100年戦争編⑤
その後、大臣は俺が一撃で倒してこの騒動は終結した。一般兵は、王様や大臣が化け物だったとは知らず、た
だただ命令に従っていただけだった。そして本当の王様や大臣は結局見つからなかった。恐らく奴らに殺され
たのだろう。それから俺たちは、休む間もなく北に向かいこの国に侵入している敵国の兵を倒していった。
そしてこの国は100年もの長き戦乱から解き放たれたのだ。そして今日は首都パリスで、盛大な宴が催され
ていた。
『皆喜んでいるな。』
『ああ、はめを外しすぎだ。』
『仕方がないさ、皆生まれてから今までずっと戦争をしていたんだ。それにこの国は滅ぼされる寸前だったん
だからな。こうなっても不思議ではないよ。』
『そういえば、ジャミーン様は?』
『ジャミーン様はこの国を救った英雄だからな。王宮で晩餐会さ。』
『いいな~俺達も行ってみたいな~。晩餐会、なんていい響きなんだ~』
『そうだな~』
『そ、そんな事よりこの国の王様はどうするんだ?』
『本当だ、どうなるんだ、王様は?』
『もしかして、英雄のジャミーン様が・・・』
『馬鹿を言うな。何故私が。』
『ジャミーン様!!』
『お戻りだったのですね。』
『ああ、それよりこの国の王はひとまず、リッチモンド様が行われる。大臣としてな。』
『リッチモンドさんが。それはいいですね。』
『ああ、なにせこの国は今ボロボロだ。特に軍事面がな。そこで兵からの信頼が厚いリッチモンド様が推薦さ
れたという訳だ。さらに彼は自分の領地を持っていた故、政治や財政にも明るい。私は適任だと思うぞ。』
『おお、なんだかこの国も良くなっていくかもですね。』
『ああ、そうだな。』
『さて、では私達も自分のやるべき事をするか。』
『そうだな』
『え、やるべき事?』
『そうだ、この国の中にはもう敵はいない。しかし、王様に化けていた怪物はどっちに飛んで行った?そし
てその方角には何がある?』
『その方角には・・・・・あ、インテグランド国!!』
『そうだ、おそらくあの国も同じように・・・そしてあの怪物が生きているという事は、またいずれ攻めてく
るだろう。だから今度はこちらからあの化け物達を倒しに行く。そしてインテグランドの民も解放する。』
『そうですね、また攻めて来られるのはまっぴらですし、ビクビク怯えているのも嫌です。』
『よし、そうと決まれば早い方がいいな。』
『とはいえジャミーン様、皆も疲れているしもう少し休息を取ってからでも良いのでは?』
『そうだな、もう少し休息を取ってから出発しよう。』
『やったー』
こうして俺たちは休息を取った後、化け物を倒す為にインテグランド国へと出発した。リッチモンドさんの計
らいもありたくさんの兵士と共に討伐へ向かう事ができた。道中たくさんの化け物共が襲ってきたが、もはや
俺とジャミーン様の敵ではなかった。やはり王宮で戦ったあのサイモンとかいう騎士団長が一番強かったらし
く、他の化け物は相手にならなかった。何故かは分からないがあの化け物に変身すると知能が落ちるらしくど
いつも単調な攻撃しかしてこなかった。それに万が一攻撃を食らっても、俺には全くダメージが無かった。
あのサイモンとの一戦以来、俺の肉体の強化も一段階上の力を得たようだった。そして、数か月が過ぎついに
・・・・・・・・・・・・・・・
『ば、馬鹿な、我の手下共が全滅だと・・・なんたる強さだ。』
『さあ、残りはお前だけだ。元王様、いや化け物め。』
『く、くぅ~この姿にはなりたくはなかったが仕方ない。ハァァァーー』
『また変身かぁ、もういいってば。喰らえ。』
『何?攻撃が当たらない?』
『ジャンの攻撃が当たらない?どういう事だ?』
『ふっふっふっふっふっー馬鹿め、我の変身はただ化け物になるだけではないのだ。雑魚はただ力だけが上
昇するが、我は違う。さあどうする?』
くそ、どうしてだ。攻撃が当たらない。速すぎる訳では無い。そこに実体が無いような感覚だ。どうすれば?
