アニキが最強でございます
妹と別れた水門は何処までも続くかのような道を歩いていた。
「最初は矢頭くんと私の異世界放流記だったけど。
四人旅も悪くないね」
その騒がしさに笑って言ったが、
「待て」
と矢頭が言う。
「なんだ異世界放流記って。
何処から放流されて来たんだ俺たちは」
稚魚か、と言われる。
「いや、いきなりこの異世界に右も左もわからないまま放り込まれて、すごい勢いでいろんなものに流されてってる気がするから」
「なにもかも、ほぼ、お前とお前の身内のせいだよな」
「あっ、見て、矢頭くんっ」
と道の先を指さすと、
「誤魔化すな」
とこちらを見て歩いている矢頭に言われたが。
「違う違う。
見て」
もう一度、自分の指先を見るよう、水門は矢頭に言った。
矢頭が振り向く。
猿渡たちはすでに歩みを止めていた。
「……元の場所に帰っちゃったのかな?」
水門たちの目の前には、あの古城のホテルがいつの間にか現れていた。
「まっすぐに見えた道が実はゆるやかに湾曲してて。
ぐるっと回って戻ってきたとか?」
道の先に建つ古城を見て、水門は言う。
「いやそんなはずは……」
そう言いかけた矢頭は周囲を見回し、
「ここは城があった高台とは違う。
平地だ。
よく似た違う城なんじゃないのか?」
と言ってきた。
「ともかく、行ってみよう」
そんな力強い矢頭の言葉にすがるように頷き、
「わかった。
最強ヤンキーの矢頭くんがいれば怖いものはないよね」
と水門は言った。
「……何で俺が最強だ。
なあ」
矢頭はそう言い、ヤンキー二人を見たが、二人ともアニキが最強で間違いないでございます、という顔をしている。
「こういうのなんて言うんだっけ?
……舎弟?」
水門は二人を見ながら言ったが、矢頭は、さっさと城に向かって歩き出す。
「俺に、そんなものいらない。
行くぞ、お前ら。
紅井は後ろついて来い」
いや、完全に仕切ってますよね……と思いながらも、誰も口には出さず。
みんな昔のRPGゲームのパーティーみたいに矢頭の後ろに並んで歩いていった。




