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本編

こちらが本編となります。序章を読まなくても問題はありません。話の内容がガラッと変わりますが、序章を読んでいただくと別視点をお楽しみいただけます。ぜひ、この話を読む前後どちらかに序章も読んでいただけると幸いです。

私はこの春から高校に入学して、一週間がたった。まだ朝から電車に乗るのは慣れない。乗り間違えても遅刻をしないように、一本早い電車に乗る。吊り革に捕まり、電車に揺られながら携帯でニュースを見る。


そこには、最近話題の魔法少女の記事が流れてきた。


【魔法少女、またもや大型生命体撃破】

という見出しに、拡大したのか画質の荒い魔法少女の写真が載っていた。しかし、興味はないので天気予報の記事を開く。


大きな揺れが起きたのはその時だった。電車は止まり、緊急停車する。


「皆様、大型生命体が現れました。路線付近に現れた為、車外へと避難してください。」


車内はパニックになる。外へ出ようとする者、ドアから地面までの高さに怖気付く者、大型生命体の方を向き立ち尽くす者。

私は、色々な人を避け、人の少ない車両から外へと飛び出した。人の少ない朝の街を駆け、路地裏へと入る。


周りに人がいないかを確認し、鞄のチャックにつけていた女児向けの見た目をした防犯ブザーの紐を、思いっきり引っ張った。

音は鳴らず、代わりに辺りを光が包み込み、私の服はリボンが多くあしらわれている物に変わった。


私は、魔法少女になったのだ。


宙に浮き、空を蹴るように走る。大型生命体に近づき、踏み込んだ勢いでそのまま拳を叩きつける。大型生命体は殴られたところから消えていった。


「電車止まったし、このまま学校近くまで行くか。」


誰にも聞こえない空中でつぶやいた。



学校近くの公園で変身を解き、桜並木を歩いて学校へと向かう。

私は強い。主人公になった気がした。しかし、私には魔法少女になる前から人生があるのだ。周りに言いふらして、この15年を水の泡にはしない。


今日も私は普通に生きるのだ。


⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎


教室のドアの前で深呼吸をする。


「おはよーございますっ!」


大きな音を立ててドアを開け、それに負けないぐらいの声で挨拶をした。返事はない。朝一番に着いたのは私だからだ。

そして何事も無かったかのように歩き、窓の外を見つめる。先生は朝早くに来て、窓を開ける。何故かはわからない。

ほとんどの桜は雨で散ったが、丁度遅咲きの八重桜が咲いて、辺りに舞っている。桜の香りが風に乗り、私へと吹き付けた。

しばらく眺めていたが、花粉症の人が可哀想なので窓を閉めた。窓際の席に着くと、机がざらざらとしている。心なしか、少し黄色い気がした。ティッシュで拭き取り、舞うことのないように畳み、ゴミ箱に入れた。


ようやく椅子に座り、カバンの中から本を取り出して読み始めた。それと同時にドアがガラリと開いた。そちらを見ると、早くも学年一のイケメンと言われている〈 高橋康太 〉が来た。

彼は初日から有名人だった。なんでも、クラスの明るいマドンナ的存在の〈 竹田愛菜 〉が、朝に高橋とぶつかったという「個人的に少し因縁のある相手」らしい。初日でクラスの中心になった竹田さんの話は、すぐに広まった。

竹田さんの居ない今、彼に話しかけても意味はないだろう。


◇ □ ◇ □ ◇


教室にほとんどのクラスメイトが入ってきた。


「その本面白いの?」


前の席の女子に話しかけられた。


「予想できない展開が続いて面白いよ。」


「その本のキャラクターとか、表現も素晴らしいが、先に展開に着目するのか…!」


「…さては知っていたな?」


こちらを見て「えへへ」と笑うと共にチャイムが鳴り、前に向き直った。

少し、ドキッとした。たしかに、私は全てのことを楽しめた昔よりも、想像できる展開に飽きてしまったのかもしれない。


そう思いながら、私は先生の話を聞いていた。


◇ □ ◇ □ ◇


「班ごとに図書室の本を使い、古文についてまとめましょう。」


私のいる班には、高橋と竹田さんがいた。


「高橋!足引っ張らないでよね!」


「お前こそ。」


まだ、いがみあっているようだった。しかし、課題の進捗はむしろ良い方だった。竹田さんがみんなをまとめ、高橋が改善できるところを指摘していく。2人のおかげで、質も速さも良いものとなった。だが、その余った時間でも、2人はいがみ合っていた。


