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京都に修学旅行に行ったら、異世界に着いたので、こまって、とりあえず、クラス委員の矢頭くんを召喚してみました  作者: 菱沼あゆ


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異世界での暮らし



 水門と矢頭はあの初めの街で暮らした。


 そのうち言葉もわかるようになってきて、ちゃんと意思の疎通ができるようになった。


 楓子が裁縫でみんなを従わせたのを思い出し。


 水門は裁縫は苦手なので、古布を裂いて織物を作る技術を伝えたり、密造酒の作り方を教えたりした。


「待て。

 なんで知ってんだ、密造酒の作り方」

と言う矢頭に、


「なに言ってんですか。

 昔の家では普通に作ってたんですよ、密造酒」

と怪しげなことを言って誤魔化し。


 その酒を売りさばいて一儲(ひともう)けした。


 そんな水門の投資の甲斐(かい)あって、街は古い町の雰囲気を残しながらも発展していった。

 



 水門たちは休みの日には、みんなで遊んだ。


 カエルやうさぎと相撲をしたり、サルが合流したりするのを見ながら、水門は呟いた。


「もしかして、鳥獣戯画って、この世界に紛れ込んだ人が描いたのかもしれないですね」


 鳥獣戯画にも出ていたスイカを手に、

「また適当なことを……」

と矢頭が言う。


 そんな風にそれなり楽しく過ごしていた水門だったが、家も学校もこの世界には呼ばなかった。


 所詮、戻れない場所なので、余計に寂しくなるだろうと思ってのことだった。


 矢頭も同じように呼ばなかった。


 ただ、ヤンキー仕様の矢頭はともかく、水門が(かたく)なに制服を着続けていたのは前の世界への未練だったのかもしれないが――。




 水門はカエルやうさぎたちに、しょうもない技術をいろいろと仕込んだが。


 中でも力を入れていたのは、石の仏作りだった。


 こっちで地蔵を作ることでどうにかならないかな、と思ったのだ。


 カエルたちが作った、まだまだ不恰好な石のお地蔵様らしきものを街の近くの、あの森に似た場所に並べてみる。


 時折、拝んでみたが、なにも起こる様子はなかった。




 そんな水門には特に目をかけているカエルがいた。


 荒削りだが、きらりと光るものがある石の仏を作るカエルがいたのだ。


「いいじゃない。

 今度は自分の姿とか彫ってみたら?


 可愛くて売れそう」

と水門は笑ったが、そのカエル、吉三(きちぞう)は、


「いや、あっしなんて、もうジジイですし」

と答えた。


 水門は、


 ジジイだったのか……。

 カエルもうさぎも、全部同じ感じに見えるからな、と思っていたが。


 矢頭は、

「まあそうだよな。

 俺たちはカエルのマスコットとか置物とか可愛いって眺めてたけど、あれも実はジジイのカエルを()したものだったのかもしれないよな。


 人間だって、他の生物から見たら、どれでも可愛いのかもしれないし」

と言う。


 いや、それもなんか怖いな、と水門は苦笑いした。


 並べられた自分たちを可愛いと()でる宇宙人。


 じゃあ、もしかして、このカエルたちからみたら、私も矢頭くんも一緒なのだろうかな……。


 そんな風に水門たちが話したり、不安になったりしている間に、吉三は出て行ってしまっていた。




 吉三はひとり森に行き、自分の彫った不恰好な石地蔵も並ぶ場所を眺めた。


 はあ。

 せっかく姫さんたちがこんな老いぼれに目をかけてくださってるのに。


 なんにも期待に応えられねえとは。


 吉三は地蔵に向かって拝もうとしたが、そこに自分の作った地蔵もあるのに気づいて。


 自分が作ったいまいちなそれまで一緒に拝むとは恐れ多い、と並ぶ地蔵から右を向き、なにもない場所見て拝んだ。


「上手く彫れるようになりますように」


 だが、その技術は一朝一夕に習得できるものではない気がした。


 はあ、と吉三は溜息をつく。


「ここではない何処かに行きてえなあ」


 そのとき、地蔵の向こうに、古い社殿と鳥居が現れた。


 すぐに社殿は消え、残された鳥居の向こうの森がぼんやりと霞んで見えた。


「あっ、吉三さんっ」


「姫さんっ!?」


 吉三の様子がおかしいのに気づいていた水門は、少し遅れて彼をつけてきていたのだ。


「あっ、鳥居っ」


 その存在に気づいた水門が慌てる。


「どうした、水門っ」


 さらに遅れて矢頭が現れた。


「矢頭くん、鳥居がっ」


 なんだとっ?


 水門の側まで来た矢頭と三人でその不思議な鳥居を見上げる。




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