ステージ3 ③
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『おはようジオ。昨日は大変だったね。』
『ああ、おはよう。クリフト、それに皆。』
武はまた、隅っこにいるのか。最近全然話せていないな。大丈夫かな?
『おはよう、皆。昨日は大変だったな。』
『教官こそ、大丈夫なんですか?』
『ああ、私は大丈夫だ、それよりも上から命令があり、強化外装甲の訓練はもちろん急ぐのだが
同時に、各地の調査任務も同時に行って欲しいとの事だ。正直この20年の平和で兵士の練度も意識
もそれほど高くない。君達も貴重な戦力だと私は思っている。特にジオは十分な訓練を積めば
エースパイロットにもなれると思っている。』
『おお!』
『皆、やめてくれよ。』
『いや、私は本気でそう思っているぞ。』
『それでは、この後訓練に入る。解散。』
『仁・武ちょっといいか?』
『教官?あ、はい。』
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『武、君は基礎訓練の時は物凄かったそうだな。私はそういうのは苦手なんだ。だから素直に尊敬する』
『ありがとうございます・・・・・』
『武、強化外装甲だけが全てでは無いぞ。軍には歩兵だっているんだ。近接体術であれば、おそらく
お前はトップを目指せるだろう。』
『・・・それは喜んでいいんですかね?』
『もちろんだ。』
『でも、強化外装甲に襲われたら?』
『それはだな・・・』
『やっぱり、今は強化外装甲がメインなんだ。気休めはやめて下さいよ。』
『・・・では強化外骨格はどうだ?』
『強化外骨格?強化外装甲が出る前に使われていたと言う?』
『そうだ、今の歩兵は強化外骨格を使った強化歩兵団がメインだ。やりようによっては強化外装甲を
倒す事も出来る。それにお前の肉体の才能を腐らすのは勿体ない。何より今まで辞めずに残っていたん
だ。諦めたくないんだろう?』
『・・・分かりました。俺やってみます。』
『よし、ありがとう。今日からお前は強化外骨格の訓練に入るぞ。ここにも何体かはあったはずだ。』
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『よし、ジオはかなり仕上がってきたな。正直私も勝てるかどうか怪しいぞ。』
『そんな事ありませんよ教官。まだまだです。』
『それに皆もだ。かなり上達した。』
『ありがとうございます。』
しかし本当にジオは凄い。まるで、こちらの動きが見えていると錯覚する時さえある。末恐ろしい。
だが気になるのは武だ。だいぶ使いこなせるようになってきたが、あのスピードとパワーはどういう事
だ?正規軍の強化歩兵団にすらこれ程の奴はいなかったと思うぞ。まあそれでも強化外装甲と戦う
事になれば、敵わんだろうが。
『よし、これから各地の調査任務も並行して行っていくぞ。』
『了解しました。』
『よし、先ずは2週間後に初めての調査任務に向かう。今回は強化外装甲は無しだ。とある都市にあるとあ
る企業の施設だ。恐らく何も無いだろう。本当に怪しい所は正規軍がしらみつぶしに探しているからな。
ではメンバーを発表する。・・・』
まさか俺が選ばれるなんてな。しかしジオもいるな~。うーん。
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そして調査任務当日
『しかし本当に何も無いな。確かに怪しいんだが、恐らくソーバ残党軍とは何の関係も無いだろう。
では私はこの事を軽く報告してくるからお前達はここで待機していてくれ。ジオ指揮を頼むぞ』
『了解しました。』
『しかし、何も無くて良かったな~』
『ああ、そうだな。』
『帰ったらまた、訓練だろうな~』
『そうだな~』
皆何も無かったからか少し緊張感が無くなっているな。まあここの所忙しかったし、少し位は構わないか
ん?
『武は?武は何処だ?』
『あ~、仁君なら何かおかしい気がするとか言ってどっか行きましたよ。』
『はあ~!!何をしてるんだあいつは!くそ、皆はここで待機していてくれ。くれぐれも動かないでくれ
よ』
『分かったよ。』
武、何処にいるんだ。・・・無事でいてくれよ・・・
あ、いたぞ!!
『武、何をしているんだ・・ってこれは麻薬なのか?』
『・・・ジオか・・・ああそうだ。何か怪しいと思ったからな。そうしたらこれだ。』
この程度の人数とはいえ、たった一人で制圧している!武はやはり凄い。おっと違う違う。
たまにジャミーンだった頃の感情が湧いてくる。これも悪い癖だな。なんとかしないとな。
『武、オッシー教官は待機していろと言っていただろう?どうして勝手に動いた?』
『そ、それはだな・・・この機を逃してはいけないと思ったからだ。』
『たったそれだけで動いたのか?仲間を危険に晒すかもしれないのにか?』
『それは・・・・・・・』
『それに麻薬の押収などは現地の警察にでも任せておけば良い。俺たちはソーバ残党軍と関係が無いと
分かった時点で引き上げれば良い。全く余計な仕事を増やしてくれるな。』
!!!