◇ □ ◇ □ ◇


問題が起きてしまった。高橋に呼び出されてしまったのだ。だが、今竹田さんがヤンチャな女子3人に絡まれているのは、不幸中の幸いだった。

さっさと早く終わらせないといけない。私は走って屋上への階段を駆け上がった。屋上に着いても、まだ高橋は居なかった。


緑色のフェンスに近づき、両手で掴み、街を見下ろした。枝についた花が密集して咲く八重桜は、ソメイヨシノより濃く、街を桃色に染める。先に帰る小学生たちが落ちた花びらを、花吹雪にしてはしゃいでいる。いつから自分は変わってしまったのだろうか。


「フェンスに寄りかかると危ないぞ。」


高橋が遅れて来た。目が泳ぎ、頬がほのかに赤くなっている。最悪な予感がする。


「好きだ。付き合ってくれ」


最悪な予感は的中してしまった。


⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎


私は、現役最強の魔法少女になった。何故私なのかはわからない。ただ、ぬいぐるみのようなものが、私の目の前に現れた。


「君は真実を知らなければいけない」


その一言を残して一瞬で姿を消したが、その一瞬でこの世界の仕組みが頭に流れ込み、理解した。そいつは、文字通り『次元の違う存在』だった。私は不具合を、直さなくてはいけない存在になった。直さざるおえなかった。


曰く、この世界の主人公は〈 竹田愛菜 〉である。

曰く、この世界は不具合が起きてしまう。

曰く、不具合を直す力は私が持っている。


あくまでも、主人公は〈 竹田愛菜 〉であり、私ではない。〈 竹田愛菜 〉が〈 高橋康太〉と幸せになる為に作られた世界。だから

不具合は基本的に、【大型生命体】を指す。しかし、他にも起きてしまう事がある。それが今だ。


『〈 女子生徒B 〉は〈 高橋康太 〉に過度な接触をするべきではない』のだ。


私は、〈 竹田愛菜 〉がどうなるのか、どうなるべきなのかを知っている。断片的ではあるが、未来を知ってしまったから、この世界と自分に諦めかけていた。自分が役目を放棄したらどうなるのかは、わからない。ただ、辿るはずの道を大きく外れた世界は消えるだろう。だから私は


⚪︎◇⚫︎□⚪︎


「ごめんなさい。」


学年一の告白を断るしかなかった。一刻も早く


「今から、三階端の理科室に行って。竹田愛菜が危ない。」


「…なんでお前が行かないんだ。」


「〈 高橋康太〉。貴方じゃなきゃ彼女を救えない。…非力な私が行っても意味がないでしょう?」


そう、それでいい。『誰もいない教室でいじめられている〈 竹田愛菜 〉を助ける』のは『学年一のイケメン〈 高橋康太 〉』でなくてはいけない。


「世界を救うのは私じゃなくて、あの2人なんだよ」


自分の幸せを諦めたくない。生まれた時から運命が決まっているなんて、信じたくない。

今までも、少しだけ争ってきた。大きい声で挨拶してみたり、独り言を言ってみたり。こんな理不尽な世界を知って、抵抗せずにいられるだろうか。少なくとも、私は抵抗する。拳で、拳がダメなら足で、足がダメなら骨で、骨がダメなら血で、全身全霊を賭ける。

今までと、これからの人生をめちゃくちゃにされてたまるか。現実を知って、暗くなってはいけない。明るく振る舞わなくては、世界に負けたと言っているような気がする。


「誰も見捨て無い。自分も犠牲にしない。全員残さず救う魔法少女になる。」


なんて傲慢な魔法少女だろうか。しかし、もう後戻りはできない。負けてはいけない。


「私は、最強の魔法少女!私が負ける時は、闘うのをやめて諦めた時!この世界に争い続ける、絶対に諦めない!」


だから


私は今日も魔法少女として闘う。



一応、これにて完結です。ifストーリーを作るかもしれません。

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― 新着の感想 ―
エピソード1の話からは想像できない展開で、面白かったです。
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