ドレスが召喚できません
カエルが関所にいる……。
街道の先に木製の門があり、その両脇に着物姿のカエルが槍を手に立っていた。
「姫に貢ぎ物をするように言ってます」
と松岡がカエルを見つめて言う。
……うさぎだけじゃないのか、意思の疎通ができるの、と松岡を見ながら全員が思っていた。
いや、まあ、助かるのだが。
「どうするんですか? アニキ」
と猿渡が矢頭を振り返る。
矢頭が、すっと前に進み出た。
「カエルよ」
ひとまとめですか。
それ、我々に向かって、人類よ、と言うのと変わりませんが。
「お前たちの姫だ」
と矢頭は水門を示したが、カエルたちは、きょとんとしている。
「……同じ顔なんじゃないの?」
と水門は小声で猿渡に訊かれ、
「雰囲気が全然違いますからね~」
と苦笑いする。
たまにしか姫を見ない街のうさぎたちはともかく、姫の直属の家臣たちは騙されないようだった。
「ドレス着てないからかもしれませんよ」
そう松岡が口を挟んできたが。
「……ドレス」
思い浮かべられるの、ウエディングドレスか。
なんとかちゃん人形の着せ替えドレスくらいしかないんだが……。
「今、ここでいきなり戦闘が起こって、召喚の能力が使えても、この場に相応しいドレスは呼び出せない気がします」
そう水門はみんなに言った。
だが、そこで矢頭が唐突に言い出す。
「よし、戦闘をはじめよう」
「え? でも、ドレスは……」
「召喚するのはドレスじゃない。
とりあえず、
戦え!
カエルとヤンキーどもっ」
いや、お前、神かっ、という命じ方で矢頭が叫ぶ。
っていうか、今はお前もヤンキーだろっ、と全員が突っ込みたかったのだが、なんか怖いので突っ込めなかった。
「うう、すみませんっ」
と猿渡が謝りながら、カエルに殴りかかるフリをしたとき、矢頭が天に向かって手を差し上げ、叫んだ。
「召喚っ!」




