#7(修正)
白い軍艦の残骸が恒星メノールの光に照らされオレンジ色に染まっていた。
竜骨はひしゃげてちぎれ、破壊された無数のパーツが漂っている。
それを囲うようにジェラルドの艦隊がこの宙域へ集結していた。
数隻の艦艇から作業員が船外へ出て、残骸に取り付いて何かを調べている。
ジェラルドは、その様子をブリッジから眺めていた。
後方で電子扉が開く音がなり、規則正しいリズムが特徴的な靴音が近づいてくる。
「閣下、ご報告いたします」
ゆっくり振り返ると、報告書を手にしたフォルカーが立っていた。
「ここに漂っている残骸は、試作艦のもののみでした」
「爆沈の原因は、艦首砲の暴走か?」
艦首砲を発射する瞬間までは試作艦の状況を把握できていて、ロストしたのは発射の直後だ。だから、ジェラルドは試作艦が爆沈した原因をそれと確信していた。
しかし、フォルカーの口から出た原因は、それとは違うものであった。
「外部からの衝撃によるものである可能性がたかいようです」
ウォルカーは数枚の画像をタブレット端末に表示して提示する。
「調査班が撮影したブリッジと艦首の画像です」
一見すると、内部から破裂したようにみえる。
ジェラルドはタブレット端末を受け取り、表示されている画像をまじまじと眺めた。
「…………!?」
「お気づきになられましたか? 艦首砲にもブリッジにも光学兵器による弾痕があることを」
「つまり、これは撃沈されたということなのだな」
タブレット端末をフォルカーへ返し、ふたたび外を眺める。
「艦首砲発射直後にロストした原因は、もう少し調べる必要がありそうですが、少なくとも傭兵艦は健在であると考えるのが妥当でしょう」
「だが、これで手がかりはなしか」
「そのことなのですが……」
フォルカーはズボンのポケットから、海賊艦で見つけた薬莢をとりだした。
「これは海賊艦へ乗りこんだ際に見つけたものです。海賊の死体の銃創からは、鉛の弾頭も見つかっております」
「火薬銃か」
「はい。傭兵のなかにこの弾を使用したものがおります。調べたところ、この弾は二十世紀から二十二世紀頃の地球で使用されていたもので、ハンドガンとしては最大のものです」
「骨董品だな」
「骨董品です。しかも、この弾を使用した銃は種類が少なく、入手方法は限られております。傭兵の中に、そんな銃をわざわざ使用している人物がいるということです」
「なるほど……」
フォルカーの言わんとすることを理解したジェラルドは、口の端を吊り上げた。
「これを使っている者を徹底的に洗い出せ」
「はっ」
「あれ……? な、無い!?」
ラボへ戻ったアヤネは、解析機を見て愕然とした。
台座にあるべきものが無くなっている。
台座から落ちて転がっているわけでもなさそうだ。
「え、何で? ちゃんと施錠して――」
ふと、敵の重イオン砲を受けたときのことを思い出した。
「あ……」
光学バリアを最大出力で展開し、ビームとシールドが干渉しあってオーバーヒートを起こして艦の機能が停止したのだ。扉のロックはその時にはずれたのかもしれない。
それならば、ラボには誰でも自由に入れる状態であったはず。
「いや、でも……」
誰が盗んだというのか。あれは、何の技術も知識もない者が持っていたところで何の意味もない。
「とりあえず、マスターには報告しなきゃ」
ラボを出たアヤネは、全速力でブリッジへ向かった。
リカルドとファレルは、メモリーキューブを手に入れたあと、誰に目撃されることもなく自室へ戻っていた。
「……兄さん」
「やったぞ。ついに取りかえした」
メモリーキューブを懐から取りだし、ファレルへわたす。
「だが、そのままでは目立つな……」
腕を組んで思案するリカルド。
宇宙船というのは巨大な密室だ。
メモリーキューブが紛失したとなれば、船に乗り込んでいる人間が疑われる。
