小精霊
「あぁ!頭など下げなくてもいいよ。娘を助けてもらったんだからね。エラというんだ。エラ、練習の成果を見せてあげなさい」
「はい、おとうさま。せいれいさま、おはつにおめにかかります。えらともうします」
そういうと、少女改めエラちゃんは片足を後ろに置き、膝を軽く曲げて挨拶をしてくれた。カーテシーだ。アニメなんかで見ることはあったけど、さすがに目の前で見るのは初めてだ。私も自己紹介しようか。
「それじゃあ私も。異人で精霊種のルピナスです。シモンさん、エラちゃん、よろしく」
私もかわいいからカーテシーしようと思ったけど、やったことないしそもそも袴でできるわけないので日本式のお辞儀でご挨拶。袴でのあいさつの仕方ってあるのかな?せっかく作ってもらったんだしちゃんとしたいところではある。暇な日を見つけて勉強しよう。
「うん、よくできてるよ。お母さんに報告してあげなさい。・・・改めて、よろしく頼むよ。精霊にあうのは初めてなものでね。少し緊張してしまう」
「精霊って珍しいの?」
「ちゃんとした人型の精霊など、ここ100年くらい発見報告はないね。見つかる精霊も小精霊がほとんどだ。あ、出てきたよ。湖を見てみるといい」
そういわれたので湖に目を移す。今はまだ何も見えない・・・いや、湖の中から何かが出てくる?それもたくさん、数えられないくらい。やがて湖全体が光り輝いてるような錯覚を感じるくらいになった。
「さぁ、姿を見せておくれ」
最初に一つ、光の玉が出てきた。見ると安心するような優しい緑色の光だ。後ろには小さな羽らしきものがついている。
それをきっかけにして湖のいたるところからそれが出てくる。あっという間に湖は上から下まで光の玉で埋め尽くされた。そのまま一部が上空へ消えていき、さらにもう一部が周りで見ている人に吸い込まれる。
おそらく光の玉が小精霊だろう。だけど人々に吸い込まれていくのは一体?
「驚いたかい?一部の小精霊が人の体に吸い込まれているのがわかるかな?あれは小精霊が病や怪我を吸収してくれているんだ。なぜ吸収してくれるのかはわからないけどね。僕の妻も少し前から体調を崩しているから、今日はここに来たんだ。普段だったら来ないんだよ。なんせ仕事が溜まってるからね!」
仕事が溜まっているのは時々街に出てきて遊んでいるからでは?いや、それにしても小精霊はすごい。さっきまでよぼよぼだったおじいちゃんが元気に走ってる。あれは病とか怪我とかそういう問題じゃないと思うんだけど。
「さて、ルピナス嬢はこれからどうするんだい?よければ精霊について話を聞きたいんだ「おとーさん!おかーさんが!おかーさんが!」っどうした!?」
お母さんのもとに行っていたエラちゃんが泣きながら駆け寄ってくる。シモンさんが泣いているエラちゃんから事情を聴こうとしてるけど、まだ幼いエラちゃんは泣いてばかりで話ができなかった。そのうちに騎士さんが走ってやってくる。
「失礼します!ご領主様、奥様が・・・」
「なに?すまないルピナス嬢。話を聞かせてもらいたかったのだが、それどころではなくなってしまった。また後日時間をいただけないだろうか?」
「大丈夫。何か手伝えることはある?これでも結構戦えるよ」
「・・・いや、うん、そうだな。申し訳ない。よければついてきてほしい。おい、案内してくれ」
「ハッ!」
さて、何があったのやら。




