10.格差システムの導入(2)
森の中の広場に、三つの的が設置されていた。
「剣で、的を切れ」クロウは命令した。
「一人ずつ、十回切る」
「命中した回数で、剣技のランクが決まる」
レオンは、剣を構えた。
クロウから訓練を受けていた彼は、ある程度の自信があった。
レオンは、的に向かって剣を振るった。
一回目、命中。
二回目、命中。
三回目、外れた。
最終的に、レオンは十回中七回命中した。
「次、シエラ」
シエラは、剣を受け取った。
彼女は、盗賊団で基本的な戦闘訓練を受けていた。
しかし、それは剣術ではなく、短剣術だった。
シエラは、不慣れな長剣を振るった。
十回中、三回しか命中しなかった。
「次、ボブ」
ボブは、剣を受け取った。
彼の手は震えていた。
ボブは、剣を振ったことがなかった。
商人の息子である彼は、戦闘訓練など受けたことがない。
ボブは、必死に剣を振るった。
しかし、十回とも外れた。
一度も命中しなかった。
クロウは、無表情で記録を取っていた。
「次は、体力テストだ」
クロウは、三人に重い丸太を渡した。
「これを、あの木まで運べ」
クロウが指差した木は、約百メートル先にあった。
「一番早く運んだ者が、高評価だ」
レオンは、丸太を持ち上げた。
重い。しかし、一週間の訓練で鍛えられた彼は、何とか運べた。
レオンは、三分で木に到達した。
シエラは、細身だったが、意外と力があった。
盗賊団での生活で鍛えられていたのだろう。
シエラは、四分で到達した。
ボブは、丸太を持ち上げることすらできなかった。
「持ち上がらない...」ボブは呟いた。
「なら、引きずれ」クロウは冷たく言った。
ボブは、必死に丸太を引きずった。
しかし、あまりにも遅かった。
十分かかって、ようやく到達した。
次々とテストが行われた。
走力、跳躍力、知識、判断力。
全てのテストで、結果は同じだった。
レオンが一位、シエラが二位、ボブが最下位。
夜になり、クロウは三人を集めた。
「では、ランクを発表する」
三人は、緊張して待った。
「Aランク、レオン」
レオンは、複雑な気持ちだった。
一位は嬉しい。しかし、これから何が起こるのか、不安だった。
「Bランク、シエラ」
シエラは、唇を噛んだ。
二位。悔しい。しかし、予想通りだった。
「Cランク、ボブ」
ボブは、頭を垂れた。
予想通りだった。しかし、それでも辛かった。
「では、ランクに応じた待遇を説明する」クロウは言った。
「Aランクは、小屋で寝る権利がある」
「食事は、一日三回」
「訓練時間は、一日八時間」
レオンは、今までと変わらないと思った。
しかし、次のクロウの言葉に驚愕した。
「Bランクは、小屋の外で寝る」
「食事は、一日二回」
「訓練時間は、一日十時間」
シエラは、顔色を変えた。
「外で...寝る...?」
「そうだ」クロウは頷いた。「小屋は、Aランクだけのものだ」
「それは...」
「不満か?」クロウは冷たく尋ねた。「なら、Aランクになればいい」
シエラは、何も言えなかった。
「Cランクは」クロウは続けた。「森の中で寝る」
「食事は、一日一回」
「訓練時間は、一日十二時間」
ボブは、絶望した。
「森の中...?」
「そうだ」クロウは言った。「魔物がいるかもしれないが、それも訓練だ」
「そんな...」
「嫌なら、Bランク以上になればいい」クロウは冷酷に言った。
三人は、言葉を失った。
これが、クロウの言う「区別」だった。
そして、これから始まる地獄の序章だった。
「では、各自、自分の寝床に行け」クロウは命令した。
レオンは、小屋に入った。
シエラは、小屋の外、軒下に毛布を敷いた。
ボブは、森の中へと歩いていった。
その背中は、あまりにも小さく、弱々しかった。




