シーン14 宗弥の監房
シーン14 宗弥の監房
盾石本社ビルから本陣に戻った要はコロンブスを執務室に送り届けると、その足で宗弥の部屋を訪ねた。
ドアを開けた要を見上げるや、ベットに座っていた宗弥は「本当にお前は生きていたんだな」いまだ信じられないとでも言うような鈍い表情で要を迎え、ほのかな微笑を口角に浮かべた要は「宗弥、何か不自由している事はないか?」と聞きながら、宗弥が座るベットの向い側にある椅子の笠木を右手で掴んで90°反転させ、壁に向けた背もたれに身を預けて座り、左手に握る0のペットボトル2本を右側にあるテーブルの上に置いた。その言動は派遣地の拠点で寛いでいる時と変わらず、スムーズで自然なものだった。
ぼんやりと要を見ていた宗弥はその視線を0へと向け「何もかもが、思い通りにならないよ。スパルタンの話も、俺の処遇も、食事も、風呂も、この部屋の無機質さも」と言い、「そうだな。本陣は防御を最優先にした鋼鉄の建物だもんな」、そう言った要の表情には何の恨みも、責めも、車内で見せた激情もなくで、ただ、穏やかで、共に歩いてきた日々に見た人なつっこい顔で、そのムーブに屈辱感が吹き出した宗弥は悶えるように「お前、なんか、変わったな」と直球の物言いをするが、要は歯牙にも掛けず「そうか」と照れたように言いながら0を宗弥に手渡した。その態度がまたも気にいらず、宗弥は乱暴に封を切って心中を洗い流す為に0を飲んだ。
要は「あの作戦の後、僕はコンテナ船で生活していたんだ。船室には冷蔵庫と舷窓があってな、サヤは僕の部屋に来る度に、お日さまの光があって冷えたコーラを飲めるなんて、幸せねって言ってたよ。ソファーに座ったサヤは0を飲みながら僕に色んな話をした。僕は笑いながらそれを聞いていたんだ。サヤが加担しなければ、拉致事件は成立しなかったと頭でわかっていながら、僕は笑って聞いていた」と言って、右手でテーブルから0を取り上げて左手で封を切り、大きく一口煽る。
「視覚は不思議だな。思い出を刺激して鮮明に蘇らせる」と呟きつつ右手の0を見た。
苦い笑みを浮かべ、微かに左頬が含らんだ宗弥は「ホットドックを見る度に俺は、富士子とお前の光景を一生思い出すんだろうな」とbigな笑顔で言うが、鳶色の瞳にある影の濃度が増してゆく。
要はその目を見ながら「大事にする」と言った。
その先の言葉を遮るようにスクリと立ち上がった宗弥は、厳しい光沢を放つ鉄格子が設置されているはめ殺しの窓辺に立ち「で、ここに、何しに来たんだ?」体温を感じない声で、痺れを切らしたように聞く。
その後ろ姿を見ていた要は「アルファーとターキー、みんなで夕食を食べないか?調理室と食堂の監視カメラ、盗聴器は全てOFFにする。許可はもう取った。どうだ?」と控えめに尋ねた。
「おお!いいね」と言い、振り返った宗弥は「メニューは当然、ファイターカレーだろう」抜け感120%のbigな笑みで、笑うことに成功する。
久方ぶりに交わした二人の会話は噛み合わず、チグハグとしていた。




