シーン8 決断
シーン8 決断
監視カメラ映像を一通り見た要はうつむくや、広げた右手の指先を額に当て、パソコンの前から身を引いた。
考える。
何か・・思い当たる事はないか・・・。
宗弥の打っている打電は頭に刻んである、どのコードでも解読できなかった。僕たちに向けてでは無かった。クソ!!!何をやってる!!宗弥!
どう見ても・・打電しているとしか見えない。しかし膝を打ったとしても・・防音と電波遮断が効いている部屋だ。理由がわからない・・ここで、見ているだけじゃダメだ。
「どう思います?」とターキーが全員に問う。
チャンスが「自分がアルファーに配属されてから使用したコードのどれでもないです。その前はどうですか?」と聞く。古参のファイターは「俺にもわからない」と言って要の顔を見る。面々を見た要が「僕たちが参加していない作戦に、使われていたコードという事はないか?」と聞く、な、訳がないと思いつつ。
ターキーは滑らかにキーボードを打ちだして調べ始め、静かに息を吐いたトーキーはPC画面を変え「安全ピンの素材は強化プラッチックでした。分析表からみて、富士子さん救出作戦時に我々が使用したフックです」と言い、「あのフックを!加工したというのか!!」耳を疑い、収拾がつかないまま無秩序に聞いた要に、トーキーは振り返り「そうです。残念ながら、あのフックです。ですが、フックは貨物船から回収されて、今はここの武器庫で厳重に保管されています。本陣から持ち出すのは不可能です」、「この建物内で!という事ですか⁈」と声を張り上げたチャンスに、トーキーは「おそらく、そうだ」と答えた。
貨物船の船壁をよじ登るのにボーガンで打ち込んだフックに、ロープ引かせて船に潜入した。あのフックから、安全ピンを削り出したというのか・・・・要は宗弥の行動に愕然とする。
立ち上がったターキーが「フックの数を確認してきます。10分ください」と言った。その声色を聞いたトーキーは思わず「落ち着け」と声を掛ける。トーキーにガン見を返したターキーは「兄さん、これが落ち着いていられる事か!フレミングはどこまで!腐ってるんだ!どこまでアルファーを貶める」ピシリと言い返す。
「きっちりとカタは取らせる。今は感情を表に出すな。アルファーに注目が集まってる」そう言ったファイターが一番、誰が見ても、怒りが襲いかかってくるような表情で頂けず、近づきたくはないものだった。
その顔を見た要は「お前が一番ヤバい」心情の暗を押して犬歯を見せて苦笑し、続けて「トーキー、短時間での分析ですまなかった。ありがとう。その成分表を僕にメールしてくれ。ターキー、任せろ。アルファーの底力をみせてやる」と言うと、黒のスリムパンツの後ろポケットから左手でスマホを取り出し、左手の親指でメッセージを打ち始めた。
“ ご報告したいことがあります。お時間を頂けないでしょうか“ とコロンブスに送信する。
5階の通信室から、3階のエレベーターホール近くにある休憩室に移動したファイター、チャンス、要はコの字に置いてあるソファーに座り、トーキーから備えにと渡されたスマホを使って、コーヒーを飲みながら寛いているを、演出しながらやり取りし始める。要はある提案をメンバーにし、その文章の最後に“極端な方法だ。抜けたいと思うなら、それでも構わない“と書き添えた。
“今のまま、ここに軟禁していても、あいつの思うがままになる。俺は乗る“とファイター。
“自分も、行きます“とチャンス。
“僕らも参加します。ターキーは情報を抜くために、ここに残します“ と、通信室にいるトーキーから返信が来た。
決まった。
要の既存のスマホに、“上がってこい“ とコロンブスからの返信が入り、ファイターとチャンスに「コロンブスに会ってくる」と告げた要は、右隣に座っているファイターのそばに、トーキーが準備していたスマホをさりげなく置いて「預かっといてくれ。身体検査があるかもしれない、見つかったら厄介だ」と監視カメラに捉えられないよう口を動かさずに囁き、ファイターは頷きつつ「ここにいる」と鋭い声で応じ、淀みないその顔つきを見た要は「わかった」と深海の静けさで返した。椅子から立ち上がったチャンスは手筈通りに非常階段へと歩き出し、地下駐車場へと向かう。
その背を見送った要はゆっくりと立ち上がり、廊下に出るとエレベーターの上昇▲ボタンを押した。