山の中
第2の町の北東側、トカゲの巣ダンジョンの真反対は山であった。木はフォレストウルフの居た森よりも木が太くて長く、密度も高い。足場も多少不安定だ。道もないし、登るのは結構大変そう。
プライマルディアー レベル:18
スキル〈枝角〉〈俊足〉〈威嚇〉〈鳴き声〉
〈HP最大値増強〉レベル:5〈筋力強化〉レベル:5〈脱水耐性〉レベル:5
時々木の裏からにゅっと生えてくるプライマルディアーにはビビらされる。とはいえ攻撃力は私たちに通らないくらいなので、リーゼが受けて私が魔法を当てて終わりだけど。
しかし山かぁ。さっきまでいた池みたいなのより、自然の雄大さを見せつける様な滝とか、秘境の地に群生する綺麗な花とか、そういうのを期待してしまう。特に滝が見てみたいな。私山に行ったことないから、滝を見たこともないんだよね。それに滝なら音がするだろうからわかりやすいし。
「ルピナス、こっちです。手をどうぞ」
「ありがと。滝とかないかな?」
「私も滝は見たことないですね・・・。うん、見てみたいです。頑張って探しましょう」
リーゼも滝は見たことないんだ。まぁ山なんて登る機会ないだろうしね。山以外で見れそうな滝なんてあるのかな?・・・わかんないな。比較的有名な日本三大名瀑の那智滝、華厳滝、袋田の滝も山の中にあったはずだし。
それにしてもリーゼがいてくれて助かった。不安定な足場の中で比較的安定している場所を見つけてくれるし、遅れないように声掛けしてくれるし、たまに手も引っ張ってくれる。私も何かお返ししたいんだけど難しい。プライマルディアーに魔法を撃つくらいしかできてない。
そんなことを考えながら歩いていると、何か変なにおいがすることに気付いた。なんというか・・・捨てるのを忘れて放置された玄関の生ごみを少し薄くしたのと同じ匂いがする。あの匂いはすごい。しばらく鼻に残って離れないし、動かすだけで腐臭が舞う。
「リーゼ、変なにおいしない?」
「そうですか?・・・言われてみれば、そんな気が・・・」
「するよ。捨て忘れた生ごみの匂い」
「・・・?」
え、なんでわからないんだ。まさか生ごみを捨てるのを忘れたことがないと?そんな人間がいるのか。私は一か月で三回くらい忘れるのに。
「生ごみの匂いはともかく、確かに変なにおいがします。行きますか?」
「行きたい」
匂いがするのはこの先だ。正直臭いけど、何か新しいイベントが始まるかもしれないと考えたら行くしかない。臭いけど。リーゼも納得してくれたし、このまま進もう。
そうしてプライマルディアーを退けながら歩くこと数十分。匂いがかなりきつくなってきたころ、匂いが発生していると思われる墓地を発見した。
・・・あの、滝とか花畑を探しに来たのに、なんでこんなとこにいるんですかね。
・・・私がいらん冒険心を出したからか。臭い。正直きつい・・・。




