墓場を統べるもの1
─オオっ!─
「ハアッ!」
広場に入ると同時にリッチが地面に手をあて、何かを行使しようとする。おどろおどろしいオーラが出ていたが、そこにリーゼが剣を構えて攻撃、リッチの行動を阻害し、そのまま近接戦に持ち込む。多分〈死霊術〉を使おうとしたんだろう。アンデッドは地面から出てくるのがお約束みたいにとこあるし。
そのままリーゼは離れることなくリッチに攻撃をし続ける。リッチはスキル構成的に後衛型だ。多分配下としてゾンビやスケルトンを召喚。そいつらに削らせて後ろで指揮するみたいな戦い方をするんだろうけど、リーゼはそれを許さない。徹底的に距離を近づけて、〈死霊術〉を使う暇を与えない。
「リス・ピーピン・アウ・シン・ヅツ」
その合間に、私が初めて見る魔法を膝裏や背中に当てて攻撃をする。土属性の魔法だ。質量があるからリッチも魔法を受けるたびにバランスを崩してる。そのすきをリーゼは見逃さず、腕関節に剣をたたきつける。
今までのゾンビだったら今の一発で腕を落とせていただろう。しかし落ちていないのは、リッチがボスであるという理由以外にも、リッチが想定外に近接戦も強いからだ。
リーゼの剣に合わせて何かのスキルで光っている手を当ててはじいている。攻撃をうける際は関節以外で受けているように見える。だからリーゼも腕を落とせなかった。
「リス・ピーピン・アウ・シン・ヅツ」
─オオッ!─
しかしリーゼにはさすがに敵わないようだ。恐らく〈オーラ〉だろうスキルでリーゼを弾き飛ばし、距離を取ってにらみ合いに。すぐ地面に手をつけ〈死霊術〉を使おうとしないのは、最初みたいに突っ込んでこられるとまた接近戦になって同じようにしなければならないからだろう。
「リス・ピーピン・アウ・シン・ヅツ」
─オオッ!─
しかしリーゼには魔法がある。さっきまでと同じ魔法をリッチに当てて挑発。再度接近戦に持ち込む。
今のところは完封だ。リッチは頼みの綱である〈死霊術〉を使えず、接近戦で有利に立つこともできない。しかし、リーゼも有効打が与えられていない。リッチは〈HP自動回復〉で体力を回復するし、近接戦も弱いわけじゃない。いつかどちらかに綻びが生まれるだろう。
「リス・ピーピン・アウ・シン・ヅツ」
そしてそれは、システムじゃなく生の人間が操っているリーゼのほうが早い。
どうしよう、私も戦闘に参加すべき?このままだとリーゼのほうが先に限界が来る。種族が人間のリーゼではMPも回復しないから魔法も無限に撃てるわけじゃない。
・・・いや、リーゼが完封するといったのだ。なら、私は信じて待つだけだ。頑張って、リーゼ。