『さあ、どうしたのだ?我を倒すのだろう?』
まだ気づいてないようだな、あの男の異常なまでの肉体強化はスキルの恩恵だ。恐らくスキル鬼人化だろうな
その効果は肉体の強化。実に単純だ、しかし鬼人化にここまでの効果があっただろうか?ごく普通のスキルだ
しこれほどまでの使い手は見た事が無い。異常な力だ。スキルレベルも高いようには見えないし。まあ良い我
のスキルにこいつの鬼人化は相性が悪すぎる。絶対に捉える事は出来ない。
『どうやら、お前達の力はこの程度だったようだな。大人しく死ね!!』
『何?口から炎を吐いた?普通の打撃なら何の問題も無いが、炎はどうなんだ?くそ』
・・・・・・・・・・・・・・
ジャンが苦戦している。大誤算だ。あいつはもう無敵だと思っていたがこんな敵がいるとは。ん、今一瞬
敵の姿がおかしく見えたぞ?どういう事だ?待てよ、眼に力を入れて良く見るんだ。!!!もしかして・・・
『ジャン、今お前が見ている敵は偽物だ。本物は別の所にいる。』
『ど、どういう事だ、ジャミーン様??』
何?この女、私の姿が見えているのか?しかしどうして?普通の人間になぞ絶対に見えはしないのに・・・
見える?もしかして、スキル心眼!!!待てよ、あれは鬼人化等とは違ってかなりレアなスキルだぞ。そんな
もの一体どうやって?しかし幸いまだスキルの力そのものも弱いし使いこなせていない。今なら勝てる!
『さすがだな女、英雄と呼ばれることはある。しかし我には勝てんぞ。死ね!!!』
『見える、必ずこの化け物を倒す。』
『チィ、しぶとい。ではこれはどうかな?』
『よし、避けた・・』
『残念だったな、死ね!』
『しまった、炎が・・やられる・・・』
『だ、大丈夫か?ジャミーン様?』
『ジャン?お前、私を庇って?』
『へへ、何ともないさ・・・うっ』
『ジャン、しっかりしろ。ジャンー』
『ほっほっほっ、どうやら我の勝ちだな・・・』
『くそ、私が弱いからだ、ジャンに頼ってばかりで。』
『ジャミーン様、逃げろ、生きてくれ・・・』
!!!姉さん、姉さんも俺の前からいなくなる時に、同じような言葉を・・・
『そうだったな、俺はまだ死ねない!必ず姉さんを見つける!必ず姉さんを救い出すんだ!それまでは死ねな
い、こんなステージで終わってたまるか!!!』
『ジャミーン様!ジャミーン様も俺と同じ・・・』
『ええい、ごちゃごちゃうるさいわー。死ねー』
『遅い・・・』
『何?躱された?今の攻撃を?くそ、その眼!!眼が赤く光っている。くそ、パワーアップしたのか。』
『もはや、お前の技は見切った。大人しく死ね』
『く、くそー広範囲の炎ならどうだー』
『ハァハァ、やったか?姿が無い。燃やし尽くされたか?』
『何処を見ている?』
『グハ、我の動きが見えているだと?馬鹿な、馬鹿なーー死ねーーー』
『死ぬのはお前だ!!!』
ザクッ
・・・・・・・・・・・・・
『勝ったのか?ジャミーン様?』
『ああ、ジャン。やったぞ私たちの勝利だ。』
『良かった、いてて』
『どうしたのだ?炎の傷が痛むのか?』
『ああ、少しな。大したことはないよ。それよりこれで長かった戦いもやっと終わったな。』
『ああ、これで真の平和がやってくる。インテグランドの人達も騙され、脅されていただけだったんだ。』
『そうだな、よし故郷に帰るか。』
『そうだな。』
『その前にジャンは先ずは体を休ませないとな。』
『はは、そうだな。』
・・・・・・・・・・・・
『よし皆、今日はこのインテグランドのお城でゆっくり休ませてもらう事になった。明日からはさっそく、フ
ランツ王国に戻るため、今日は早く寝るぞー』
『えー、2、3日はゆっくりしないんですかー?』
『そうですよ、ジャミーン様、皆疲れているし、もっとゆっくりしてもいいんじゃないですか?』
『駄目だ、リッチモンド様への報告もあるし、そうぐずぐずはしていられないんだ。分かったか?』
『ちぇ、はーい』
『誰だ今舌打ちした奴は?』
『誰もしてませーん。じゃあおやすみなさい。』
『ああ、皆おやすみ』
『ジャンも、おやすみ』
『ああ、ジャミーン様、色々聞きたい事もあるが今日は疲れた。また明日だ。』
『ん、何か言ったかジャン?』
『いや、何も?おやすみ』
