ニンジャッ!?
ヤンキーが矢頭に気づく。
大股にこちらに向かって来ながら言った。
「あっ、てめっ。
三中の……」
ガタ、と矢頭が立ち上がる。
「魔王だ。
魔王が来た。
コマンドッ、手裏剣っ」
魔王が来たというわりには、やたら早口の棒読みで矢頭は言い、素早くコマンドを押した。
いや、あれ、どう見ても下っ端……と思うみんなの前で、矢頭は男の額に手裏剣を投げつけた。
手裏剣が命中し、男がひっくり返る。
矢頭は、ふう、と息を吐き、
「危ないところだったな」
と言ったが、全員、
なにがどう危なかったんだ……と思っていた。
食堂の客たちは、
ニンジャ!?
おお、ニンジャ!?
と拍手喝采だ。
なにかの出し物だと思ったようだ。
そのとき、異世界に続くテラス側の窓が開き、細身のヤンキーが入ってきた。
「あっ、矢頭……っ」
とそのヤンキーが言いかけたとき、すでに彼の口には手裏剣が刺さっていた。
そのままヤンキーは窓の外に向かって落ちる。
サルをハンマーで叩いたら落ちていくアーケードゲームのようだ、と思いながら水門は眺めていた。
「危ないところだった……」
いや、だからなにが……。
「きっとあれがラスボスだ」
いや、ものすごい下っ端顔でしたよ?
塁が、
「最初に倒れた奴は?」
と訊く。
「あいつもラスボスだ。
ああ……、またラスボスが来た」
別の扉から入ってきたヤンキーを冷ややかに矢頭が見る。
いや、ラスボス、何体いるんだっ、と水門たちが思ったとき、その飛び込んできた小柄なヤンキーが矢頭を見て嬉しそうな顔をした。
「総長っ。
なんでここ……っ」
矢頭が鋭く放った手裏剣を腹に受け、その可愛らしいヤンキーは笑ったまま倒れた。
「可哀想じゃないですかっ。
その人、たぶん、あなたの舎弟ですよねっ!?」
水門が叫ぶと、矢頭は観念したように言った。
「……バレてしまっては仕方ない」
矢頭は伊達メガネを外そうとしたが、そもそもかかっていなかった。
「俺は暴走族 蚊琉照兎の総長、矢頭小太郎だ」
空中に蚊琉照兎の漢字を書きながら、矢頭が言う。
「知りませんでした。
……下の名前」
可愛いじゃないですか、小太郎とか、と水門は青ざめ、猿渡が、
「なんで暴走族って、謎の漢字を使いたがるんだ……」
と青ざめる。
そして、
「カルテットって、なごやかすぎだろ」
と塁が言い、
「うさぎの字が入ってるっ」
と松岡が喜んだ。




