魔法の創り方
─ピィーピィーピッピッ─
聞いてほしい。私はそこまで頭がいいわけではないのだ。イベントが始まってからの私の惨状を思い出してくれればわかるだろう。
注意事項をよく読まずリーゼと離れ離れになり、説明書をよく読まずにテントを張りだし、海中では話せないという当たり前すら忘れ魔法の詠唱をしようとして溺れかけた。
そんな私が、イベント中は教本がないから魔法が作れないなんてことに気付くことができると思うだろうか?答えは否である。気づくわけない。
それに気付けるなら私は、無駄にステータスを切りよく揃えるなんてことはせずに、もっとたくさん必要になりそうな魔法を創っていたことだろう。
─ピッピッピィーピ!─
─ピッピッ!ピピ!─
しかしちょっと待て。まだ慌てるような時間じゃない。
今更だが、このゲームで魔法を創るにはいくつかの手順を踏まなければならない。
まず一つ目。最も大切なことだが、どのような魔法を創るか考えなければならない。火属性の魔法?水属性の魔法?攻撃に使う?戦闘の補助に使う?魔法の形は?矢を放つ?それとも球にしてぶつける?
とまぁ、そんなことを考える。
─ピッピィーピ!ピィ─
次、2つ目。詠唱を考える。教本などから魔法言語を抽出して、考えた日本語の詠唱と照らし合わせてデザインするのだ。私がほかの人より得意にしているのがこれ。
地面に書いたり、システムのメモを使ってデザインをする。
─ピッピッピィーピ!─
─ピッピピ!ピピ!─
そして最後に、これをシステムに魔法と認めさせるのだ。システムを開くと、インベントリの近くに『魔法作成』という欄がある。ここに、考えた日本語の詠唱、魔法に使った文字等を入れることで魔法を行使することが可能になる。
ここでエラーが出なければ、それは魔法として完成しているということだ。
そしてこれは、見ようと思えばいつでも見ることができる。いつかに『魔法研究会』のクランハウスで究極魔法を見せたことがあるように。
なので私の『魔法作成』の中には、私がこれまで作ってきた約30ほどの魔法が保管されている。後はこの中から、先ほど考えた顔を空気の層で覆う魔法に使う文字を抽出して作りだせばいいのだ。
30も魔法を創っていれば、文字が足りないなんてこともないだろう。多分。
─ピィーピ!─
─ピッピピ!─
いやうるさいな!人が考え事始めた瞬間に出てきやがって!言っておくけど飛べるのはお前たちだけじゃないからな!上から一方的に攻撃してきやがって。しかもHPの減らないただ集中力を削ぐだけの騒音攻撃!全く、飛べるのはお前たちだけじゃないってことを見せてやらなくては!
・・・うん?上から一方的、飛べるのはお前たちだけじゃない・・・




