〈炎の吐息〉
「『土よ、縄を模り敵の四肢を拘束せよ』」
土属性で動けなくしてから魔法を撃つ。最初に魔法を撃たれた時点で火吹きトカゲは私のことを敵と認識したようだけど、もう遅い。
「『水よ、圧によって矢を模り敵を貫け』」
相手がおそらく火属性ということで水属性の魔法をチョイスした。大体こういうゲームだと火は水に弱いので。
しかしそんなことはなかったのか、それとも私の知力が足りなかったのか、火吹きトカゲはまだ生きていた。〈真髄〉もそこそこ強めに使ったのに。
「ふふ、火吹きトカゲは一見火属性に見えるんですけど、ただ火を吹けて赤いだけなんです。初見はみんな引っ掛かりますよ。ちなみにこのゲームに属性相性はありませんね。もちろん火が水に弱いみたいな自然現象はありますが、それも絶対的なものではないです」
紛らわしいな!引っ掛かっているのが私だけじゃないのが救いだ。
頭に魔法を当てられた火吹きトカゲから赤いオーラが出てくる。火吹きトカゲの色よりもずっと薄い赤だけど、なんとなく目の前の火吹きトカゲの圧が強くなったような。これが〈怒気〉?
「あ、怒っていますね。あの赤いオーラが怒気です。瀕死の証拠でもあるので、これが出た後油断して負ける人が結構います」
そうなのか。まぁ目の前の火吹きトカゲはいまだに拘束から抜け出せていないので、油断も何もないが。
「『水よ、圧によって矢を模り敵を貫け』」
≪火吹きトカゲの魂を収穫しました≫
≪火吹きトカゲのステータスを一部収穫しました≫
≪火吹きトカゲのスキル〈炎の吐息〉を収穫しました≫
≪〈知力強化〉のレベルが上昇しました≫
≪〈MP最大値増強〉のレベルが上昇しました≫
【スキル】炎の吐息
火属性の息を吐き攻撃できる。放つ際はHPをレベル分使用する。
火吹きトカゲはそのまま、火を吹くこともできずに倒された。ステータスで収穫したのは耐久がプラス2、スキルは〈炎の吐息〉。私は使えなさそう。今吹いてみた限り、射程が1mくらいしかない。
多分火吹きトカゲの主な戦法は、〈炎の吐息〉で自傷して〈怒気〉を能動的に使うのが中心なんだろうな。今回は哀れなことに、その名を冠する火を吹くことさえできていなかったが。
「ふ、ふふ・・・くっ・・・」
「・・・なんで笑うの」
「ごっ、ごめんなさっ・・・ハハッ・・・頑張って火を吹くルピナスが面白くて・・・フフッ・・・しかも短い・・・ッ」
・・・そんなに滑稽だったかな。自分じゃよくわからない。今度お姉さんにでも見てもらおう。・・・別にいじけてない。
「・・・先に行くからね」
「フフッ・・・ま、待ってくださいっ・・・ヒッ・・・ツボに入って・・・ハハッ」
「知らない」
くそう。私もリーゼのこと笑ってやりたいのに、笑えそうなネタがない。・・・今度一発ぎゃぐでも無茶ぶりしよっかな。私だけ笑われるのは、なんか癪だし。




