどの会話。。しかも語尾が”ぴよ”に”にゃ”。。もう薄々どころでなく確信的に誰か分かってしまうのだが。。そんなテッパンで大丈夫か?


 一応確認の為にそっと天蓋のカーテンの隙間から声のする方を見れば。。


 人形の物だと思われるブーツを一生懸命履こうとしている猫に、それを止めようと羽根を手のように使って猫の肩を揺する鳥。。


「・・くっ。」

 我慢の限界に思わず吹き出してしまった。


「にゃっっ?」

「ぴっっ?」

 二人の動きが一瞬にして固まり。。。そしてそろーっと俺のベッドの方へと振り返る。


「言葉が分かるのではなくまさか喋れるとはな。」

 俺は腕を組み仁王立ちで待つ。


「にゃにゃにゃ。。。これには。。訳がにゃ。。」

「あっ主様を騙すつもりは無かったっっぴ。。」

 二人は器用に土下座姿勢になる。

 つか、それどうやってるの?と思う姿勢だ。さらに俺のツボを刺激してくる。


「くっくく。冗談だ。顔を上げてくれ。二人と話せて嬉しいぞ。」

 二人の元に歩み寄り、ちょんと頭をそれぞれに撫でてやる。

「本当かにゃ?」

「許してくれるぴよ?」

 少し怯えたような素振りに、


「私の話し方はいつも横柄なのだ。そういうものだと割り切ってくれ。性格的にはフレンドリーなんだがなぁ。まぁ基本的に余程の事が無い限り怒るようなことは無いから安心してくれ。」

「自分でそういうこと言うやつほどヤバいヤツにゃ。」

「それ、本人に言っちゃダメぴよ。」

「私もそう思うぞ。」

 そんな会話をしていれば、猫のシャルルが靴を履きかけだったのを思い出す。


「猫の手じゃ、紐が結べないだろう?」

 そう言いながら手こずっていたブーツを履かせてやる。

「俺は”猫”じゃなくて”ケットシー”だにゃ。」

「・・・え?ケットシーって妖精の?」

「うーん。。妖精族ではないにゃ。妖精猫族にゃ。」

 ドヤ顔で訂正されたのだが。。。イマイチ違いが良く分からん。まあ、そういうものと捉えておこう。

 ブーツを履いて二本脚で立ち上がり、ポーズを決めながら満足そうなシャルル。もうほんと、絵本から出てきたようでドヤっている姿も可愛い。


「ちなみに僕はグリフォン族ぴよ。」

 僕の前に飛んで来たブルーも背筋を伸ばしてドヤ顔を決めたのだが。。

「・・・・・。」

 思わず無言になる。


「・・・なんで黙るぴよ?なんで驚かないぴよ。。」

 意気消沈している鳥を見るのだが。。

「だってグリフォンってあれだろう?鷲と獅子が合わさった。。」

「色々種類があるぴよぉ。。大人になったらすっごいことになる予定ぴよ。」

「組み合わせがしょぼいグリフォンは基本的に馬鹿にされるにゃ。主様もやっぱりだにゃ。」

 シャルルに鼻で笑われて、

「僕はっ。鳳凰とフェニックスのグリフォンぴよっ!!この世で一匹しかいないからすっごく偉いはずっぴよ!!」

 涙目で抗議するブルー。少し可哀想になってきたが、根本的な疑問が残る。


「だが、ブルー。グリフォンは獅子の身体だろう?君が本当に鳳凰とフェニックスのハーフだとしても、グリフォンという定義に当てはまるのか?」

「僕の祖先がグリフォン族だったぴよ。。自分の身体で一番強く出た種族が種族名になるぴよ。」

 と言うので、この世界の種族名について聞いてみた。


 二人に聞けば、掛け合わされた種族については、色濃く出た能力が種族名として身体に刻まれており、見た目が違う事もあるようだ。だが本人には種族名は本能で分かるらしく、全くもって見た目と合っていないブルーは生まれた時から馬鹿にされてきたのだという。


「本当は神獣族だったかもしれないぴよ。。そうしたら馬鹿になんかされなかったぴよ。。」

 あまりにも項垂れるブルーが可哀想だ。

「だが、グリフォンもケットシーも初めて見た。こうして言葉を交わせるというのは、私たち人間にとっては光栄なことだろう?」

 二人の頭をやっぱり撫でれば、ものすごく嬉しそうに擦り寄ってくれた。

「俺たちにとっても聖なる力を持った奴と出会うのは光栄なのにゃ。」

「うんうん。時代に一人生まれるかどうかぴよ。主様に出会えた僕たちは運がいいぴよ。」

「私としてはその力を持ってる自覚は皆無なんだがな。」

「僕たちが感じてるぴよ。主様が気付かなくても僕たちは癒されるぴよ。」

「ホントだにゃ。こうして撫でてもらうだけで至福のひとときにゃぁ。」

 と二人が幸せそうにしてくれるので良しとしよう。



 というわけで、今日は妖精猫族とグリフォン族が家族となった。。

 ペットとはさすがに言い難いな。。


 気付けば夜は終わりに近づいていたが、あと2時間は眠れるか。。

 ふわふわの鳥とモフモフの猫に挟まれて、俺たちはもう少し眠ることにした。


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