このままでは遅かれ早かれ、ばれてしまうのは時間の問題だろう。
「……大丈夫」
ファレルはそう言うとメモリーキューブの表面をそっと撫でた。
ファレルに撫でられたメモリーキューブは、輝きを放ちながらどんどんと収縮していく。そして、最終的には五センチほどの勾玉のような形になった。
「…………!?」
「……これが本来の姿」
驚愕の表情を浮かべるリカルドのことは気にも留めず、ファレルは部屋の中から適当な紐を探し出し、形を変えたメモリーキューブにそれを通して首からかけた。
「……知らなかったの?」
「ああ」
リカルドは驚きを隠しきれない。
「……これでバレないはず」
ファレルは勾玉状になったメモリーキューブを上着の胸元の中へと隠した。
ユーリはリクライニングにした座席に横たわり、顔に雑誌をかぶせて仮眠をとっていた。
広くゆったりとした自室で休むより、ブリッジのほうがユーリは居心地がよかった。
もちろん、しっかりとした休息をとる場合は、自室にこもる。
ブリッジのなかを飛び交う会話を子守唄代わりに惰眠をむさぼる安らかな時間は、駆け込んできた足音によって終わりを告げられた。
「マスター!」
「何だよ、騒々しい……」
雑誌をずらし、片目で声の主の顔をみやる。
血相変えて飛び込んできたのはアヤネだった。
「無くなっちゃった!」
「は? 何がだよ……」
「消えちゃったんだよ!」
「アヤネ、もっと分かりやすく話しなさい」
コトハは、淡々とした口調でいさめる。
現在のコトハは、いつもの和装メイド服姿にもどっている。
「だからぁ、ラボからメモリーキューブが無くなっちゃったんだよ!!」
慌てるアヤネとは対照的に、ユーリとコトハは落ち着いていた。
「動きだしたな」
「はい」
アヤネはきょとんとした表情でユーリとコトハの顔を交互にみた。
「ドアのロックは何で解除されてんだ?」
「タルタロスのシステムを再起動したせいじゃ……」
「この船のセキュリティーは、そんなに甘かったか?」
「……あ」
ユーリの言葉をきいてはっとなるアヤネ。
「ハ、ハイパージャンプステーションとランデブー完了。と、当艦は十五分後にジャンプ航法を開始します。ぜ、全乗組員はジャンプ時の衝撃に備えてください」
スズネのオペレートが会話をさえぎる。
「何にしても、あと十五分じゃ何もできねぇ。アヤネもジャンプに備えろ」
リクライニングにしていた艦長席の背もたれを起こし、ベルトで身体を固定するユーリ。
コトハも補助シートに座って、ベルトを身体に回していた。
「早くしなさい」
コトハの淡々とした言葉に促され、アヤネは何とも腑に落ちない気持ちのまま、しぶしぶ従うのだった。
ジェラルドの艦隊は、ドルドリア領アルスレーナ宙域へ向かうため、ハイパージャンプドライバーに向かっていた。
試作艦の残骸の調査が終わり、欠陥などいろいろな問題が発見された。
これらの問題が解決されれば、試作艦はより完成されたものへと生まれかわるだろう。
ジェラルドにとっては、それだけでも大きな収穫といえる。
彼は現在、ブリッジの上階にある司令官室で様々な書類の作成におわれていた。
正規の艦隊が遊撃行動を行うには、それなりの準備と理由が必要になのだ。
さいわい、ジェラルドはこの手の工作が得意だった。
ジェラルドが書類の作成をしていると、執務デスクのコールランプが点滅した。
書類作成の手を止め、受信スイッチに手をのばす。
「閣下。ご報告したいことがあります」
ポップアップしたホログラムディスプレイには、敬礼するフォルカーの姿。
扉の開閉ボタンを押すと、電子扉が音を立ててひらく。
フォルカーは一礼してから入室してきた。
「何か分かったのか?」
「はい。あの弾の購入履歴があるのは、宇宙全体でも五十人おりませんでした」
「ほう」
