最強チートを持っているのは誰だ?
水門たちは窓際のテーブルに座った。
実際に外に出てみれば、たぶん、異世界なのだが。
こうして城から眺めれば、ドイツにある美しい庭が眺められる。
「楓子はカエルと何処行ったんだろうな」
塁が外を振り向きながらそう呟いた。
いや、カエルと出かけたわけではないと思うが。
気になって戻ったのだろう。
ああ見えて優しいからな、楓子、と思っていると、塁が言う。
「いまだにあいつがドイツにいるの、信じらんねえぜ。
あいつ、ドイツでもハローをヘルって書いてんじゃねえのか?」
いや、ドイツ語のハローは、halloなんで、o書き忘れても、地獄には落ちないんだが……。
ちなみに、hallだと、音響とか、こだまという意味になるので、ちょっと平和な感じだ。
「そういえば、出会ったとき、楓子の奴、なんか言ってたぜ。
水門が危険な男といるとか、なんとか。
現実世界のことかと思ってたんだが」
と言いながら、塁は順番に男性陣を見た。
まず、小太りでジャラジャラベルトにチェーンなどをつけた松岡を眺める。
「こいつじゃねえな」
「いや、なんで?」
すぐさま松岡を除外する塁に水門はそう訊いた。
「なんか人の良さそうな食いしん坊キャラみたいな顔してんじゃねえか。
どんなドラマにも一人はいるな、みたいな」
どんな扱いっ、という顔を松岡がする。
「いや、わかんないじゃん。
うちの従兄弟なんて、人生の途中から急激に太ったから、ぱっと見、ふかふかした感じで温厚そうなんだけど、中身が前の人格のままなんで、クールなデブって呼ばれてたしっ」
いや、松岡はほんとうにいい人なのだが。
ヤンキーやってるくらいだから、もしかして、危険な男になりたいのかも、と思い、反論してあげてみたのだ。
「いや、こいつは絶対、校庭の隅でうさぎにエサとかやってるタイプだ」
異世界の片隅でうさぎにエサやってるのは見たけどね、と思う水門の斜め前で、何故、それをっ、という顔を松岡はしていた。
やってるのか、校庭の隅でうさぎにエサ。
……野良うさぎか?
次に塁は自分の右横に座る猿渡を見たが、
「こいつはいい奴だし」
とすっかり意気投合した猿渡のことは一言で済ます。
塁は水門の左隣に座る矢頭を睨んで言った。
「ということは、矢頭か。
……まあ、確かにこいつは危険な奴だ。
俺はずっと前からそう思ってた」
えっ?
どの辺がですかねっ? と水門は思う。
矢頭くん、リアル世界では、目つきが鋭いだけの人畜無害な優等生なのにっ、と。
「みんな紅一点の水門の隣はなんとなく避けて座るのに、当然のように座ってるし」
いや、そこかっ、と水門が思ったとき、矢頭が静かに反論した。
「俺はこいつを女だと思ってないから。
金塊で異世界を征服しようとするような奴」
「言ってませんよ、そんなことっ」
「お前の頭の中では金塊こそが、最強チートなんだろ?」
揉める二人の前で、松岡が呟く。
「今、最強チート持ってんの、塁さんっすよね」
「ああ、このホテルの中、ブラックカード最強だからな……」
と猿渡も頷いていた。




