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国守の愛 第3章 red eyes ・・・・  作者: 國生さゆり    
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シーン41 破滅への幻影



  シーン41 破滅への幻影


 死の影が俺にれようとしている。


 ガス燈を特戦群のシータとアルファー残党ざんとうが、俺を監視下においたとジーナとトムから情報を得た。出どころが違う2つの情報一致いっちに俺は、日本の特戦群の力をいで意気消沈させてやろうと計画した。



 カナメとチャンスがred eyesに感染して戦力外の今、屈指の狙撃力をほこるファイターと通信の魔道士トーキーを遠距離狙撃で射殺し、精鋭アルファーをつぶした俺たちは隠し部屋に誘い込んだチームシータをブチ殺す予定だった。後片付けは機密と秘匿をげんとする特戦群に押し付けて、ほとぼりが冷めるまで東京を離れるつもりでいた。



 その俺の尻に火が付いた。クソたれ!!



 あの間合いは完璧に名手スナイパー・キリルのものだった。だが、キリルの無線は途切れ、撃ち負けたとさとった部下4人は蚊でも追うように俺を脱出路へと追い立てた。まだ勝算はあったというのに・・クソ!!俺が生きていれば立て直しがきくとでも思ったか、クソたれの意気地なしどもめ。屋根裏の裏金と本国に報告していない情報源の資料が入った備えのUSBも回収する暇さえなかった。夢想家の店主が口をるのも時間の問題だ。蜥蜴とがげの尻尾に成り下がった俺に全ての責任を押し付けて、祖国は知らぬ存ぜぬをつらぬき通すだろう。俺にjokerを引かせた!!大馬鹿野郎どもめ!!!!



 前任者と同じ道を辿たどってる俺。あの時は仕掛ける側だった。因果は巡る。気をつけていなければ喰われる因果応報が巡って来る。部下たちはようやく脳みそに血が回ってきたようで、これからの身の振り方を考えるのに忙しいご様子だ。その証拠に俺と目も合わせもしなければ口を聞こうともしない。過酷な生活苦もなければ言論統制もない。この国の自由に慣れきった人材でしかなくなった部下の現状。それは俺も同じだが・・俺が潰れたら元も子もないのは承知していたはずだ!!何がどうなっているか、状況がつかめていなくとも諜報機関に所属して23年、俺の嗅覚が警報を鳴らしている。もう、こいつらは、俺の言うことはきかない。



 だからと言って俺から離れる気もなければ、何かあった時の保険にでもするつもりなのか、俺に対しては生かさず、殺さずが今のこいつらの本心だろう。ジーナからの情報が入らなければ俺だって動かなかったさ。ちょっと・・待て・・ジーナの情報源は誰だ?



 フレド・・は、ソウヤと東京を離れると伝言を残していた。トロンスキーの名は上げていなかった。いつ、どこで、誰とかは伝言の鉄則だ。だから俺は・・トロンスキーは・・死んだと・・判断した。




 ジーナの情報源は・・・身内だ。俺の動向を知っていてここにいないのはフレドとトロンスキー。フレドに俺を裏切る度胸もメリットもない。トロンスキーは俺の仕事の仕方を熟知している。クソ!!トロンスキーは生きてる!!俺を!!ハメやがった!!



 クソ!!!!



 世田谷の事件でこれまでの経緯を知りすぎたてい始末しまつし、この国の秘匿とも、影ともいえる部隊に所属するソウヤの畏怖いふすべき能力で装飾そうしょくした事件は、この国の中央から脚光を集め、呑気な政治家がズブズブの共存関係にある記者に漏らし、メディアは特戦群の存在を表面化させ、あのいまいま々しくも憎たらしい部隊長コロンブスを辞職に追い込むはずだった。頭角をあらわしはじめたトロンスキーの首根っこを押さえておくために、血のつながりがあるソウヤをチームに引き入れもした。そしてred eyesが蔓延まんえんした日本は世界から孤立するはずだった!!一石何鳥ものた俺は祖国から賞賛しょうさんされるはずだった!!!そうなれば地位も名誉も経費も思うがままだった!!はずだ!!!クソったれ!!!



