腐臭漂う森の墓場1
「・・・行きましょうか」
「そうだね・・・」
二人そろっていやな顔をしているのは間違いないが、それはそれとしてこの場所は気になる。だって普通山の中に墓地なんてないだろう。どう考えてもダンジョンとか何かしらのイベントに関係している。ならば見に行きたい。
墓地の道を作っている石畳の上に脚を一歩落とす。それと同時に、トカゲの巣ダンジョンに入った時と同じような切り取られたような感覚があった、間違いない、ダンジョンだ。今の感覚に不思議そうにしているリーゼにも教えてあげよう。
「リーゼ、ダンジョンだよここ」
「あ、じゃあ今のが入った時の感覚でしたか。気を引き締めていきましょう」
「うん」
墓地の中はいたるところにお墓が建てられていてなんだか不気味だ。袴を着ていても心なしか肌寒く感じる。
「ルピナス、敵です」
そういうリーゼの前には一匹のプライマルディアー。だけど何か様子がおかしい。ボーっとしてて、こちらを見ているような見ていないような、そんなよくわからない目をしている。
アンデッド・プライマルディアー レベル:28
スキル〈鋭角〉〈俊足〉〈威嚇〉〈鳴き声〉〈腐った体〉
〈HP最大値増強〉レベル:5〈脱水耐性〉レベル:5〈状態異常耐性〉:10
名前はアンデッド・プライマルディアー。においの原因はこいつらしい。現れた瞬間、生ごみの匂いがより強烈になった。リーゼもなるべく近づきたくなさそう。
「私がやるね。『燃え盛る炎よ、矢を模り敵を貫け』」
「ありがとうございます」
炎の矢は頭にヒット。ゾンビには火属性でしょってことでこの魔法を選んだ。実際よく燃えているようで、数十秒もすればアンデッド・プライマルディアーは死んでいた。元々死んでいるという話は置いといて。
≪アンデッド・プライマルディアーの魂を収穫しました≫
≪アンデッド・プライマルディアーのステータスを一部収穫しました≫
≪アンデッド・プライマルディアーのスキル〈鋭角〉を収穫しました≫
「いたたたたたた!?」
えっ、何!?いつものように収穫完了のメッセージが来たと思ったら頭にとんでもない激痛が走った。内側から何かが食い出てくるような感覚。トカゲの巣ダンジョンで使った音を集める魔法とは系統が違うけど比べものにならない。
「ふぅ、ふぅ・・・収まった。リーゼ、何が・・・リーゼ?」
「あの、その頭・・・」
それにしても痛い。何か異物感がある。頭というか側頭部?ちょっと触ってみて・・・ん?硬い。何か硬いものが側頭部に張り付いてる。
「ルピナス、落ち着いて聞いてください。・・・あなたの頭から、さっき倒したプライマルディアーの角が生えてきました」
・・・え?