「その中でも、定期的に購入しているのは七名のみ。そして、うち一名がアルスレーナ宇宙ステーションへ入港予定の船のクルーです」
「そうか」
フォルカーの報告をきいたジェラルドは、自然に口の端が釣りあがるのを押さえきれなかった。
タルタロスはドルドリア帝国領アルスレーナ恒星系にいた。
星図には、黄色矮星の中心を公転する七つの惑星が映しだされている。
タルタロスは、ジャンプ航法によってアルスレーナ宇宙ステーションから比較的近い宙域まできていた。
「ア、アルスレーナ宇宙ステーションから、ア、アプローチきました」
「誘導にしたがえ」
ユーリの言葉に従い、スズネは入港手続きをはじめた。
アルスレーナ宇宙ステーションは、アルスレーナ恒星系第四惑星ハーフートの軌道上に設けられた宇宙港で、第四惑星の地表とは軌道エレベーターで繋がっている。
アルスレーナ恒星系には五つのハイパージャンプドライバーがあり、日ごろから船の往来が激しく貿易の要衝として栄えていた。
タルタロスは誘導にしたがって加速を開始する。
「システムの偽装、忘れんなよ?」
「オッケー。完璧だよ」
モニターをみたまま、振り返らずに手だけ振って見せるアヤネ。
タルタロスは、傭兵ギルドには高速輸送艦として登録している。
戦闘艦、それも戦艦並みの火力を有する船だと手続きがいろいろと面倒になり、それが煩わしいので偽装していた。
もちろん、偽装は違法なので発覚すると更に面倒なことになるのだが。
タルタロスは光速の三十五パーセントの速度で管制指示どおりのコースを航行している。
はじめは点のように見えていた惑星ハーフートが、ブリッジの窓の中ですこしずつ大きさを増していった。そして、それが窓の中のほとんどを占めるころ、アルスレーナ宇宙ステーションから通信がはいった。
「こちらアルスレーナ宇宙ステーション管制。我々は貴艦の入港を歓迎する。このままビーコンの誘導にしたがい、第一三六ハッチへ入港されたし」
「こちら光速輸送艦タルタロス。了解いたしました」
スズネにかわってコトハが返答する。
速度を落としたタルタロスは、ゆっくりと宇宙ステーションへと近づいていった。
近づくにつれ、縦横無尽に行きかう船や、停泊している船がはっきりと見えてくる。
背後には青く輝く地球型の美しい惑星。水を豊富に有していることが一目で見てとれる。
宇宙において水という物質は、実は極めて希少価値が高い。
水の惑星というものは、いわばオアシスなのだ。
そして、水は宇宙船の推進剤に使用されている。
天然の水がある惑星では、宇宙船の推進剤も比較的安く入手可能だ。
だから、必然的に人があつまり賑わいを見せる。
「検閲終了。チェック抜けたよ」
椅子の背もたれに身体を預けてアヤネ。入港時の彼女の役目が終わった瞬間だった。
「コトハ。到着したら三日間の休暇だとクルーに伝えろ。お前は俺と行動な」
「かしこまりました」
深々と頭を下げて返礼したあと、コトハはユーリから言われたとおり、全乗組員の携帯端末に休暇日程を送信した。
「ファレル!」
コトハから渡されていた携帯端末に届いたメッセージを読んで、リカルドは思わず声を上げた。
無言で頷いているファレルの様子からすると、彼女にも同じ内容のメッセージが送信されてきたようだ。
ラボからメモリーキューブを盗み出してから二十四時間以上経過している。
メモリーキューブが消えたことに気付いていてもおかしくないはずなのに、艦内は不気味なほど静かなままだった。
食堂へやってくるクルーたちも、みないつもと変わらない様子だった。
とにかく、これはチャンスだ。惑星におりてしまえば、姿をくらませることなど簡単だ。
「急ぐぞ、ファレル。端末は置いていけ。発信機が内臓されている可能性がある」
そう言って、リカルドは携帯端末をベッドの上へ放る。
ラボへ侵入したときも、携帯端末は部屋に残してきた。
