京都に修学旅行に行きました
修学旅行先は秋の京都だった。
神社仏閣、寺、寺、寺。
みんな、
「飽きた」
って言ってるけど、私は嫌いじゃないな~と思いながら、紅井水門は神社の裏をうろうろしていた。
うーむ。
みんなとはぐれたようだ、と思いながらも、水門は草を踏み分け、ずんずん進む。
これは奥の院というやつかな。
山の上に向かってお地蔵さんが並ぶ道を水門は歩いていく。
お地蔵さんの前に木の看板があって、墨で一、二、三……と数が振ってあった。
数えながら、水門はそのまま進んでいった。
「ひー、ふー、みー、よ……」
すると、寺の裏山を歩いていたはずなのに、いきなり真っ赤な鳥居が現れる。
まあ、神仏習合とか言うからな。
なんか鳥居も赤いけど、空も赤いな。
夕焼けかな。
……昼の二時くらいのはずだけど。
でも、ここ、京都だしな。
千二百年の歴史がある町はなにがあってもおかしくない、と水門は確信していた。
パンパン、と水門は鳥居に向かい、手を叩いた。
鳥居の向こうに社殿はなく、山しかなかったのだが。
山が御神体という場合もある。
手を合わせておいて、水門は思った。
せっかくだし、なにを願おう?
あ、そうだ、と水門は目を閉じる。
「みんな元気に過ごせますように」
手広く祈りながら顔を上げたとき、鳥居の向こうの地面が何箇所もボコボコと盛り上がりはじめていた。
枯れ枝のような手があちこちから突き出してくる。
やがて、地面からゾンビっぽいものがたくさん這い出してきた。
ひっ。
死人の方は元気に過ごされなくて結構ですよっ、と思う水門の足首を一体のゾンビがつかんだ。
ひいいいいっ。
水門は、そのまま鳥居の向こうに引っ張り込まれた。
土がむき出しになっている地面にセーラー風の可愛い制服がこすれ、スカートがめくれあがった。
それを押さえて水門は叫ぶ。
「矢頭くん助けてっ」
矢頭が召喚された。
詰襟黒髪銀縁メガネの端正な顔の男が光を放ちながら、目の前に現れる。
その光に怯えるようにゾンビたちは後退していった。
矢頭は赤黒い光に包まれた異様な雰囲気の山の中を見回している。
それだけで頭の回転の速い彼は、ある程度事態を察したらしく、
「……なんてことしてくれたんだ」
と呟いていた。