召喚っ!
「何故、お茶っ!?」
と叫びながらも矢頭はヤンキーに蓋を開けて投げつけた。
だが、未使用の売り物のお茶だったようで、銀の袋のまま中身が飛んでいっただけだった。
まあ、上手く顔面にそれが直撃したのだが。
「てっ。
なにしやがるっ」
「召喚っ」
と矢頭がまた叫んだ。
今度は袋入りの数枚の手裏剣が矢頭の手のひらに載った。
「でかした、異世界っ」
「誰に礼言ってるの……?」
と思わず水門は言ったが。
まあ確かに誰に感謝していいのかわからない。
矢頭はヤンキーを見据えたまま、『ゆかいな手裏剣』と書かれた厚紙を取り外す。
なにが、ゆかいなのかわからないが、手裏剣を投げて遊んでいる子どもたちの絵はまあ、楽しそうだった。
矢頭はホッチキスの芯がついたままのその厚紙をポケットにしまう。
ビニール袋からおもちゃの手裏剣を取り出すと、ヤンキーに向かって投げた。
見事に額の中央、手、足に命中する。
「忍者かっ」
とヤンキーが額を押さえ、叫んできた。
「無表情にオモチャ投げてくんなよ。
怖ええよ、お前……。
顔が綺麗な分、変な凄みがあるんだよ。
似合ってねえよ、オモチャの手裏剣」
「召喚」
また無表情に矢頭が言う。
今度はあの木刀が現れた。
「召喚される物がグルグル回ってるね。
なにか法則性があるのかな?」
と水門が呟いた瞬間にはもう、矢頭はその木刀を振り上げていた。
「待った待った待ったっ。
降参っ」
まだなにもしてないのに、ヤンキーは謝る。
「俺、道場通ってたから、構え見たら、強いかどうかわかるんだよっ。
猿渡だ。
お前らに協力しよう」
両手を上げたヤンキー猿渡は仲間になった。