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【前編】 読まない感想が壊すもの

1.AI感想が増えた時代に


AIに作品を読ませ、AIに感想を書かせ、自分は中身を見ずにコピペして送る。

時間にして二、三分。――あなたは、どう思いますか?



最近、AIを使って感想やコメントを書く人が急増している。

その文章は整っていて、語彙も豊かで、まるで芸術のように美しい。

普通の読者には書けないような、耳触りの良い、優しい褒め言葉が並ぶ。


私は、それ自体を悪いとは思わない。

「うまく感想が書けないけれど、ちゃんと伝えたい」――

そんな人がAIの助けを借りて言葉を整えるのは、むしろ相手への誠意だと思う。

そこには**“読んだ時間”と“伝えたい気持ち”**がちゃんとある。



しかし、問題は“心を通さない利用”だ。


AIに作品を読ませ、AIに感想を書かせる。

そして、自分は“ちょい見”か――あるいは中身も見ずにコピペする。


――それはもう、感想ではない。


もちろん、どこかに「相手を応援したい」という気持ちはあるのかもしれない。

けれど、もしそれが、ただ“恩返し”の文化を利用して、

自分の作品を読ませたいだけなのだとしたら――。


その行為は、まじめに恩を返そうとする人の、

気持ちと時間を裏切っている。


そして、それを分かっていながら、

AI感想を量産しているのだとしたら――。


あえて、辛辣な言葉で、個人的意見を言わせてほしい。

――それは、誠実さを失った、醜い行為だと。


2.読むという行為は、時間を渡すこと


誰かの作品を読むとは、

その人のつくった世界を、同じ速度で歩くことだ。

一行ごとに心を動かし、

ときに立ち止まり、

ときに息を詰めて続きを追う。


そして、「伝えたい」と思った瞬間に初めて、

感想という“言葉の手紙”が生まれる。


だからこそ、本当の感想とは、

**「読者が自分の時間を差し出した証」**だ。


AI感想の量産が増えるということは、

その“証”がテンプレートに置き換えられていくということ。

――そして、その“証”が、テンプレートの山に埋もれていく。


つまり、真面目に読んでくれる人たち――

お粗末で、へたくそな感想しか書けない。

それでも、何度も書き直し、何度も読み返し、

送る前に、何度も何度も躊躇して、

勇気を出して、やっとの思いで「伝えたい」を送った人たちの、

その誠意と努力の価値が、軽く扱われてしまうということなのだ。


3.“恩返し”の文化と、壊れていく信頼


Web小説の世界には、昔からある美しい習慣がある。

「感想をもらったら、相手の作品を読みに行く」。

それは義務ではなく、心の往復だった。


だが、AIによる量産感想が増えると、その信頼関係は静かに壊れていく。


AIが書いた「素晴らしい作品でした!」

誠実な人が「ありがとう」と思って読み返す。

けれど、相手はそもそも読んでもいない。


その瞬間、「言葉を信じる文化」が崩れる。

――「相手を信じる心」が壊れる。

そして、善意で繋がっていた読者たちの関係も、静かに軋みはじめる。


もし、AIに読ませてAIが書いた感想に、

同じようにAIで書いた感想を返すのなら――それならいい。

機械と機械が褒め合うなら、まだ筋は通っている。

誰も見ていない場所で、二つのCPUが、飽きるまでやっててくれればいい。


だが、そこに人間の誠実を混ぜてはいけない。


感想とは、“読むという感謝”の延長線にある。

読まないのに書くというのは、

「感じていないのに、感じたふりをする」こと。

それはもう、読者を装った“模倣者”だ。


だから、少しでも誠実さが残っているのなら――一つお願いがあります。


『私は読んでいません。この感想は全部AIです。

 だけど、どうしても応援する気持ちを伝えたくて!』

――最後にこれをつけてほしい。


それなら、まだ人を騙してはいない。

誠実とは、嘘をつかないことよりも、

“感じなかったことを感じたふりをしない”ことだと思う。



AIに読ませAI感想を送る――それは“読むという祈り”の冒涜だ。

けれど、いまや誰もがAIを使う時代に、その線引きはどこにあるのか。


「どこまでが誠実で、どこからが模倣なのか」

「AIの言葉と、人の言葉は、どう違うのか」


――その答えを探すために、

次は「AIと人間の感想の違い」について、少しだけ深く見ていきたい。


感情で読む人間と、構造で読むAI。

そして、“本気で読む”という誠実のかたちとは――。


(→後編『読むという誠実、そして祈り』につづく)

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なんか感想を送るのが、壮大な行為のような感じに思えてきました。 私、深く考えずに感想を送っていて申し訳ない気分です……。 (。ŏ﹏ŏ) 書き直しも読み返しも躊躇も無く送っていたので少し反省。 (´;…
すっとぼけん太様 ていねいな返信と解説をありがとうございます。 くろくまくん様、体験談ありがとうございます。 ・なるほど、私には 想像もつかなかったAIの使い方をされる方がいるのですね。 最近は…
「読んでないけど感想を送りますのでよろしく。今後もあなたの作品読むことはありませんがあなたは私の作品を読んで評価してください」  さすがにこんなことを素直に言うのも馬鹿にしているでしょう。冗談でもない…
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