表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/13

8.新たな仲間との出会い(3)

シエラは、レオンを連れて街の外れへ向かった。


そこは、スラム街だった。


スラム街は、街の華やかさとは対照的だった。


汚れた建物、狭い路地、絶望した人々。


レオンは、自分の村が襲われる前を思い出した。


平和だった村と、この絶望的なスラム街。


どちらが、本当の世界なのか。


「ここだ」シエラは、ある建物の前で立ち止まった。


それは、古い酒場だった。


「ここに...?」


「ああ」シエラは頷いた。「ここには、様々な人間が集まる」


「その中に、お前が探している人間がいるかもしれない」


二人は、酒場の中に入った。


中は、薄暗く、酒とタバコの臭いが充満していた。


客たちは、疲れた顔で酒を飲んでいた。


レオンは、周囲を見回した。


その時、隅の席に座っている太った青年に目が留まった。


年齢は、レオンより少し上だろう。十八歳くらいか。


体格は良いが、その顔は暗く、目は虚ろだった。


レオンは、その青年に近づいた。


「あの...」


青年は、レオンを見上げた。


「何だ」


「あなた...何か、悩んでいますか?」


青年は、苦笑した。


「悩んでない人間が、この世にいるか?」


「それは...そうですが...」


「俺を放っておいてくれ」青年は言った。「俺は、もうどうでもいいんだ」


その言葉に、レオンは引っかかりを感じた。


「どうでもいい...?」


「そうだ」青年は答えた。「俺は、何の価値もない人間だ」


「弱くて、臆病で、何もできない」


「だから、もうどうでもいい」


レオンは、その青年の目を見た。


そこには、深い自己嫌悪があった。


「あなたの名前は?」レオンは尋ねた。


「...ボブ」青年は答えた。「ボブ・マローンだ」


「ボブさん」レオンは言った。「あなたは、本当に自分が無価値だと思っていますか?」


「思ってる」ボブは即答した。「事実だからな」


「でも...」


「聞きたいか?」ボブは自嘲的に笑った。「俺の惨めな話を」


レオンは頷いた。


ボブは、深く息を吐いた。


「俺は、商人の息子として生まれた」ボブは話し始めた。


「父は、有能な商人だった」


「しかし、俺は違った」


「俺は、臆病で、交渉が下手で、何をやっても失敗した」


ボブの声には、深い自己嫌悪が込められていた。


「父は、何度も俺にチャンスを与えた」


「しかし、俺は全て失敗した」


「そして、ついに父は言った」


「『お前は、もう息子ではない』と」


レオンは、胸が痛んだ。


「それで...今は?」


「街をさまよっている」ボブは答えた。「居場所がない」


「帰る家もない」


「生きる理由もない」


シエラが口を開いた。


「なら、死ねばいい」


「シエラ!」レオンは驚いて叫んだ。


しかし、シエラは続けた。


「生きる理由がないなら、死ぬべきだ」


「お前が生きていても、誰の役にも立たない」


ボブは、シエラを見つめた。


「...その通りだ」ボブは認めた。


「でも」シエラは言った。「お前は、まだ生きている」


「なぜだ?」


ボブは、答えられなかった。


「答えろ」シエラは迫った。「なぜ、お前はまだ生きている?」


「...分からない」ボブは呟いた。


「分からないなら、考えろ」シエラは言った。「そして、答えを見つけろ」


「答え...」


「そうだ」レオンも言った。「あなたは、何か望んでいるはずだ」


「諦めていないはずだ」


ボブは、黙っていた。


しばらくして、ボブは小さな声で言った。


「...強くなりたい」


「え?」


「俺は...強くなりたい」ボブは繰り返した。


「父に認められなくてもいい」


「誰かに認められなくてもいい」


「ただ、自分で自分を認められるくらい、強くなりたい」


その言葉に、レオンは微笑んだ。


「なら、一緒に来てください」


「え...?」


「俺たちと一緒に、訓練を受けましょう」レオンは言った。


「訓練...?」


レオンは、クロウのことを説明した。


ボブは、困惑した表情を浮かべた。


「でも、俺は...役に立たないぞ」


「役に立たなくていい」レオンは言った。「一緒に、強くなればいい」


ボブは、レオンとシエラを見つめた。


「本当に...俺でもいいのか?」


「ああ」レオンは頷いた。


シエラも、小さく頷いた。


ボブは、涙を浮かべた。


「...ありがとう」


ボブは、立ち上がった。


「行こう」


「はい」


三人は、酒場を出た。


帰り道、三人は黙って歩いていた。


レオンは、二人を見た。


シエラは、相変わらず冷たい表情をしていた。


しかし、その目には、少しだけ希望の光があった。


ボブは、まだ不安そうだった。


しかし、足取りは以前よりもしっかりしていた。


「俺たち...やっていけるかな」ボブが呟いた。


「分からない」シエラは答えた。「でも、やるしかない」


「そうですね」レオンも言った。


三人は、それぞれ違う理由で強さを求めていた。


レオンは、家族の仇を討つために。


シエラは、自分の居場所を作るために。


ボブは、自分を認めるために。


しかし、その目的が何であれ、三人は同じ道を歩むことになった。


それが、正しい選択だったのかどうか。


それは、まだ誰にも分からなかった。


しかし、一つだけ確かなことがあった。


この出会いが、三人の運命を大きく変えることになる。


そして、クロウの「教育」が、本格的に始まろうとしていた。


それは、三人が想像もしなかった、残酷で、しかし必要な教育。


友情を試し、信頼を壊し、そして真の強さを植え付ける教育。


灰色の空の下で、三人の物語が始まろうとしていた。


[読者への暗示]


森の奥深く、クロウは三人の帰りを待っていた。


彼の前には、魔法の水晶があり、そこには三人の姿が映し出されていた。


「完璧だ」クロウは呟いた。


「レオンは、復讐を求めている」


「シエラは、居場所を求めている」


「ボブは、承認を求めている」


「三人とも、違う動機で強さを求めている」


クロウは、満足そうに笑った。


「これで、競争が生まれる」


「競争が、彼らを成長させる」


「そして、その競争の中で、彼らの本性が暴かれる」


クロウの目には、冷たい計算があった。


「さあ、実験を始めよう」


「人間の本性を、徹底的に暴き出す実験を」


水晶の中で、三人は森に近づいていた。


彼らは、まだ何も知らなかった。


これから待ち受ける地獄を。


これから破壊される友情を。


これから直面する、自分自身の醜さを。


クロウは、水晶を消した。


そして、三人を迎えるために、小屋へと向かった。


森には、不吉な風が吹いていた。


それは、嵐の前触れだった。


三人の物語に訪れる、巨大な嵐の。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