腐臭漂う森の墓場3
思い返してみれば、リーゼの戦いを詳しく見るのはもしかしたら初めてかもしれない。初めて一緒に戦ったハティ戦の時の私は、魔法を創っていてリーゼの戦闘をよく見れていなかった。
その後に一緒に行動しているときも、私が見敵必殺するかリーゼが一発だけ受けてそのあと私がワンパンという形が全部で、まともにリーゼが戦っている姿は初めて見る。
墓地に入ってからすでに1時間ほど。敵はアンデッド・プライマルディアーだけでなく、アンデッドの代名詞であるゾンビやスケルトンも出てくるようになった。しかもペアで。
フレッシュゾンビ レベル:23
スキル〈感染〉〈ゾンビパウダー〉〈執念〉〈HP自動回復〉〈腐った体〉
〈筋力強化〉レベル:30〈耐久強化〉レベル:30
ブリトースケルトン レベル:28
スキル〈執念〉〈威嚇〉〈闇霧〉〈HP自動回復〉〈骨の体〉
〈剣術〉レベル:30〈脱水耐性〉レベル:30
こいつらの強みは耐久力と、それを活かした耐久戦だ。こいつらは〈執念〉というスキルのおかげで、特定の部位を破壊されない限り死なない。たとえ足を切り落とそうが首を落とそうが変わらずこちらを攻撃してくる。
そしてこいつらの特定の部位は頭だ。執拗に守ってくるのでなかなか倒れない。そしてその耐久力をさらに強くするのが、フレッシュゾンビの持つ〈ゾンビパウダー〉だ。
このスキルは風によってばらまかれる毒素を分泌するのだ。そうして〈ゾンビパウダー〉によってこちらが死ぬまで、頭を守り耐久し続ける。というのが基本戦術らしい。
実際これをされるとかなりきつかった。・・・過去形な通り、これについては対策法がわかっている。それは初めてリーゼと一緒に冒険した日に創った『風よ、真空の鎧となり我を守れ』。これを唱え続けることで、毒を吸わなくても戦えるようになっている。
そんなわけで注意することはなく、私がやることと言えば魔法の維持くらいである。そんなわけでリーゼの戦闘をよく見ているのだが、リーゼの戦いは、なんというか強いという感想より巧いという感想が出てくる。
例えば今もそう。敵が3体で向かってきてるんだけど、リーゼは囲まれないように位置取りを細かく変える。敵が横に広がるたび自分も動いて敵が自分に向かって一直線に進んでくる状況を維持することで、3対1じゃなく1対1を三回続けるように工夫している。
あと魔法の使い方も。私の場合大抵ワンパンだから頭しか狙ってないんだけど、リーゼは短い魔法を膝裏とか肘に当てて注意をそらして、その間に剣で頭をたたき切る。こういう工夫は私も見習いたい。より自分が有利になるような、そんな戦い方。
本当に、こうやってリーゼの戦いを見てると、リーゼが最上位勢なんだってわからされる。いまリーゼが私と一緒に冒険してくれてるのは、リーゼがした失敗の罪滅ぼしでしかない。そりゃ多少一緒にいたから仲は良くなっているだろうけど、私の周りが安全だってなったら、リーゼはまた配信を再開して、最上位層に戻ってしまうだろう。
リーゼが何を決意していたかはわからないけど、これが最後の冒険かもしれない。そう思うと、なんだか泣きたくなってしまう。・・・私、友達に依存するタイプだったのか・・・。




