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第3章 オーネスト王国激震篇 19


「言葉通りに受け取ってくれれば楽ですけど、それ程甘い輩ならA級パーティーに認定されていないでしょうし…………、今後も警戒は解かないようにお願いしますね」


「ああ、分かってる。これ以上、表立って俺達【暁】から情報収集出来ないように牽制したってだけの話だからな。…………後は、カイト達が迂闊にリーファンスに戻って来ない事を祈るだけだよ」


「そうね…………。彼等の目的がオーネスト王国を巻き込んでマイアール帝国と抗争するって事じゃない事を祈るわ」


 【暁】のクランハウス、その総長執務室でクランマスターのシシリアとサブマスターであるバーナードが報告と相談を行っていた。

 シシリアからすれば興味の対象であると同時に、リーファンスどころかオーネスト王国をも巻き込みかねない爆弾と認識しているカイト達の扱いには慎重さを最前提としている。

 そのため、魔法に関しては遠慮なんて考えない言動でカイト達に接しているが、カイト達の目的については触れる事すら出来ていないのが現状である。

 つまり、今後のカイト達の行動については何も読めないという点で【黎明】と大差無い状況であると言える。

 とはいえ、あの大国マイアール帝国が諜報員を派遣している以上、カイト達の情報収集だけが目的とは考え辛い。

 万が一、マイアール帝国がオーネスト王国に対し侵攻を考えているとすれば、カイト達の戦力を手放す愚は犯せない。

 カイト達との関係を良好に保ちながら、【黎明】の情報収集の邪魔をする事くらいしか現状で打てる手は無い事がシシリアを悩ませ続けている。


「かつて、魔の森に存在すると云われていた魔帝国を亡ぼしたとマイアール帝国が喧伝していたが、その後も魔の森は手付かずのまま放置されている。あの森を恒常的に統治する事はマイアール帝国でも不可能って事は常識の範囲内だが、地政学的に考えて魔の森の脅威を抑える為にリーファンスが欲しいってのは……間違い無いだろうしな」


「全てを囲むとなれば兵力的に不可能でしょうけど、このリーファンスとマイアール帝国の二方向から抑えるだけでも、あの魔の森の脅威は半減されるでしょうからね」


「他国の経済と兵力を頼むよりも、自分達で管理した方が安心出来るって考えるのが現場を知らない奴等だろうしなぁ」


 例え両国が同盟を組もうが、自国の危機に援軍が必ず送られて来るとは限らない。

 いや、自国の防衛を重視して見殺しにする可能性の方が高いと考える統治者の方が多くて当然だろう。

 他所よりも魔素が濃く、魔物がより強固な魔の森を統治し続けるのは人間種の軍隊では難しい。

 とはいえ、その魔物を間引いていた魔帝国は既に存在しない。

 魔物の氾濫を警戒するなら、人間の思惑で針路を予測するだけ無駄であるし、自国の防衛よりも他国の救援を重視する統治者など存在する筈が無いのだから。


「有史以来、一度も魔の森から侵攻した事の無かった魔帝国を亡ぼしたってのが悪手だったって事か……」


「そうね。でも、今迄そうだったから今後も変わらないと楽観的に考える統治者はいないわ」


「既に伝説となっていた存在……、しかし、伝説になる程の存在だから無視する訳には行かなかったってのか?」


「【エルディーニ聖教】では悪と認定されている魔族って存在だけど、昔の伝記では人間に仇なす存在というよりも、神罰の代行者と記されている物も存在しているわ」


「大昔、文明の発展が未熟だった頃だろ? その文明レベルなら、人知を超えた力の全てが神罰と認識されても不思議じゃない」


「ええ、そう考えてる者が多数でしょうね。でも、私は魔族って括りすら改変された物かもしれないと考えてるのよ」


「学者レベルの話なら俺には理解出来ないぞ?」


 シシリアが語るように、民間レベルの伝承の中には魔帝国を神聖な存在としている物も存在する。

 しかし、人間世界の拡張と共に人間以上の存在を示す伝承は異教徒扱いの対象となり、中世欧州の某宗教の如く、その研究すら表立っては出来ないのが現状である。


「マイアール帝国にしたって神罰を受けたなんて話は無いどころか、その影響力が増したって言われてるくらいだし、伝承や伝記は所詮その程度の物だったって事だろ?」


「人間の感覚なら長い年月だけど…………人間の数倍の寿命を持つ魔族や、寿命なんて存在しない【神】という存在からすれば誤差範囲でしかないかもしれないわよ? もし、私の推測通りなら……」


「俺からすれば、カイト達が【竜の咆哮(ドラゴンロア)】と揉めたのが『絡まれたから』なのか、『奴等がマイアール帝国の諜報員だったから』なのかの方が大いに気になるがな」


「それがハッキリすれば、私の推論が正しいのかどうかも一気に分かるんだけどね」





 オーネスト王国が認めた魔法使いでありながらも、その立場はあくまでも(いち)クランマスターとして扱われているシシリア、その理由はこの学者気質にある。

 政治よりも学術的な視点が強い為、常に理想を追い求める姿勢が政治の中枢にいる者達からは不評なのである。

 政治とは綺麗事だけで動かせるものではなく清濁併せ呑む事は必要と考える者と、無駄は無駄として省く事を常に求める者が相容れる事が出来ないのは当然の事ではあるのだが…………

 しかしながら、その魔法技術と戦力的な能力、膨大な知識から国の重鎮として手放せない存在。

 それがオーネスト王国にとっての【暁】クランマスター、シシリアという存在であった。


 そのシシリアの膨大な知識を持ってしても底の知れないカイト達【幻想審判(ジャッジメント)】。

 その目的も……

 戦力的な底も…………


 認識阻害の効果で自身についての思考を制限させている創造神と違い、カイトの認識阻害にはそういった効果は含まれていない。

 結果として、S級ハンターというだけでは説明のつかない能力(ちから)を見せるクラウディアについて疑問を持つ者は存在しないが、カイト達三人については明らかに人間種の限界を超えていると一部の人間には認識されているのであった。 

いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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