リーゼの決意
ルピナスのことを考えたら、このダンジョンの攻略はあきらめるべきだと思う。でも、それはいやだった。これは私の自分勝手な感情だけど。
ルピナスの【魂の収穫者】という状態は、倒した敵のステータスやスキルを収穫し自分のものにできるらしい。はっきり言ってチートだと思う。聞く限りスキルは30前後まで増えているし、ステータスも現状ではありえない程に高い。少なくとも、今の私ではどうあがいても勝てないと思う。
知力は少し低いらしいが、そんなの誤差だろう。〈真髄〉で火力はあげられるし、他にもバフをかけられるスキルを持っているそうだし。
そんな彼女なら多分、パーティーメンバーなんて必要ないと思う。本人が気づいているかはわからないが、すでに最上位勢の耐久を上回っているのだ。魔法を撃って、圧倒的な耐久力で攻撃をうけて、また魔法を放つ。これだけでいい。一人で前衛と後衛を両立できるルピナスは、たった一人で完結している。
そんな彼女が私と一緒にいてくれるのは、彼女が優しいからだ。私の失敗を許してくれて、今でも私と遊んでくれている。自分でもこれどうかなと思いながら打ったチャットにも優しく返信してくれた。
私がルピナスと一緒にいるのは過剰な勧誘対策となっているが、本当はこれだっていらないのだ。トップクランである『攻略し隊』のリーダーに顔を覚えられていて、『魔法研究会』のメンバーと仲が良く、トカゲ種の反乱では圧倒的な力を見せつけた。馬鹿をすればあれが自分に向かってくるかもしれないのだ。そんなのごめんだろう。誰だって生きたままマグマに飲み込まれたくはない。
これがルピナスの現状だ。すでに勧誘なんてされてないだろうし、私と一緒にいる意味はない。それでも一緒にいてくれるのは彼女が優しいからだ。
でもそんなのごめんだ。我がままだけど、優しさだけで一緒にいてほしくはないのだ。彼女に頼ってほしい。もっと、一緒にこのゲームをプレイしてほしい。
だから私は、このダンジョンの攻略をやめたいというルピナスを引き留めた。私もあなたと一緒に戦えると。もっと、私を頼ってほしいと、そう伝えるために。
これは私のわがままだ。失敗したらルピナスの身体は腐るし、私も初デスペナルティをうける。失うものはルピナスのほうが大きい。それでもついてきてくれたのだ。信じるといってくれたのだ。
だから、見ていてください。私もはあなたの荷物ではありません。一緒に戦える仲間だと、そう証明して見せますから。




