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国守の愛 第3章 red eyes ・・・・  作者: 國生さゆり    


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シーン28 予兆



シーン28 予兆よちょう


 早朝5時、オープンカーにした2シーター・AudiTTロードスターのハンドルを握るカンマルは、助手席に座る水色シャツを着たアリシアの横顔をチラリと見た。一睡もせず愛しあったアリシアに睡眠不足の影は無く、逆に甘美なまでのオーラをはなっていた。アリシアはオーディオから聴こえる歌に合わせて、身体をリズミカルに左右に揺らしながら、華奢きゃしゃな左手でたまに風になびく髪を後ろへ追いやりながら口ずさむ。カンマルは知っている。その両の手のひらの角質層が何度もマメが潰れて厚くなり、盛り上がっている事を。


 アリシアが歌う。


 泣き出してしまいそう

 痛いほど好きだから


 どこへも行かないで 、息を止めてそばにいて


 身体から、この心

 取り出してくれるなら


 あなたに見せたいの

 この胸の想いを


 教えて、悲しくなるその理由わけ

 あなたに触れていても

 信じること それだけ、だから



 海よりも まだ深く、空よりもまだ青く

 あなたを これ以上


 愛するなんてわたしには出来ない


 もう少し綺麗なら

 心配はしないけど



 わたしのことだけを

 見つめていて欲しいから


 悲しさと引き換えに

 このいのち出来るなら


 わたしの人生に あなたしかいらない


 教えて、生きることのすべてを

 あなたの言うがままに、ついてくこと

 それだけだから



 海よりもまだ深く、空よりもまだ青く



 ふと、歌うのをやめたアリシアに視線を向けられたカンマルは「なんていう題名の歌なんだ?」と聞く。「カンマル、興味があるなら検索エンジンで探す時代よ」つれないアリシアに、昨夜カンマルの腕を一時も離さず、甘えていた余韻よいん微塵みじんも見当たらず、そのツンデレぶりがまた気に入ったカンマルは「そうだな。何でもかんでも聞く、馬鹿な男でごめん」と素直に謝る。クスクスとれやかな笑い声をらしながら「そういうとこ、好きかも」アリシアがうるわしく口にする。その声と笑い声は昨晩、カンマルの腕の中でかすれるように時折ときおりあげていた声色にていた。



 「香港からアメリカに移住したおばーちゃんが、ソボっていうのでいいのかしら?、よく聴いていたの」とアリシアが言い、「合ってるよ」と言ったカンマルの内耳モニターに[送る。サラマンダーから総員。あと1分もすれば、最新の衛星画像が本陣から送信されてくるはずだ。確認しておいてくれ。Dとピッコロの偵察ていさつが終わるまで、カンマルとアリシアは裏口のA地点で待機たいき、俺はデスとトムの3人で正面から行く。手はず通り、突入と同時にサイバー攻撃を仕掛しかけて、あらゆる機器を片っぱしから無力化するが、銃火器はあるはずだ。ヘルメット着用、防弾装備はMAXとする]とサラマンダーから入り、そのサラマンダーの声に強靭きょうじんな熱量を感じたカンマルは、いつものように自然と焼かれるように戦闘への臨界点りんかいてんを目指して、気持ちが自由へとばたき始める



 本陣・通信局は一晩かけて、敏子を日比谷公園に送り届けたていの車を割り出し、丁の居所を探し出した。これからその場所にベータとCIAのトムとアリシアは潜入する。目的地はスカイツリーの根元にある商店街。昭和の香りを残す、ゆるりとした街にある雑居ビル3階、302号室だ。



 通信をえたサラマンダーが「それで、なんでお前たちは俺たちの国にいるんだ?」と運転席のトムに聞く。「またまた、さっき話した通りですよ」とケムに巻くトムを、サラマンダーは助手席から身を守り出してわざとらしく見やる。



 トムが「He ’s a very serious Japanese man.{全く真面目な日本人の典型のような男だ}」と呟く。「You are typical of the CIA. A liar, a fool who thinks the world is their garden.{おめえはCIAの典型。嘘つきで、世界を自分たちの庭だと思ってる愚か者だ}」とサラマンダーが返す。



 顔をしかめたトムがサラマンダーの顔を見ると、サラマンダーは溌剌はつらつとした好青年の顔つきで「英語がわからないおじさんだと、馬鹿にしてただろう」言うや、爽快感たっぷりに笑ってみせる。



 トムはコイツはhydrangea{紫陽花}かと思いながら前を向き、ちょうど黄色信号になった交差点でランクルGXを停車させ、前を走っていたデス運転のブラックアルファードは通過する。Dとピッコロが乗車していた。



 信号待ちしていると[送る。デスからサラマンダー。丁がほか6人と建物から出てきました。各員それぞれの手に大型バック、ゴルフバックを下げています。戦闘装具が入っていると推察すいさつできます。どうしますか⁈]と入り、ただちのサラマンダーが[D、ピッコロと尾行しろ。丁が乗り込んだ車の特徴、ナンバー、位置情報を総員と本陣に送れ]と指示するや、間髪入れず「トム、計画変更だ。丁が動いた。位置情報がお前のスマホに入る。車を脇に寄せて停車」とサラマンダーは早口で伝え、トムの返事を待たず、すかさず[送る。サラマンダーから本陣。丁の隠れ家を家宅捜査されたし]と入れた。



 車を止めてジリジリと待った40秒後、スマホに送られて来た位置情報を、トムはGoogle mapにリンクさせて車をスタートさせる。



 




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