惚気
惚気話ウザイ。と思ってたら浮かんできた話。
私は、いつもこの男の惚気話を聞かされる。
そんなに自慢したいものかと、呆れてきた。
「昨日、いきなり目の前に指を突きつけて、こう、くるーって動かしてみせたらさ、最初は驚いてたみたいなんだけど、指の動きをずっと目で追ってるんだよねー」
「ふーん」
何が楽しいのかわからないから、返事は素っ気ない。
だが、それもいつもの事なので、彼は気にしていないようだ。
こちらが、どんなに呆れていようと、わざと視線を外していようと、気にせずに話し続ける。
「それが、猫みたいでかわいいんだよねー。必死で悶えるのを堪えたよ」
「それは、大変だったね」
「いや、大変なのはその後だったよ。猫みたいに、狙い定めていたかと思ったら、いきなり、俺の指に噛み付くんだから。いやぁ、あれは流石に予測できなかった」
すごく楽しそうに、自分の人差し指についた赤い跡を見せてくる。
「ほんと、困るよねぇ。地味に痛かったし。でも、面白い反応だ」
心底、どうでもいい。
「でさ、俺が『なんで噛み付いたの?』って聞いたら、慌てて、俺の指から口を離して『いやっ、あの、つい・・・』って言いながら顔を真っ赤にしてるんだ。『へぇ、そんなに美味しそうだった?』って俺が言うと、俯いちゃったんだけど、耳まで真っ赤になってるのが見えて、可愛かった」
幸せそうに語り続ける。
どうでもいいので、適当に相槌を打ちながら、ケータイを弄り始めた。
「天然って怖いね。というか、むしろ本能って感じ?」
疑問文で問われても、困る。
きっと、彼は今、幸せという言葉を表すのに適した『いい顔』をしているのだろう。
実際に見ていないから、断言はできないが。
どうせ彼も、ただ話を聞いて欲しいだけなのだ。
視線を戻さないからといって、文句を言われることはないだろう。
そう、思っていた。
「ねぇ、聞いてる?」
そう、耳に息を吹きかけるような距離で囁かれる。
驚いて振り向くと、かなりの近距離に彼の顔があった。
視界に、いたずらが成功した子供のような表情が、アップで飛び込んでくる。
「それって、天然なの? さっきまで、興味ないって感じだったのに、俺の顔見た途端に真っ赤になって。計算だったら、すごく性格悪いよねぇ」
(誰だって、耳元で囁かれたら恥ずかしいだろ!)
そんな反論を脳内でするが、それは言葉にはならず、ただ口をぱくぱくと開閉するだけだった。
「君って、たまに予測できないことするよねぇ」
そんなことを言いながら、彼は私の口の中に人差し指を突っ込んでくる。
(あんたの行動の方が、予測できない!!!!)
いきなり突っ込まれた指に驚き、噛みそうになる。
「でも、そこが面白い! でも、恋人同士で、休日にソファーに隣り合って座っているのに、あんな素っ気ない態度とられたら、さすがの俺でもショックだよ?」
(あ、やばい。怒らせたかも・・・)
「せっかく、俺が君への愛について語ってあげたのにさ」
そう言って、昨日私の目の前でしたように、指を口の中でくるっと回す。
「でも、ちゃんと聞こえてたみたいで、耳が真っ赤だったからどうしてくれようと思ってたんだけどね」
私の視界に映ったのは、意地の悪い笑だった。
あー後半適当w
いつも思いつきで書いてます・・・。
というか、今回は長編の息抜きのつもりだったんだけど・・・。
むしろ疲れたかも、
お粗末様でした。