5.魔王の思惑
森の奥深く、クロウは一人で立っていた。
彼の前には、巨大な魔法陣が浮かんでいた。
それは、人間の魔法ではなかった。魔族の、いや、魔王だけが使える魔法陣。
「順調だ」
クロウは呟いた。
「少年の心は、確実に揺らいでいる」
クロウは手を伸ばし、魔法陣に触れた。 魔法陣が光り、映像が浮かび上がった。
それは、レオンが眠っている姿だった。
「価値観を破壊し、再構築する。これが、最も効果的な教育だ」
クロウの目には、深い虚無があった。 しかし、その奥底には、何か別の感情も宿っていた。
それは、哀しみだろうか。それとも、後悔だろうか。
「かつての私のように、甘い正義を信じて失敗する。そんな勇者は、もう要らない」
「真の強さを持つ者を育てる。そのためなら、私は悪役を演じよう」
クロウは魔法陣を消した。 そして、闇の中に溶けるように消えていった。
森には、静寂だけが残った。 しかし、その静寂の中に、何か恐ろしい計画が進行していることを、レオンはまだ知らなかった。
レオンの価値観は、確実に崩壊し始めていた。 それは、苦痛を伴う変化だった。
しかし、それが必要な変化なのか、それとも破滅への道なのか。 今はまだ、誰にも分からなかった。
灰色の空の下で、レオンの新しい人生が始まったばかりだった。
そして、その人生は、彼が想像もしなかった方向へと進んでいく。
それは、残酷で、しかし必要な物語。 師匠と弟子の、複雑な物語。
愛と憎しみが交錯する、究極の教育の物語。
それが、今、始まろうとしていた。




