表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

エピローグ

 この日、驚く話があった。それは彩乃さんの旦那さんの孝明さんがきらめくあまたの向かいにある悠久乃森(ゆうきゅうのもり)という施設で自分の命を止めたと言うんだ。因みに悠久乃森と言うところは簡単に言うと自殺が出来る公共施設。おかしいと思うかも知れないけどそういうものを国が作ったんだから仕方がない。


 ヒデの誕生日パーティー中盤、余興的にSalty DOGの活動記録映像を流し始めた頃に帰ってきた彩乃さんが映像に映る孝明さんを見て突如泣き崩れたんだ。そして俺達に孝明さんの事を話してくれた。孝明さんは81歳の高齢で末期ガンだったと言うんだけれど、それでも誰もが驚いた。それは孝明さんがかつてそんな施設は要らないと猛反対して戦っていたからだ。


 俺達はすぐパーティーを中断して孝明さんとのお別れに皆で悠久乃森へ向かった。しかしその時にはヒメちゃんはいなかった。パーティー始まって間もなく桂介の奴が現れヒメちゃんを連れ出したんだ。劇場の支配人へ挨拶に行くとか言って。全くアイツは本番前の通しにもいなかったくせに何様だよ?


 しかし奴には本当に参った。完敗だ。

 孝明さんとのお別れ後、解散となると俺とヒデは家が同じ方向だから二人でビール飲みながらダラダラと歩いていたんだけど、その途中で俺達はとんでもないものを見てしまった。

 なんと俺達の30メートルくらい先にあったラブホから桂介とヒメちゃんが出てきたんだ。さすがの俺も慌てた。お陰で昼間から飲んでたのに酔いが吹き飛んだよ。

「ちょちょ、ちょっと、ヒデ!」

「何だよ?」と眠たい目付きで応えたヒデを俺は急いで街路樹へと引っ張り込みヒデに教えた。

「あれあれ」

「あ」

 ヒデは固まっていた、呆然と。

 遠目からでもよく目立つヒメちゃんだ。ヒメちゃんは例の白いワンピースのままで髪は高い位置で一つに束ねたポニーテールスタイルだった。ちらちらと見える細くて白い首筋は色気がありすぎて正直この時の俺の股間は疼いて仕方なかった。

「桂介の奴、挨拶に行くとか言ってハッタリかましてヒメちゃんと二人でラブホにしけこんでたんかよ……しかも今日この日にさぁ……」

 俺の吐いた言葉にヒデは「だな……」と力なく応えた。ヒデには相当なダメージだった思う。

(しかしアイツ、マジでヒメちゃんに純白ワンピース着せてプレイしてやがったのかよ?!)

 あの桂介の野郎が本当にヒメちゃんをものにしていたことが分かり俺の闘争心に火が点いた。

(桂介の野郎……!)


 桂介には誰もが知っている1号(彼女)がいる。劇団とは全く関係ない人間らしい。奴にしては意外なほど地味な女だった覚えがある。全体的に古風な印象を受ける内助の功を発揮しそうな大人しい感じの。

 そんな女がいる野郎と寝るヒメちゃんはそう言う女と言う事になる。

 つまりは奴と寝るような女なら俺にも十分チャンスはあると言う事だ。奴が出来て俺に出来ないわけがない。

 俺は奴のように止まり木の女を(こしら)え添えておくような卑怯な男じゃない。


 ヒデ、お前の生真面目さは時に大きな後悔を引き寄せる事になるぜ。本気なら尚更寝技を使ってでも勝負しなきゃ。


 ヒデ、お前はどうする?


 悪いが俺は自分の欲望に従うぜ。


<完>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