『何時からお前はそんなに偉くなったんだ、ジオ!』
『何?』
『やはり成績トップだと違うな。周りの事も考えて。どうせ俺は強化外装甲も扱えない落ちこぼれさ』
『何を言っているんだ、武。俺が何時そんな事を言った?お前はそうやって捻くれているがいいさ。』
『ああ、そう・』
『お前達、何をしているんだ!!!』
『オッシー教官!』
・・・・・・・・・・・・
『事情は大体分かった。とりあずここは現地の警察に引き継いだ。引き上げるぞ。それと帰ったら
武は私の所に来るように。』
『はい・・・』
・・・・・・・・・・・・・・・
『武、どうしてあんな事をした。』
『そ、それは・・・』
『まあ、大体はジオから聞いている。ジオの言う通りだ。お前の勝手な行動で隊の全員に迷惑を
かける所だったんだ。そしてそれは実戦では命取りになる事もある。』
!!!
『本来であれば懲罰ものだが、今回だけは大目にみよう。手際が鮮やかだ、誰も銃声を聞いていない。
たった数人とはいえ相手は武装もしていた筈だ。本当にそこだけは評価出来る。しかし今度勝手な行動
を取ったら容赦なく懲罰に処す。分かったな。』
『分かりました。』
『それにジオに勝ちたかったんだろう?』
『はい!それに強化外骨格が扱えるようになってきて、少し気持ちが高ぶっていたのかもしれません。』
『そうか、しかしその勝ちたいという気持ちは大事だ。それなくして人は成長出来ない!!
どうだ私と摸擬戦をしてみないか?』
『え!』
『私が強化外装甲、武が強化外骨格だ。もしそれで私に勝てるような事があればお前に強化外装甲の
操縦などは必要ない。言っておくが私は結構強いぞ。どうだ?』
そうだ、教官の言う通りだ。しかし強化外骨格で強化外装甲に勝てる訳が無い・・・それでも!!
『お願いします!!!』
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『ではこれより模擬戦を始める。私は遠距離武器は使わない。基本的にこの大刀のみだ。武は素手
なのか?まあ強化外骨格を装備している以上、厳密には素手では無いが、ほほ同義だぞ?』
『ああ、俺はずっとこれでやってきた。このままで良い。』
教官は強い、恐らくジオよりもだ。もし勝つ事が出来れば!!
『ではいくぞ!!』
くそ、教官の動きが速い、それに正確だ。しかし近づきさえすれば俺にも勝機はある!!
『お、向かってくるか、武?』
よし懐に入・
『甘いな、私が近接戦闘が苦手だと思ったか?』
何、蹴り飛ばされた?しかも手加減している。そしてやはり強化外装甲と強化外骨格の出力の差は大きい
何せ大きさに倍以上の差があるんだ。それを動かすエンジン等の出力の差が違い過ぎる。
こっちが懐に入ったと思っても、それ以上のスピードで避けて来る。教官程の腕があればカウンター
を仕掛ける事も容易いという事か。これでは迂闊に攻撃出来ない。・・・相手の虚をつく。
これしか無い。いくら教官でも想定していなければ一瞬反応は遅れるはずだ。
『何を考えている武?来ないならこっちから行くぞ。』
相手の虚をつく、相手の虚をつく。
『考えが見え見えだぞ、武。』
何!うわっまた蹴り飛ばされた。
『大刀を使っていれば終わっていた。そう言いたいんですか!』
『さあどうかな。来ないならまたこちらから行くぞ。』
くそ、考えが全て読まれる。・・・待てよ、今まで自分の肉体で戦っていた時そんな余計なことを
考えながら戦っていたか?今まで何度も繰り返してきた動きじゃないか。体が覚えている。今は
それに強化外骨格を着ているだけと思えば。そして相手が少し大柄な相手だと思えば!!
いける!!余計な力を抜いて・・・
ん、武の動きが急に読めなくなった??これはまずい、仕切り直しを・・・いやもう遅い・・・
武が見えなくなった・・いや下だ。タックルだと。
『くそ、武!!』
マウントポジションを取られた。やられる・・・
ドン
武の拳が私の真横に。わざと外したのか・・って地面に巨大な穴が・・・
『教官、俺の勝ちだ。』
『は、ははっ』
『と言いたい所だが教官は得意の遠距離武器も使ってないし、何度も手加減してくれた。勝ったとは
言えないな。』
『いや、私をここまで追い詰めたんだ。十分お前の勝ちだ。』
しかし最後の武のあのスピードそして地面に大穴を開ける程のパワー。これはいったい。
そういえば強化外骨格の頭部が光輝いていたような・・・しかしそんな機能は無かったはずだが・・・
うーん。何だったんだろうか?
『何はともあれこれで模擬戦は終了だ。お前も良い経験になっただろう。』
『ああ、ありがとうオッシー教官!!』
『では帰るか』
『ああ』
『と言いたい所だがこの大穴直してからいくぞ・・・』
『そうっすね・・・』




