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第1部

主要登場人物(カッコ内の数字は2059年5月15日現在の年齢)


インディーズバンド Salty DOG

 東条英秋(29)……ボーカル、ギターを担当。作詞作曲を手がける。

 坂井 誠(28)……ギター、ラップ担当。

 河西一郎(28)……ベース担当。

 (あずま) 茂(28)……ドラム担当。


劇団まほろば一座

 山田桂介(けいすけ)(28)……劇団主宰(座長)。Salty DOGメンバー達と同じ高校出身。

 川田智之(28)……副座長。桂介とは高校時代からの付き合い。

 遠藤香織(21)……まほろば一座の美人看板女優。周りからはヒメ(姫)と呼ばれている。

 ステファニー・アームストロング(26)……まほろば一座所属の役者。北米系の血筋を持つ。明るく陽気なキャラクター。通称ティファニー。

 今日は2059年5月15日木曜日。俺はわざわざ有給休暇を取って集い処きらめくあまたにいる。時間は午後3時。おやつの時間だ。


「誠さん、もうビール飲んでるーっ!」


 俺の目の前に赤色のパジャマを着た白人顔の女が現れ叫んだ。彼女の名前はステファニー・アームストロング。劇団まほろば一座で役者をやっている。


「おやつだよ。おやつ。で、ティファニー。なんでパジャマなんて着てるの? 可愛いじゃん!」


 胸元がほどよく開き、形良い胸で作られた谷間が際立って女臭(おんなしゅう)を漂わしているティファニー。なかなかの色気だ。


「可愛いでしょ? これ、私のお気に入りパジャマー」


 そういって俺の前でくるりと回って見せるティファニー。それを見て俺はくすりと笑い彼女へ聞いた。


「なんで肝試しにパジャマなの?」

「さぁ。座長指示」

「つまり桂介の好みか?」

「そういうことかな?」

「やっぱエロいなぁ桂介は」

「座長はエロいよぉ」

「でもそんな格好ヤバくねぇ? 俺ならすぐ脱がすぞ」

「誠さん、それ犯罪」

「だって、暗闇でそんな格好で現れたら男を誘ってるとしか思えないっしょ? パジャマのズボンなんて簡単に下げられるし」


 俺はそう言ってティファニーのズボンをサッと掴んだ。


「ちょちょ、ちょっと止めてよっ! ホント脱げちゃうから!」


 ティファニーは慌てて俺の手を掴みパジャマから外そうと必死になっている。俺は「ほらほら」と抵抗するティファニーの少しマジな反応を楽しむ。するとまほろば一座の副座長、トモちんが現れた。


「オイ! 誠っ! ティファニーに何やってんだよ!?」

「おお、トモちん。ティファニーが俺を誘惑するからしゃあねぇなぁーと思って」

「意味わかんねぇーこと言ってんじゃねぇーよ!」

「だって、ティファニーだぜ?」

 と俺が言うとトモちんは手を軽快に叩いて言った。

「あ、そっか。ティファニーだった。俺も手伝う」


 そしてトモちんは急にちょこまかとした動きでティファニーへ近づいた。するとティファニーはトモちんが至近距離と迫った瞬間、俺の手を両手で押さえたままトモちんに向かって素早い蹴りを出した。


「痛ってぇぇ!」


 腕に蹴りが入り飛び跳ねたトモちん。俺はその蹴りを見て思わず手を離した。あまりにも素晴らしい蹴りで見ていただけでも身震いする。


「このオッサン達おかしいわ」


 そう言ってティファニーはスボンを勢いよく胸の辺りまで持ち上げると首を傾げながら去って行った。

 その姿を俺とトモちんが笑って見届けるとトモちんは今さっきまでとは打って変わり引き締まった顔つきで叫んだ。


「みんなっ! 集まってくれ! 今から最終打ち合わせやるぞ!」


 トモちんとは出身高校が一緒の同級生。まほろば一座の座長やってる桂介という奴も同じだ。でも当時はほとんど付き合いなく卒業後、ここでお互い活動していることから随分と親しくなった。


 あ、そういえば俺の自己紹介していなかった。俺は坂井(さかい)(まこと)。Salty DOGと言うバンドでギターをやっている。メンバーは他にボーカルギターのヒデにベースの一郎、そしてドラムの茂の総勢4人のバンドだ。

 そして今日、5月15日はと言うとヒデの誕生日だったりする。俺達の中では一番早い誕生日でヒデの奴が一足先に29才となる。

 そんな訳で今日皆が集まっているのはヒデの誕生日を皆で祝おうって話なんだが……わざわざ誕生日会をやるためだけに集まるほど俺たちは若くはない。実は裏がある。


 半月ほど前の話――


「おう、マコっちゃん! いいところにいたな。ちょっと話」

「おう、桂介! 何だて? 女紹介してくれるんか?」

「ナニ言ってんだて! 俺よりマコっちゃんの方が女の連れは多いだろ?」

「いやいや。なんとかしてさぁ、役者やってる子と仲良くしたいのよ」

「そんなのわざわざ俺が紹介しなくてもマコっちゃん女の顔見りゃ自分で声かけとるがや」

「いやー、それが実際難しいんだよね。みんな警戒しちゃってさぁ」

「それはマコっちゃんの名前が通っとるからに決まってるやん!」

 そう言って桂介は大声で笑い俺の横へピタリとくっついてきた。俺は桂介の怪しいこの動きに警戒した。

「桂介、笑いすぎ。で、何の話だよ?」

「そうそう。お願い事」

「嫌だ」

「まだ何も言ってねぇよ」

「オマエのお願いなんて聞き出したらキリねぇよ。みんな言ってるぜ。最初と話が違う事ばかり要求してくるって」

「誰だよ、皆って?」

「それは機密事項」

「なんだ、やっぱ役者連中と繋がってんじゃねぇか」

「じゃなくて、ここに出入りしてりゃ色々耳にするって、桂介」

「聞き捨てならんな。ちょっと聞かせろよ」

「俺は何にも知らないっス! で、何だよ、話って?」

「んじゃあ、知り合いの伝で他の劇団の新人女優勢を紹介するってことで話進めようか?」

「お? マジで?! それは選択の余地無しだな。乗った!」


 そんな訳で桂介と取引をして奴の話を飲むことにした。


 桂介のメインの話はというと、今週末にまほろば一座がお化け屋敷アトラクションをやるっていう事で、その本番前テストを兼ねたリハーサルをすると言うのだが、上手い事に今日はちょうどヒデの誕生日って事もあってサプライズパーティーがてらヒデに第一号の客としてお化け屋敷体験をしてもらうという算段の話だった。


 しかし桂介の奴がヒデの誕生日を知っていたというのは意外だった。わざわざウチのバンドのホームページでも調べたのか知らないけど桂介って奴は隙の無い策士だな。かなりのやり手であることは間違いない。改めて桂介って奴は気の許せない(おぞ)ましい野郎だと正直俺は思った。

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