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11.格差システムの導入(3) 最初の1週間

【一日目の夜】

レオンは、小屋の中でベッドに横になっていた。 しかし、眠れなかった。


窓の外では、シエラが毛布に包まって座っていた。 寒そうだった。


そして、森の奥からは、ボブがいる。 魔物に襲われないだろうか。


レオンは、立ち上がった。 窓を開けて、シエラに声をかけた。


「シエラ、中に入らないか?」


シエラは、振り返った。 「いらない」


「でも、寒いだろう」


「大丈夫だ」 シエラは強がった。 「これくらい、慣れている」


「でも...」


「お前の同情はいらない」 シエラは冷たく言った。 「私は、自分の力で上に行く」


レオンは、何も言えなかった。 シエラは、再び前を向いた。


レオンは、窓を閉めた。 しかし、胸の奥に、何かモヤモヤしたものが残った。


一方、森の中では、ボブが木の根元に座っていた。 彼は、震えていた。 寒さと、恐怖で。


「なんで、俺はこんな目に...」


ボブは、涙を流した。 しかし、泣いても何も変わらない。


「強くならなきゃ...」


ボブは、自分に言い聞かせた。 しかし、どうすれば強くなれるのか。 ボブには、分からなかった。


【三日目】

三日間で、既に変化が現れ始めていた。


朝の訓練で、クロウは三人に走り込みを命じた。 「森を三周しろ」


三人は、走り始めた。 しかし、すぐに差が開いた。


レオンは、一週間の訓練で体力がついていた。 シエラも、それなりについていけた。 しかし、ボブは、すぐに遅れを取った。


「待ってくれ...」 ボブは叫んだ。


しかし、レオンとシエラは、振り返らなかった。 いや、振り返れなかった。


クロウの命令は、「三周しろ」だった。 「一緒に三周しろ」ではなかった。 つまり、各自のペースで走ればいい。


しかし、それは同時に、遅い者を待つ必要はない、ということでもあった。


ボブは、一人取り残された。 彼は、必死に走り続けた。 しかし、体力がない。息が上がる。足が痛い。


「くそ...くそ...」


ボブは、悔しさで涙が出た。 しかし、走り続けるしかなかった。


一時間後、ボブはようやく三周を終えた。 レオンとシエラは、既に次の訓練に移っていた。


クロウは、ボブを冷たく見た。 「遅い」


「すみません...」


「謝るな」 クロウは言った。 「謝っても、何も変わらない。ただ、結果を出せ」


ボブは、うなだれた。


昼食の時間。

レオンには、パン、肉、野菜のスープが与えられた。 シエラには、パンと薄いスープだけ。 ボブには、硬いパン一切れだけ。


三人は、別々の場所で食事を取った。


レオンは、自分の豪華な食事を見て、罪悪感を覚えた。 シエラとボブは、もっと少ない食事しか与えられていない。


しかし、クロウの命令で、食事を分け合うことは禁止されていた。 「各自に与えられた食事は、その者だけのものだ」 「他人に分け与えることは、許さない」


レオンは、食事を口に運んだ。 しかし、味がしなかった。


一方、シエラは、少ない食事を見つめていた。 「これが、Bランクの食事か」


シエラは、屈辱を感じた。 しかし、同時に、怒りも感じた。 「絶対に、Aランクになってやる」 シエラは、決意を新たにした。


ボブは、硬いパンを噛んでいた。 しかし、あまりにも硬くて、噛み切れなかった。


「こんなの...」


ボブは、パンを地面に投げ捨てたくなった。 しかし、それしか食べ物がない。 ボブは、涙を流しながら、パンを噛み続けた。


【五日目】

五日目の夜、事件が起きた。 ボブが、森で魔物に襲われたのだ。


ボブの悲鳴が、森中に響いた。 「助けてくれ!」


レオンは、小屋から飛び出した。 シエラも、立ち上がった。 二人は、森へと走った。


森の中で、ボブは巨大な狼型の魔物に追い詰められていた。


「ボブ!」 レオンは叫んだ。


レオンは、剣を抜いて魔物に向かった。 シエラも、短剣を構えた。 二人は、魔物と戦った。


激しい戦闘の末、何とか魔物を倒した。 ボブは、地面に座り込んで震えていた。


「大丈夫か?」 レオンは尋ねた。


「ああ...ありがとう...」 ボブは答えた。


その時、背後からクロウの声が聞こえた。 「何をしている」


三人は、振り返った。 クロウが、冷たい目で三人を見ていた。


「魔物が...ボブを襲ったので...」 レオンは説明した。


「それで?」


「それで...助けました」


「なぜだ?」 クロウは冷たく尋ねた。


レオンは、困惑した。 「なぜって...仲間だから...」


「仲間?」 クロウは冷笑した。 「お前たちは、仲間ではないと言ったはずだ」


「でも...」


「お前たちは、競争相手だ」 クロウは断言した。

「ボブが死ねば、お前たちの順位は安泰だ。なぜ、助ける?」


レオンは、言葉を失った。


クロウは、続けた。 「お前たちは、甘い」

「本当に強くなりたいなら、他人を切り捨てる覚悟が必要だ」

「それができないなら、お前たちは弱者のままだ」


シエラは、唇を噛んだ。 クロウの言葉は、あまりにも冷酷だった。 しかし、間違っているとは言い切れなかった。


「では」 クロウは宣言した。 「罰を与える」


「罰...?」


「お前たちは、命令に背いた」 クロウは言った。


「各自、自分の寝床にいるべきだった。しかし、お前たちは勝手に動いた。だから、罰だ」


クロウは、レオンに言った。 「レオン、お前は明日、食事抜きだ」


「え...」


「シエラ、お前は明日、訓練時間を二時間延長する」


「ボブ」 クロウは、震えているボブを見た。

「お前は、何の罰もない。なぜなら、お前は助けられただけだからだ」


三人は、言葉を失った。


クロウは、背を向けて歩き出した。 「各自、寝床に戻れ」


三人は、黙ってそれぞれの寝床に戻った。 しかし、その夜、三人とも眠れなかった。

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