発信機が衣服に付いていないことは、既に確認済みだ。
もともと荷物らしい荷物は持っていなかった二人は、ほとんど着の身着のままで部屋をあとにした。
艦外へ向かうとちゅう、通路でコトハとすれ違った。
「外出でございますか?」
「ああ。休暇が出たんでね」
リカルドはさり気なくファレルの前に立った。
「そうですか。では、これをお持ちください」
コトハは袖の下から取り出した携帯端末をすばやく操作すると、端末からカードのようなものが吐き出されてくる。
「これは……?」
差し出されたカードを受け取り、怪訝な表情を浮かべるリカルド。
「リカルド様とファレル様が本日まで働かれたぶんのお給料をチャージした電子マネーでございます。小額ではございますが、無一文では不自由でございましょうから」
コトハはそれだけを言うと、リカルドの返答を待たずに一礼して去っていってしまった。
受け取ったカードを懐にしまい、リカルドは気を取り直してファレルの手をひいてハッチへむかった。
「閣下、例の艦がアルスレーナ宇宙ステーションへ入港したようです」
フォルカーがその報告を受けたのは、艦隊がハイパージャンプドライバーへの突入準備をしているときだった。
受け取った情報を速やかにジェラルドへ報告する。
「艦名はタルタロス。高速輸送艦として登録されておりますが、おそらく偽装でしょう」
そうでなければ、試作艦を撃沈したことの説明がつかない。
「艦ならびにクルーの監視をするよう、アルスレーナ守備隊に連絡しろ。監視理由はお前に任せる」
「了解しました」
敬礼を返したあと、フォルカーはすぐさま準備にとりかかった。
ユーリは、コトハをつれてアルスレーナ宇宙ステーション内にある留置所へきていた。
「ここへサインしてください」
書類の署名欄を指差し、看守が説明をする。
言われるままにサインし、コトハにあご先で合図をおくった。
コトハは袖の下から札束をひとつ取りだす。
「百万マースございます」
「保釈金百万、たしかにいただきました」
看守は札束を受けとり、領収書をかえした。
部屋の奥の扉がひらかれ、看守に連れられ男が一人うつむいたまま入ってくる。
「よぉ、ラッド。やつれたな」
名を呼ばれ、男はゆっくりとうつろな表情をむけた。
ラッドはユーリの顔を見るなり、瞳には生気がよみがえり、精悍な顔には怒りが満ち溢れはじめた。
「てめぇ、ユーリ! よくも俺を置いていきやがったな!」
「知らねぇよ。離艦中に出入国パスをクソと一緒にトイレへ流しちまうお前が悪いんだろう」
「仕方ねぇだろ! ケツポケットに入れておいたら、ズボンを下げた拍子に落ちちまったんだからよ!」
つまり、ラッドはタルタロスが推進剤補給のためにアルスレーナ宇宙ステーションへ停泊したとき、不注意から出入国パスを紛失してしまい、不法滞在の疑いで拘束されてしまったのだ。
しかし、依頼の期日に余裕がなかったため、やむを得ず彼を置き去りにしてタルタロスを出航させたのだ。
今回、アルスレーナ宇宙ステーションに寄航したのは、拘留中のラッドを回収することが目的だった。
「コトハちゃん、こいつになんか言ってやってくれよ!」
コトハは、嘆願するラッドの目を見つめかえす。
「今回の保釈金は、ラッド様のお給料から10万マースずつ天引きさせていただきます」
「コ、コトハちゃんまで……」
淡々と強烈な一言を食らったラッドは、情けない声をあげながら滝のような涙を流した。
そんなとき、不意にコトハの携帯端末からコール音が流れた。
袖の下から端末を取り出し、即座に応答するコトハ。
小さなホログラムディスプレイがポップアップし、アヤネの顔が映し出される。
「コト姉ぇの読みどおりだったよ」
「そう。じゃあ、データをこっちの端末へ送って」
「りょーかい」
