隙を見せない学生らしい服装ってなんだ?
先ほどの水門の推理は正しかった。
やはり、楓子と同じ寄宿舎の日本人が総長の矢頭を知っていたらしいのだ。
「コンビニの前で別のヤンキーにからまれたとき、助けられたとか言ってたわ。
危険な魅力があって格好いいって」
危険な魅力……。
まあ、ある意味、と水門たちは横目に矢頭を見た。
ただ、より彼の『危険』具合がわかっているのは、女子連中より、赤西たちの方なのだが。
「しかし、あんたも修学旅行だったんだろ?
そんな格好でウロウロしてていいのか?」
皆川がそう楓子に訊いていた。
楓子が普通のワンピースを着ていたからのようだ。
「ドイツの学校、制服ないんじゃないのか?」
と言う猿渡に楓子が、
「そうねえ。
ほぼないわね。
うちはあるけど。
可愛いの」
と答える。
「でも、修学旅行中は学生らしい服装ならいいことになってるから」
「そうなんだ?」
と水門が言うと、楓子が言った。
「学生らしい服装で隙を見せないようにすればいいって」
猿渡たちが小首をかしげる。
「隙を見せない学生らしい服装ってなんだ?」
……隙を見せない学生らしい服装?
「制服かな?」
と苦笑いして水門は答えたが、赤西は大真面目に、
「それは逆に変なマニアを呼ぶだろうよ」
と語る。
あなたも変なマニアの人ではないでしょうね……と水門はその身の乗り出し具合に思っていた。
「学生らしい服装で隙を見せないようにって、そういえば、うちの生徒手帳にも書いてあるな」
皆川がそう言うと、蜂山たちが、
「なんだよ、お前んとこ、生徒手帳なんてあるのかよ」
と言う。
皆川が、うん? という顔をした。
裏番というだけのことはあり、目は据わっているが、見た目は優等生風だ。
「生徒手帳ないのか?
俺はいつも胸ポケットに入れてるぞ」
と言いながら、今も入れているそれを出して見せる。
紺色に金で学校名と校章の入ったスタンダードな感じの生徒手帳だった。
「なんでいつも胸ポケットに入れてんだ?
いつ、誰に撃たれてもいいようにか?」
赤西が興味津々、皆川に訊いている。
……いや、誰に撃たれるつもりなんだ。
あなた、ヤンキーでヤクザじゃないですよね? と水門は思う。
まあ、ヤンキーとヤクザの境目がわからない人たちも中にはいるが。
「生徒手帳なんて、うち、中学からないぞ」
と蜂山が言い、
「そうなのか。
うちも中学からないぞ」
と赤西が言っていた。
いや、お前ら同じ中学では……と矢頭の顔に書いてあった。
「恐るべきトリ頭だな。
三歩歩いたら、クラスメイトの顔も忘れんじゃねえの?」
よくそんなんで矢頭の顔覚えてたな、と塁が言うと、
「いや、なんだかんだで矢頭、格好よかったからな」
と蜂山たちが笑い合う。
「生徒手帳、欲しいなあ。
なんか格好いいじゃねえか」
そう言う赤西に蜂山が、そうだっ、と声を上げる。
「この間、フリマサイトで売ってたぜ、生徒手帳っ」
よその学校のを買ってどうする……。
「そういや、矢頭。
お前らの族のステッカーもフリマで売ってたことあるぞ」
そう言い、蜂山が矢頭を振り向く。
「待て。
そんなもの作った覚えはないが……」
困惑する矢頭に蜂山は笑って言った。
「お前らのファンが作ったんじゃねえの?
お寺の前庭でやってる青空フリマみたいなところで売ってたぞ」
何故、そんな平和なところで。
っていうか、ヤンキーの人も、青空フリマでのんびりお買い物したりするんですね……。
水門は変なところで感心する。
しかし、寺か、と思った水門は思い出していた。
あの寺の裏山、奥の院のことを。




