コウノトリのきまぐれ
極東地域のとある街
静寂が包まれたゴーストタウンに
雪が静かに降り積もる
最近は、恐ろしいものが飛んでくる
何発も、何発も
静寂の街に、大きな爆音が鳴り響く
それが原因で
建物ごと巣が跡形もなく消えた
お腹を痛めて産んだ卵も
一瞬で消えた
廃墟と化したこの街で
私は、飛ぶことも忘れて呆然としている
・・・・
啜り泣く声が聞こえる
地上を見ると
・・・人間だ
男性と女性が布に包まれた何かの前で項垂れていた
見たことある
まだ、街に活気があったあの頃
小さい子と3人で歩いていた
泣いている
そして、同じ言葉を何回も何回も叫んでいる
名前かな
布の中はもしかて・・・
私はその光景をしばらく眺めていた
・・・そういえば
人間は、コウノトリは赤ちゃんを運んできてくれると思っているらしい
迷信だ
人間は、何を根拠に迷信を信じるの
・・・・
ふと、巣で卵を温めていたあの頃を思い出した
嬉しかった
待ち遠しかった
名前を考えていた
その全てが、無駄になった
・・・救われたいから、信じたいのかもしれない
私は、翼を広げてどこかへと飛び去った
ー30分後
あの二人は・・・
いた、まだ項垂れている
私は、ゆっくりと降下した
二人も、私に気づいたようだ
目を真っ赤に腫らしながら、悲しみの顔で涙を流していた
私は、布の目の前に降りた
涙を流しながらも、私を不思議そうに見つめている
私は、あるものを探して咥えてきた
それを、そっと布の上に置く
ぬいぐるみを
それも、女の子のぬいぐるみ
煤だらけだけどね
瓦礫の山をどかして見つけてきた
人間の赤ちゃんは運べないけれど
あなた達が少しでも元気になりますように
そして、私も前を向けるように
どうか、このきまぐれを受け取ってください
言葉の通じない私の声を黙って聴いていた二人
女性がゆっくりと立ってぬいぐるみを拾うと
少しだけ、笑った
「コウノトリさん、ありがとう」
女性は言葉を呟くと、再び涙を流した
そして、私を優しく抱きしめた
男性も立ち、女性に被さるように私を抱きしめてくれた
「君は幸福を運んできてくれたよ、ありがとう」
人間の言葉はわからない
でも、二人の暖かさを感じた
私の目からも涙が流れた
私は、もう一つの迷信を思い出した
コウノトリは幸福を運んでくれると
私は運べてあげられたのかな、幸福を
久しぶりに書いてみました。