教本
はい、何も思いつきませんでした。そもそも私、この世界に来て1日経ってないからね、知識なんて何もないし。ということで、とりあえず採取したものを売ってから考えることにした。
「こんにちわ」
「あら、その恰好、異人の方ね?私のアトリエにようこそ。何か御用?」
ここの店員さんは黒髪ストレートの美人さんだった。むねでっか。逆立ちしてもらっても勝てない。胸囲の格差社会かこれが。
「本屋の店員さんが、ここなら何でも買い取ってくれるって言ってたからいろいろ売りに来た」
「あら、彼女がここを?・・・まぁいいわ。売りたいものを出して頂戴」
指図されたテーブルの上に取ってきたものを出す。帰り道も売れそうなものは取ってきたし、1,500Gくらいにはならないかな。
「あら沢山。ちょっと待ってね。これが薬草で、これは雑草、これも・・・はい、全部で1,300Gね。確認して頂戴」
「うん」
ちょっと想定より安いけどそこそこにはなったんじゃない?私の場合食料も水も買わなくていいからその分浮くし、一生この町で暮らす羽目にはならなそう。とはいえもう少し効率のいい方法は探したい。
「お姉さん、効率のいい採取方法知らない?ほしいものがあるんだけど、時間がかかりすぎちゃう」
「効率?そうねぇ、薬草なら群生してるところを風魔法で一気に刈り取れたりするけど・・・風魔法は使える?」
「無理。まだ言語を理解してないし、学ぶ機会もない」
「まぁ、それもそうか。それなら固有の属性ってやつは?異人の人は持ってるって聞いたんだけど」
そっちも一緒だね。言語を知らないから使うこともできない。
「一緒。言語がわからない」
「あら、固有の属性も最初から使えるわけじゃないのね。ちなみにあなたの属性は?」
「〈収穫〉。採取に使えそうだから、この後本屋の店員さんに教えてもらいに行こうと思ってる」
「〈収穫〉・・・。確かに採取に使えそうね。それならお願いしたいことがあるわ」
?なんだろ。魔法を使えない私は想像を絶するくらい弱いと思うよ。荒事はだめだね。
「私が勉強に使ってた教本を上げるから、〈収穫〉属性を用いた魔法が使えるようになったら私に見せてほしいの。そして、その採取した素材を私に売ってほしい。お願いできる?」
「え、私に得しかないよ?」
いいのかそれ、私に得しかない。私は魔法が使えるようになってお金も稼げる。そうすれば〈鑑定〉もすぐに取得できる。あ、でも言語を理解するのにどれだけかかるかわかんないな。
「いいのよ。勉強もしないとだし、すぐにとは言わないわ」
「それなら、ぜひお願いします」
「ええ、よろしくね。これが私の使ってた教本よ」
【大切なもの】???
???
あ、ここも〈鑑定〉がないから何にもわからない。まぁ後で読めばいいか。ちょっと奥の椅子を貸してもらって、しばらく勉強タイムだね。