・・・・・・・・・・・・・・
こうして、フランツ王国とインテグランド王国の長きに渡る戦いは終結へと向かっていった。互いに騙されて
いただけだった両国は、その後は国交を開き末永く平和に暮らしたそうだ。そして・・・・・
『んん、んーーはっ、ここは?あれ俺は眠っていたのでは?ここは何処だ?いや待てよこの感覚、前に一度
経験した事があるぞ。確か一度殺されて、フランツ王国で目覚める前に来た空間だ。という事は・・・』
『やあジャンじゃないか?大丈夫かい?』
『ん?どちら様ですか?俺はお前みたいな男は知らないぞ。』
『え、ああそうか、こう言ったほうが分かりやすいかな。俺はジャミーンだ。』
『え、えーーーーーージャミーン様ーーーーーーいやいやジャミーン様は女だろ。あ、待てよ、そういえ
ば・・・・・なるほど、そんな事を言っていたな。それでお前がジャミーン様の正体という事か?』
『そうだ、俺の名はジオ、ジオ・ソルディオだ。姉さんを追ってここまでやって来た。』
『ああ、知ってる。あれだけ大声で叫んでいたからな。』
『すまない、それで、ジャンは本名でいいのかな?』
『いや、俺の名前は武だ。よろしくなジオ。』
『武か~。俺はジャンで慣れてしまっているからな~。これからもジャンでいいか?』
『いやいや、じゃあ、仁武ジンタケルでどうだ?これなら発音も近いし俺も、苗字を付けたいと思っていた
んだ。』
『よし、よろしくな武!』
『おう、って普通に武で呼んでるし。しかしなんでジオは女だったんだ?実際は男なのに。』
『さあ、俺にもそんな事は分からないさ。でも体も心も本当に女になったみたいだった。』
『うーん、それは私にも分かりませんが恐らくこの非常事態が関係しているかと。』
『え、誰だ!』
『お二人ともそんなに警戒しないでください。私は、このステージ2の星の神です。あなた方がステージ1か
らステージ2へ来る途中にもこのような空間がありませんでしたか?』
『ああ、俺達もそれを思っていた所だよ。』
『納得して頂いたようでなによりです。』
『ところで非常事態というのは?』
『そうでしたね、今我々の住むこの宇宙には・・・・・』
『宇宙ってなんだ?』
『武・・・はぁ、そんな事も知らないのかい?』
『な、なんだよ。しょうがないだろ。俺は元々百姓の出だ。学が無いんだよ。』
『こ、こほん。では、分かり易く国としましょう。今我々の住むこの国は悪魔に襲われているのです。』
『悪魔?』
『武・・・』
『いや、悪魔位はわかるぞ。悪い奴だ。』
『はぁ・・・』
『いや、その通り。悪い奴なんです。その悪魔に征服されてしまったらどうなるか位はおわかりでしょう?』
ゴクリ・・・
『だからこの宇宙の最高神は、非常事態として全ての星から広く優秀な人材を集めているんです。そう従来よ
りもハードルを相当下げてね。』
『!!!!!それって本来であれば俺たちは、ステージを超えられなかったって事ですか?』
『・・・・・はっきり言うとそうです。しかし、あなた方は見事にステージ2を超える事が出来ました。これ
は凄い事です。今まで通常のハードルを超えてきた方でも全てがステージ2を超える事は出来なかった。それ
を超える事が出来たあなた方は素晴らしい。(もちろんステージ3に行くハードルも下げられているのです
が)ですから自信を持って下さい。話が大分逸れてしまいましたね。そちらの方が何故女になってしまった
か?でしたね。』
『ああ、そういえばそうでしたね。』
『結論から言うと、分かりません。しかしこの非常事態で通常よりもたくさんの人が行き来して、負荷が予想
以上にかかっている。そこに原因があるかと・・・・・』
『な、なるほど。』
『さて話が大分長くなりましたが、本題です。これから間もなくあなた方はステージ3に飛ばされます。
そこは今までよりも過酷で大きな試練が待っているでしょう。それでもあなた方は進まなければいけませ
ん。この宇宙の為にも、そして自分自身の目標の為にも。』
!!!そうだ、俺は。
『ではお二人とも、いってらっしゃい。武運を祈っていますよ。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・