召喚っ! 召喚っ! 召喚っ!
ゾンビが現れた。
ゾンビの群れが現れた。
大量のゾンビが押し寄せてきた。
矢頭くんっ、なに呼んでんの~っ。
っていうか、敵を召喚するってアリ!?
と三人は青ざめて後退し、カエルたちもビビって逃げ惑う。
「あ、関所がガラ空きにっ。
今なら関所越えられそうだよっ」
と門を振り返り、水門は叫んだが、矢頭は、いや、それが目的じゃないっ、と言う。
「目先のことにこだわるなっ。
……ゾンビどもっ、その女を襲えっ」
いや、あなたの立ち位置、どこっ!?
「召喚っ」
と更に矢頭は叫んだ。
もうゾンビいりませんっ、と水門は思ったが、矢頭の手に現れたのは茶筒だった。
「……茶筒の番だったな」
可愛らしい柄の布張りの茶筒を見ながら矢頭が呟く。
「召喚っ」
矢頭の手に手裏剣が現れた。
「召喚っ」
矢頭の手に木刀が現れた。
その木刀を矢頭は水門に投げつけてくる。
「やれっ、紅井っ」
「えっ、なにを?」
と水門が言った瞬間、ゾンビが水門に向かってきた。
きゃああああっと悲鳴を上げながら、水門はゾンビの頭をボールを打つように木刀で吹っ飛ばす。
だが、ゾンビはすぐに起き上がり、あ~、あ~と声を上げながら水門に向かってきた。
それにつられたように、全ゾンビが両手を上げたゾンビスタイルで水門に迫る。
「大丈夫かっ?」
と猿渡が助けに入ろうとしたのを矢頭が止めた。
孤立無縁になった水門は近づくゾンビを闇雲に木刀で叩いていたが、みなすぐに起き上がってきてキリがない。
「……あ~あ」
水門は木刀を肩に担ぎ、片方の手を腰にやると、ゾンビたちを見据えて言った。
「やっぱり、これじゃあ、死なないわねえ。
なにをしたら死ぬのかしら、ゾンビ……」
半眼の目でゾンビを見下すように見る水門に、カエルたちは抱き合って怯え、猿渡と松岡は、
こいつ、ヤンキーより怖いっ、
と震え上がる。
「召喚っ」
と矢頭が言った瞬間、ゾンビはかき消え、絣の前掛けをしたうさぎが水門の前に現れた、
木刀を担いだ水門にゾンビを見ていたときの据わった目のまま見られ、うさぎも震える。
カエルと抱き合っていた。
「ホンモノの城の姫様だった、とカエルたちが言ってますよ」
ようやく姫の忠実なる部下も騙せたようだ。
「その人を人とも思わぬ目つき、姫に間違いないそうです」
「所詮は姉妹か……」
と矢頭が呟いていた。