 盾石富士子の拉致事件を計画した俺は・・・あの時からこの道を破滅への幻影をひた走っていたというのか・・・スパルタンがカナメを確保し、再起不能の状態でコンテナ船に連れて来たあの時、将来、特戦群出身のカナメの弱みを掴んで損はないと踏んだ俺はピエロと名乗ってカナメに接近した。あの環境下で腐る事もなく、あのカルロ・ゴールデリさえカナメに肩入れした。見ていて面白い男だった。カナメはひそかに証拠を集め、アルファーと連絡を取り、カルロが作り上げた密輸ネットワークを潰し、特戦群の底力を世界に印象付けた。




 俺はソウヤという厄介者を引き入れたのか、カナメを引き立てたカルロ・ゴールデリ同様どうように・・・。




 飛来するドローンを操る本陣・ターキーは、マキシムが乗る車の天井に液体デイバイス弾を静かに装着させるや[送る。ターキーから総員、設置成功。炸裂さくれつさせていつでも車を乗っ取れる。突入にそなえられたし]と入れ、シータ・チーム長ブリースから[了。ブリーズからターキー、こちらの展開は完了している。いつでもやれ]と入るや、ターキーは起爆きばくスイッチを押した。




 アメーバー状の液体が天井をおおう。運転者の意思に反して急転回した車は来た道を直向ひたむきに戻り、その間に運転席の男が「движется самостоятельно(勝手に動いてる)」と叫び、マキシムが「何言ってる!どこに行く気だ!!」と怒鳴りつけている間に右折し、「停めろ!」と男たちが騒ぐ内に、建設途中のマンション敷地内に車は突入した。急停車するや「В окружении. Оставьте оружие в автомобиле и выходите из него с поднятыми руками.(包囲している。武器を車内におき、両手を上げて車から出てこい)」とカーナビがげる。フロントガラスにたれれる赤き液体を目にした運転席の男が「Дьявол идет!(悪魔が来た!)」ムンクの叫び顔で絶叫する。運転席のドアを開けて転がるように外に飛び出し、即座に左肩を撃ち抜かれてダウンする。




 続けざまに発砲したファイターは両前輪を秒で撃ち抜きバーストさせた。ブレーキが効いている中、エンジンがうなりを上げ、後輪タイヤが空回りする。「Внешний вид. Или я брошу всю машину на фундамент и залью бетоном.(出てこい。さもなくば車ごと基礎に転落させてコンクリートを流し込むぞ)」と再びのナビが警告する。



 一斉いっせいに車から飛び出した男3人にどこからともなく、暗黒の夜から浮かび上がった男たちがむらがるように取りいて闇へと引きずり込む。



 静寂の夜闇からブリーズが「マキシム、両手を上げて出てきてくれないか?」と言った。ドローンがらす光の中へ、光明を求めるように両手を上げたマキシムが左足を踏み入れる。有名なスパイが言ったという“妻子の顔が浮かぶようになったらやめ時だと“、脳裏には誰の面影も思い浮かばない。俺はまだ現役でいたいらしい。叶うはずの無い希望が俺をさいなむ。



 マキシムの正面に進み出たブリーズは「初めまして、マキシム」左頬に刀のような冷笑を浮かべ、そよ風のような柔らかな口調で挨拶した。



 マキシムの背後にトーキーとカンマルが立つ。[送る。トーキーから総員。マキシム確保]内なる闘志が垣間見える声でトーキーは報告を入れ、[了解した。迅速な撤収を求む。よくやった]とコロンブスがこたえた。



 ジーナはコロンブスがその存在を届け出していないこの国のスパイだ。コロンブスは『敵を騙すなら、まずは味方から』を実践しているだけだ。





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