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彼女の願いを叶えるため、僕は神の使いになった  作者: 桐原悠真


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1/1

彼女の願いを叶えるため、僕は神の使いになった

彼女の願いを叶えるために、僕は神の使いになった。


それがどれだけ難しいことなのか、

そのときの僕は、まだ知らなかった。


ただ――


僕は、彼女に何もできなかった。


守ることもできなかった。

願いを叶えることもできなかった。


だから、今度こそ。


その願いを叶えるために、僕は神様に願った。


「どうか、もう一度だけ」


「今度は、彼女の願いを叶えさせてほしい」


その結果、僕は人ではなくなった。


人の願いを叶える存在――

神の使いとして、生きることになった。


――すべては、彼女の願いを叶えるために。

それだけを願って、僕はここにいる。


そこから、長い時間が流れた。

神と人の時間は違う。どれだけ経ったのかは、もうわからない。


僕は学び、鍛えられ、何度も失敗した。

数えきれないほど、失敗した。


それでも、やめなかった。


折れそうになったこともある。

それでも――続けた。


彼女のために。


ただ、それだけのために。

僕は、続けた。


彼女に、もう一度会うために。


今日は、初めての任務だった。


しかし、僕は失敗した。


叶えたはずだった。


それでも――

その人は、笑わなかった。


「違うんだ」


そう言われて、僕は何も言えなかった。


ただ、その人はそれでも


「ありがとう」


そう言ってくれた。


何人かの願いを叶えた。


そのたびに、僕はその人たちの前から消えた。


仲良くなった人もいた。

別れは、いつも辛かった。


いつか。


彼女の願いを叶えるときも。


出会えたとしても、

僕は――彼女の前から消える。


そして、もう二度と会えない。


僕は――

もう二度と会えないことに、耐えられるのだろうか。


いっそ、もう一度人として生まれ変わって、

彼女に会う方がよかったんじゃないか。


そんな考えが、何度もよぎる。


それでも。


何もできなかった、あのときの自分が――許せなかった。


だから、決めたんだ。


彼女の願いを、叶えると。


――それが、僕の答えだった。


ある日、神様が言った。


「君は、まだ彼女のことが忘れられないのかい」


「はい」


「そうか」


それだけだった。


そして、ある日――

僕に任務が与えられた。


たった一つ。

本当の願いを、叶えること。


そのために、僕は人間界に降りることができる。


ただし――


その願いを叶えたとき、

僕は神の国へ戻らなければならない。


そして。


僕は、彼女の前から消える。


――それでも、よかった。


時間は限られている。

辛いことになるかもしれない。


それでも、この任務を受けるか――と、神様は言った。


「受けます」


迷いはなかった。


そうして僕は、この神の国から

人間界へ降りることを決めた。


神様は、ほんのわずかに涙をこぼした。


「見守っている」


それだけを、静かに告げた。


気がつくと、僕は人間界へと続く扉の前に立っていた。


この先に、彼女がいる。


胸の奥が、静かに揺れる。


――会いたい。


その一言だけを抱えて、僕は扉に手をかけた。


ゆっくりと、開く。


光が差し込んだ。


眩しさに目を細める。


そして――


そこに、彼女がいた。


間違えるはずがない。


ずっと、会いたかった人だ。


「すみません」


僕は、声をかけた。


彼女は、少しだけ首を傾げる。


「……どちら様ですか?」


覚えていない。


それも当然だ。

僕が彼女に会ったのは、ずっと昔のことだから。


それでも――


会えて、よかった。


これで、君の願いを叶えられる。


――今度こそ。


彼女は、まだ知らない。


自分の願いが、これから叶えられることを。


そして――


そのあと、僕がいなくなることも。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


彼女の願いを叶えるために、すべてを選んだ主人公の物語でした。


何もできなかった過去があったからこそ、

彼はこの道を選びました。


それがどんな結末になるのかは、まだわかりません。


ただ――

彼は自分で選び、自分で進んでいきます。


この物語が、少しでも心に残るものになっていれば嬉しいです。

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