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京都に修学旅行に行ったら、異世界に着いたので、こまって、とりあえず、クラス委員の矢頭くんを召喚してみました  作者: 菱沼あゆ


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他の技も使えるようになりました

 

「しかし、不思議だな。

 紅井たちが見たのは鳥居だけで、楓子が見たのは神社なんだな」


 そう言った矢頭に楓子が文句を言う。


「ちょっとなに私は呼び捨てにしてんのよ。

 私にも恥じらいなさいよ」


 だが、矢頭の言葉に思うところあったようで、楓子は嫌そうにだが言ってきた。


「この世界に転移したとき、最初、心細くて」


 そんな風には聞こえなかったが、とみんなの顔には書いてあったが。


 話の腰を折らないよう、みんな黙っていた。


「私、無意識のうちにお姉様を呼んでしまっていたのかも」


「それで鳥居が紅井を呼びに来たとか?」


「でも、私があそこに行ったの、たまたまですけどね」


 まあ、姉妹の血が呼んだのかもしれませんが、と水門が言うと、猿渡たちが、


「待て。

 俺らは?」

と楓子に訊く。


「ついでに巻き込まれたんじゃない?」


 ついでってなんだーっ、という顔を猿渡たちがしていた。


「そうだ、楓子。

 私たち、転移の鳥居を探す旅してるんだけど。


 楓子も行く?」


 お姉様、と楓子は水門の手を取り、笑顔で言った。


「嫌よ」


 嫌なんだ……。


「私はもう少しここで女王のように暮らすから。

 帰れるめどが立ったら呼んで」


 そんな楓子の言葉に、猿渡たちが、

「やっぱりこいつ、悪役令嬢だ……」

と呟いていた。

 



「じゃあ、お前はほんとうに行かないんだな?」


 出立する水門たちをカエルたちとともに見送ろうとした楓子に矢頭が訊いてきた。


 しかし、このヤンキー。


 ほんとに綺麗な顔してるわね……。


 それに何処かで見たような、と思いながら楓子は言う。


「行かないわ。

 今、このカエルたちに術使えないか、試してるの」


「術?」


「ゾンビとかスライムとか攻撃的な連中もこの世界にはいるじゃない。

 あいつらが攻めてきたら困るから。


 召喚が使える私がいなくなっても大丈夫なように、ここの住人たちになにか教えてあげられないかなって」


 姫……という顔でカエルたちは涙ぐむ。


「化けガエルに化けうさぎなんだから、なにか妖術とか使えるかもしれないじゃない?」


「いや、そいつら、化けガエルじゃなくて。

 単に、こういう姿のこの世界の住人なんだろう?


 でもまあ、お前、いいとこあるんだな」

と矢頭が言うので、


「あ、もしかして、お姉様じゃなくて、私の方が可愛く見えてきた?」

と訊いてみたのだが。


 振り返り、うさぎや他のヤンキーたちと話している水門を見た矢頭は、

「いや、紅井姉の方が可愛いようだ」

と頷き言ってくる。


「あ、そ」


 素っ気なくそう言いながらも、まだ水門と名前で呼べない矢頭に笑ってしまう。


「しかし、お前、どうやって城を召喚してるんだ?

 戦闘中じゃないと召喚できないだろう?」


「え? そうなの?

 私、別に普通にできるけど」


 楓子は右手を上げ、

「コマンド」

と言った。


 空間に画面のようなものが現れたので『召喚』のところを指差す。


「城を呼んで」


 背後にドイツの古城が現れた。


「そんなことができるのかっ」

と言いかけた矢頭だったが、ん? という顔をし、自分も右手を上げていた。


「コマンド」


 矢頭の前に画面が現れる。


 『召喚』の文字を指差し、矢頭は言った。


「……木刀」


 矢頭の手に京都の文字が彫られた木刀が現れた。


「なんだ、あんたも使えるじゃない。

 知らなかったの?」


 ……どうやら、知らなかったようだ、と矢頭の顔を見た楓子は思う。


「他にもコマンドあるじゃん。

 『メンチを切る』」


「それ、コマンド必要ないだろ」


 自力で切れる、と矢頭は言う。


「これとかいいじゃん。

 『ラップを歌う』

 『ダンスを踊る』」


 指差しかけ、押すな~っと矢頭に叫ばれた。


「全部ヤンキー仕様ね」


「待て。

 ヤンキー、ラップ歌って、ダンス踊るか……?」


「社交ダンスじゃなさそうよね。

 あ、それより、その下の……」

と楓子は指差しかけて、


「いいから、この画面の消し方を教えろ」

と凄まれる。


 はいはい、と消し方を教えてやった。


 画面の前で軽く手を振るだけでいいのだ。

 



「じゃあ、お姉様をよろしくね」


 楓子は関所のところで彼らに手を振り、見送った。


「さて、城に戻って、ひと眠り」


 城の中は異世界じゃないから、いずれお金払わないとな。


 カードで切るつもりなんだけど、あとで親に怒られそうだなあ、と思いながらロビーを通り、さっきのスタッフに頭を下げた。


 アンティークなエレベーターの前でエレベーターが降りてくるのを待つ。


 城がアンティークなのはいいんだけど。


 エレベーターがアンティークなのはちょっとな。


 などと考えながら待っている間、頭に矢頭の整った顔が浮かんだ。


 あのイケメンヤンキー、何処かで見た気が……と思ったとき、エレベーターが可愛らしい音を立て、扉を開けた。


 降りてくる人をやりすごそうと、ちょっと避けかけた楓子だったが、エレベーターの中を見、あっ、と声を上げる。




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