ディスプレイが消え、コトハの端末は何かのデータを受信しはじめた。
「マスター」
「ああ、次いくか」
「あの……俺は?」
流れから置いていかれつつあるラッドは、ユーリとコトハの顔を交互にみる。
「お前は戻ってろ」
「戻っていてください」
ふたりからほぼ同時に言われたラッドは、まるで迷惑だから来るなといわれているように聞こえて、ちょっぴりだけ悲しくなった。
リカルドはファレルの手をひき、宇宙ステーション内をさまよっていた。
アルスレーナ宇宙ステーションには繁華街なども備わっている。エレキカーも行きかい、まるで小さな都市のようだった。
彼らが目指すのは、惑星ハーフートへおりるための軌道エレベーター。
「地上にさえ降りられれば」
「……」
小さくうなづくファレル。
「入国パスもなしに、何処へ行かれるおつもりでございますか?」
そう言いながら、ふたりの進路に立ちふさがったのはコトハだった。
「……っ!?」
立ち止まるリカルドとファレル。
「端末を置いてきているのに、なんで居場所が分かったんだって顔だな」
ユーリが退路をふさいだ。
「リカルド様へお渡しした電子マネーに細工をさせて頂きました」
「あの……短時間でか……っ!?」
リカルドは驚愕の表情を浮かべる。
「まあ、そう構えんなよ。俺たちは、お前らが持ち去ったもんを返してくれりゃ、それでいいんだからよ」
「たのむ、見逃してくれ!」
リカルドは真剣な目で訴えた。
「それは出来ねぇな」
「……これは、もともと私たちのもの」
首に下げた勾玉を握り締めてファレル。
「それは存じ上げております。ファレル様。いえ、ベラルージュ王国第一王女ファレル・サドラー様。そして、リカルド様のことは、第一王子リカルド・サドラー様とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」
「気付いていたのか……!?」
リカルドは声を震わせる。
「いえ、服装のせいで最初は気付きませんでした。ですが、首から下げたそれを見て核心いたしました」
コトハは、ファレルが首から下げている勾玉を指す。
「メモリーキューブの解析ができないとアヤネから聞いたとき、もしやと思って調べたのですが、案の定でございました。
メモリーキューブの中には、その形状をキューブ以外の形に変えられるものが存在します。
ベラルージュ王家は『門の番人』として、そんなメモリーキューブを継承しつづけてこられました。
そのメモリーキューブはベラルージュ王家に伝わるものでございますね。
そして、メモリーキューブを本来の姿に変えられるのは、メモリーキューブを継承した者のみでございます」
「そうなのか?」
ユーリの質問にコトハは首肯をかえす。
「ベラルージュ王国が所有していたメモリーキューブの秘密を知ったドルドリア帝国は、極秘裏にお二人を捕らえ、移送していたのではありませんか?」
「だとしたら何だというんだ!」
リカルドは声を張りあげた。
「ここはドルドリア帝国領でございます。ふたたび拘束されてしまうのは時間の問題だと申し上げているのです」
「……その前に……これを処分すれば良いだけ」
ファレルは勾玉をぎゅっと握り締めた。
その時、四人を取り囲むように大勢の足音が近づいてくる。
一般人を押しのけながら姿をあらわしたのは、マシンガンを携えたアルスレーナ宇宙ステーションの守備隊たちだった。
「高速輸送艦タルタロスの艦長ユーリ・シュリックとその仲間だな! お前たちを拘束する!」
「何の罪でだよ」
やる気の無い半眼で質問をかえすユーリ。
彼らが口にした罪状は、驚くべきものだった。
「ドルドリア帝国交易船に対する海賊行為の疑いだ。大人しく拘束されるならば良し。さもなくば力ずくで拘束することになる!」
「何だよ、それ……」
ユーリは、呆れた表情を浮かべながら頬を掻いた。